次世代原子力(新型炉)の開発現状

 世界の原子炉開発は、「第1世代と呼ばれる黎明期の原子炉」に始まり、「第2世代である現行の軽水炉など」が続き、現在導入が始まっている「第3世代と呼ばれる改良型軽水炉など」へと進められてきた。小型軽水炉(SMR)は、第3+世代に位置付けられている。

 2005年2月に、「第4世代の原子力システムの研究及び開発に関する国際協力のための枠組協定」が締結され、2030年代の商業導入を目指して13カ国+1機関により、「新型炉」の開発が進められている。 

第4世代原子炉開発の動き

 非軽水炉型の新型炉は、第4世代の原子炉である。すなわち、世界の原子炉開発は、黎明期の原子炉(第1世代)に始まり、現行の軽水炉等(第2世代)、現在導入が始まっている改良型軽水炉など(第3世代)と進められてきた。なお、小型軽水炉(SMR)は第3+世代と位置付けられている。

 米国では電気出力:30万kW以下の軽水炉を「SMR」と呼び、非軽水炉型の原子炉は出力に関係なく「新型炉」と定義し区別している。また、英国では出力:100万kW以下の小型軽水炉を「SMR」と呼び、非軽水炉型は先進モジュール炉(AMR:Advanced Modular Reactor)と呼び区別している。

図1 原子力システムの第1世代から第4世代への変遷 出典:第4世代原子力システム国際フォーラム

 2005年2月、「第4世代の原子力システムの研究及び開発に関する国際協力のための枠組協定」が締結され、2030年代の商業導入を目指し、主要各国により新型炉の開発が進められている。

第4世代の原子炉開発とは: 
■1999年、米国は第4世代(GIF:Generation IV)の概念を提唱した。
■これを受けて、2001年7月に「第4世代原子力システム国際フォーラム」が発足。
■2002年7月、研究・開発課題として6システム(ガス冷却高速炉(GFR)、鉛冷却高速炉(LFR)、溶融塩炉(MSR)、ナトリウム冷却高速炉(SFR)、超臨界水冷却炉(SCWR)、超高温ガス炉(VHTR))を選定。
■2005年2月、「第4世代の原子力システムの研究及び開発に関する国際協力のための枠組協定」が締結。2030年代の商業導入を目指し、アルゼンチン、豪州、英国、カナダ、韓国、日本、ブラジル、フランス、米国、南アフリカ、スイス、欧州原子力共同体(ユーラトム)、中国、ロシアが開発を推進している。
■2015年2月、枠組協定が、2025年2月28日まで延長された。

図2 GIFにおいて選定された6種類の第4世代原子炉システム 出典:第4世代原子力システム国際フォーラム

 近年、電気出力:30万kW以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている。本来、SMRはモジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する炉の総称である。

 しかし、米国では電気出力:30万kW以下の軽水炉を「SMR」と呼び、非軽水炉型の炉は出力に関係なく「新型炉」と定義している。また、英国では出力:100万kW以下の小型軽水炉を「SMR」と称し、非軽水炉型の先進モジュール炉(AMR:Advanced Modular Reactor)とは区別している。
 本稿では、米国方式の分類に従い小型軽水炉である「SMR」と、非軽水炉型の「新型炉」の開発動向を区別し、非軽水炉型の「新型炉」を中心に開発動向をレビューする。

次世代原子炉用の核燃料

 非軽水炉型の新型炉の多くでは、従来の軽水炉用の核燃料よりもウラン濃縮度を増した「HALEU燃料」の使用が検討されている。しかし現在、HALEU燃料の製造をロシア国営企業ロスアトムの系列企業が独占しているため、核燃料の脱ロシア化が欧米を中心に始まっている。

HALEU燃料とは

 高純度低濃縮ウラン(HALEU:High-Assay Low-Enriched Uranium)燃料は、 天然ウランに0.7%しか含まれない核分裂反応を起こすウラン235を、5~20%まで高めた核燃料である。

 海軍船舶用の高濃縮ウランに比べて低濃縮とすることで核兵器への転用を防ぎ、一方で従来の低濃縮ウランよりも少量で大きなエネルギーを発生させることができるため、原子炉の小型化燃料交換頻度を下げるのに有効で、放射性廃棄物の排出量も少ない。

 また、濃縮度10%までの高濃縮度燃料(LEU+)は、既設原子炉の他、先進炉や小型モジュール炉(SMR)を含む次世代原子炉で、出力増強等による経済性向上が期待できる。

 

図3 新型炉で多く使われるHALEU燃料とは 出典:Centrus Energy Corp.

