はじめに

ネットゼロ・バンキング・アライアンスからの離脱(Ⅰ)

いよいよ「ポスト脱炭素」が始まったのか?米国の大手銀行が相次いで「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」からの脱退を発表した。2025年1月、トランプ氏の米国大統領返り咲きで高まる政治的圧力を受け、米国の大手銀行が我が身を守るための行動とも報じられている。
はじめに

エネルギー基本計画とGX2040ビジョン(Ⅱ)

岸田政権時代に、2023年2月にはGX(グリーントランスフォーメーション)基本方針が閣議決定され、2023年5月にはカーボンプライシングの導入を含むGX推進法、原子力発電所の運転期間の実質60年超への延長を盛り込んだGX脱炭素電源法のGX関連法が相次いで成立した。また、これらの政策を実行するため「GX推進法」に基づき、2023年7月には「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が閣議決定された。2025年2月18日、「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」が閣議決定された。GXに向けた企業の投資意欲を高めるのが目的で、2040年までの”産業構造と産業立地”を示し、”GXを加速するための個別産業分野の取り組み”、”成長志向型カーボンプライシング構想”を明らかにした。
はじめに

エネルギー基本計画とGX2040ビジョン(Ⅰ)

2025年2月18日、「地球温暖化対策計画」が閣議決定された。同時に「第7次エネルギー基本計画」、「GX2040ビジョン」も閣議決定され、一体的にエネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に取り組むことが公表された。「地球温暖化対策計画」で2040年温室効果ガス73%削減の野心的な目標を設定したものの、「第7次エネルギー基本計画」ではデータセンターなどの増加で電力需要が増えるとし、火力発電の継続利用と脱原発を目指してきた従来方針から大きく転換し、原子力と再エネの脱炭素電源の最大限の活用方針を打ち出した。太陽光や風力などの再エネも増やす方針を示したが、さまざまな制約要件や電気料金が高くなるとの試算から、電源割合は太陽光以外は低めにとどめられた。
再エネ

国内送電網の強化に向けた動き(Ⅱ)

高圧直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)は電力系統間で送電するための技術で、送電側の電力を交流から直流に変換して送電し、受電側で交流に戻して電力を使用する。長距離送電に適しており、周波数が異なり直接交流で接続できない系統間の連系に適している。今後、再生可能エネルギーの拡大や電力システム改革の進展に伴い、洋上風力発電所との連系や送電系統の広域的連系などでHVDCの導入が本格化する。
再エネ

国内送電網の強化に向けた動き(Ⅰ)

再生可能エネルギーの導入速度には追いつけず、「再エネ制御」が常態化するに至った。2022年、政府は再エネ大量導入と巨大災害への耐性向上を実現するため、2050年までの送配電網の整備計画(新送電網の整備計画と地域内送電網の増強)をまとめ、約6兆〜7兆円の投資を決定した。 
再エネ

電力貯蔵システムの開発現状(Ⅶ)

揚水発電には、太陽光・風力発電の出力変動の吸収と短期周波数の調整機能が求められる。これが実現できれば、火力発電所の待機運転を止め、燃料費やCO2排出量の削減が可能となる。今後、原子力発電の再稼働に向けて温存している「定速揚水発電」を、早い段階で電力系統の瞬間的な電力調整も可能で高効率な「可変速揚水発電」に改修して設備稼働率を上げ、再生可能エネルギーの導入拡大への対応を図る必要がある。
再エネ

電力貯蔵システムの開発現状(Ⅵ)

変動型再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電が増加した地域では、「再エネ制御」を防ぐためには「送配電網の増強」や「電力貯蔵システムの設置」が不可欠である。しかし、系統網の増強は設備投資が巨額であり、監督省庁による許認可の取得手続きに時間を要する。そのため、短期的にはコストや手続きの面で有利な電力貯蔵システム、中でも「定置型蓄電池の導入」が2022年から国内でも急速に進められている。
再エネ

電力貯蔵システムの開発現状(Ⅴ)

蓄電池導入の最大の課題は低コスト化である。EV用蓄電池のリユースや安価な中国産蓄電池の導入の声が聞こえるが、政府による具体的な方策は示されていない。また、定置型蓄電池と需要地点を結ぶ送電線の空き容量が少ないことも大きな問題である。政府は、「日本版コネクト&マネージ」による送電線の空き容量の活用を進めており、系統用蓄電池の普及にも有効である。
再エネ

電力貯蔵システムの開発現状(Ⅳ)

再エネ大量導入の加速に向けて政府はようやく重い腰を上げた。「2022年1月の電気事業法改正による大規模系統用蓄電池の普及支援」と、「2023年2月の揚水発電所の維持・更新の支援」である。しかし、あまりに遅すぎた支援のために、国内では「再エネ制御」の常態化が始まっている。国内での定置型蓄電設備の多くは、「再エネ電源併設型」と「需要地点併設型」で進められてきた。特に、北海道エリアでの系統に直接接続する「系統用蓄電池」に始まり、「系統用蓄電所」の設置が急増している。
再エネ

電力貯蔵システムの開発現状(Ⅲ)

変動型再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電が増加した地域では、電力平準化のために送配電網の増強や電力貯蔵システムの設置が不可欠である。しかし、系統網の増強は設備投資が巨額であり、監督省庁による許認可の取得手続きに時間を要する。そのため、短期的にはコストや手続きの面で有利な電力貯蔵システム、中でも定置型蓄電池の導入が急速に進んでいるのが現状である。