 2022年10月、米国テラパワーは、米国GEと日立の合弁企業グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ(GNF-A)と、ノースカロライナ州ウィルミントンで次世代原子炉用の核燃料製造施設の建設で合意した。施設は、2023年に建設開始の予定である。
 テラパワーが開発する次世代原子炉は、ナトリウム冷却型高速原子炉技術と溶融塩エネルギー貯蔵システムを組み合わせ、HALEU燃料を使用する。2021年6月に、ワイオミング州に次世代原子炉の実証プラント建設を発表、同年8月には、次世代原子炉向けウラン燃料の国内サプライチェーン構築を提唱した。

 2023年6月、米国セントラス・エナジー(旧USEC)は、オハイオ州パイクトンの米国遠心分離プラント(ACP)でのHALEU燃料(U235の濃縮度が5~20%)の製造を、原子力規制委員会(NRC)が承認したと発表。年末までにHALEU燃料の実証製造を開始し、当面は900 kg/年の製造を目指す。
 2019年11月にエネルギー省(DOE)と結んだ契約に基づき、独自開発の新型遠心分離機「AC100M」16台によるカスケードをACPサイト内に建設。最終的に商業規模の120台まで拡大し、HALEU燃料を約6000 kg/年の製造を検討している。

 2023年8月、米国の原子炉開発企業オクロは、ウラン濃縮企業のセントラス・エナジーとの協力を拡大すると発表。両社は2021年、オクロ製のマイクロ高速炉「オーロラ(Aurora)」に装荷するHALEU燃料の製造施設の建設を、オハイオ州南部で協力して進める基本合意を締結した。

 2023年8月、米国規制委員会(NRC)は国内商業炉に濃縮度5%超の燃料の装荷を初認可した。これにより、サザン・ニュークリアはボーグル2号機で濃縮度6%までのATFを装荷することが可能となった。

 2023年10月、米国オハイオ州にあるセントラス・エナジーの工場で小型次世代原子炉用のHALEU燃料の製造が開始された。同11月には、ロシア国営企業ロスアトムの系列企業が独占しているHALEU燃料のロシア依存を危惧する声が高まり、米国はセントラスへの約1.5億ドル(約230億円)の補助を決めた。

 2024年2月、米国GEベルノバは、傘下のグローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)が濃縮度8%までの燃料製造、輸送、挙動解析で米国原子力規制委員会(NRC)から認可を取得した。ノースカロライナ州ウィルミントンにあるGNFの施設は、濃縮度8%までの燃料製造認可を持つ米国初の商業施設となる。
 NRCは同時に、GNFが自社のRAJ-II輸送コンテナを利用して濃縮度8%までの燃料集合体の輸送を認可する適合証明書も発給し、濃縮度5%を超える燃料解析を可能にする先進的な原子力解析法の許認可トピカルレポート(LTR)も承認した。

米欧の脱ロシア化

 米国の原子力発電所の低濃縮ウランは、英独蘭の合弁会社ウレンコ(ニューメキシコ州)からの供給に加え、ロシアに2割を依存しており経済制裁の対象外としている。欧州はさらにロシア依存度が強く、ハンガリースロバキアなど5か国にロシア製原発が計18基あり、燃料もロシア製の低濃縮ウランを使っている。
 欧州連合(EU)は計11回の対ロシア経済制裁を発動してきたが、原子力関連はハンガリーの反対で除外された。現在、ハンガリーとトルコでは、ロシア製原発(VVER-1200)の建設が進められている。

 一方で、2022年6月、チェコは核燃料の調達先をフランスのフラマトムなどに切り替える契約を締結した。ウクライナは米国ウエスチングハウスと協定を結び、燃料供給と原発「AP1000」の導入を9基に拡大した。スェーデン、スロバキアもロシア以外からの核燃料の調達を検討している。
 また、フィンランドはロシアからの核燃料調達の契約終了後、米国ウェスチングハウスに切り替える方針で、ロスアトムと進めていた原発建設計画も中止するなど、脱ロシア化が進められている。 

図4 2020年時点の核燃料企業の濃縮シェア
出典:世界原子力協会

 2024年1月、米国DOEは、原子力発電所で燃料に使う低濃縮ウラン(ウラン235が3~5%)の生産体制を、約22億ドル(約3200憶円)の予算を投じて米企業の設備増強を支援する方針を公表した。日英仏加と協力して、脱ロシアの国際的な供給網構築を目指す。 
 1993年、米国は核不拡散のためロシアの核兵器用の高濃縮ウランを低濃縮ウランに作り直して購入することで合意し、安い製品の輸入を続けたことで国内の核燃料産業は衰退した。エネルギー安全保障上、重要な原子力分野でロシアに依存する状況を解消する狙いである。 

英国の脱ロシア化

 2024年1月、英国政府は、3億ポンド(約558億円)を投じて、HALEU燃料の製造計画を立ち上げると発表。COP28でG7の原子力パートナーと協力し、ロシア製燃料への世界的な依存を減らすことを表明しており、2020年代末までに英国にウラン転換能力を取り戻すために、政府と産業界が協働を開始している。

 現在、ロシアは世界のウラン転換能力の約20%、濃縮能力の約40%のシェアを持つため、今回の資金提供により、英国政府はHALEU燃料の国内製造を支援するとともに、2050年までに民生用原子力発電設備を最大2,400万kWまで拡大し、国内電力需要の約25%を原子力でまかなう方針である。

 加えて、1,000万ポンド(約18.6億円)を投じ、英国内で他の新型燃料の製造技術や設備を開発する。すなわち、イングランド北西部の核燃料生産拠点を強化し、長期的な国内核燃料供給体制を確立する。また、海外の需要にも応えることにより国際的な連携に貢献するとした。

 既に、2023年7月、英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省は、核燃料の国内サプライチェーン構築をめざすプロジェクトに、原子燃料基金(NFF)から総額2,230万ポンド(約41.5億円)の拠出を発表している。 
■米国ウェスチングハウスの英国スプリングフィールドにある原子燃料製造工場の拡張・アップグレードや、HALEU燃料製造の検討を含む多様な燃料製造への支援(1,050万ポンド、約19.5億円)
■カーペンハーストにあるウレンコのウラン濃縮工場における低濃縮ウランおよびHALEU燃料製造への支援(950万ポンド、約17.6億円)
■ニュークリア・トランスポート・ソリューションズのHALEU燃料輸送パッケージの開発支援(100万ポンド以上、約1.9億円)
■溶融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEXのAMRに関して、バーナー・リグなど溶融塩の製造に必要な機器の製造と運転の支援(120万ポンド、約2.2億円)

非軽水炉型の新型炉の開発動向

米国

 2020年前後から、米国では原子炉開発に多くの予算が投じられ、少なくとも7基が2020年代末の運転開始をめざして開発を加速している。実績のある軽水炉(SMR)から、各種の新型炉に至るまで、いずれも大手原子炉メーカーやスタートアップによる民間企業中心の開発である。

表1 米国で開発が進む主なSMRと新型炉 出典:原子力産業新聞

 2020年5月、米国エネルギー省(DOE)は新型炉実証プログラム(ARDP)を開始し、公募により選ばれた新型炉開発プロジェクトに対して資金援助が行われている。
 具体的には①先進原子炉実証(運転開始目標7年以内、民間企業負担率は50%以上)、②将来実証リスク削減(運転開始目標10~14年以内、民間企業の負担率は20%以上)、③先進炉概念2020(ARC-20、運転開始目標2030年代半ば)の3カテゴリーがあり、10企業が参画している。

表2 先進的原子炉実証プログラム(ARDP) 出典:原子力産業新聞

 その他、航空宇宙局(NASA)と エネルギー省(DOE)は共同で「宇宙探査用核熱推進技術の開発」、国防総省(DOD)は遠隔地で電力を得る技術開発として「プロジェクト Pele (ペレ)」を立ち上げており、企業支援を行っている。米国企業による「新型炉」開発の代表は、高温ガスに関するXーエネジーの開発である。

X-エナジーの「Xe-100」

 X-energy(X-エナジー)が開発を進めるペブルベッド型小型高温ガス炉「Xe-100」は、熱出力:20万kW、電気出力:約8万kWのSMRである。これを4基設置した発電プラント(総出力:32万kW)を標準とし、高温熱供給(炉心出口温度:750℃)による海水淡水化や水素製造など幅広い分野への適用をめざしている。

 2017年3月、運転寿命60年の「Xe-100」の概念設計を開始。一方で、2018年11月、専用の4重被覆の燃料粒子「TRISO:TRi-structural ISOtropic」の製造工場の予備設計を進めるため、濃縮ウラン企業のセントラス・エナジー(旧USEC)と新たなサービス契約を締結した。

 2021年4月、米国エネルギー省が、「Xe-100」(電気出力7.5万kW)の基本設計完了を発表。また、ワシントン州の公益電気事業社エナジー・ノースウエスト、グラントPUDと、初号基設置に向けて覚書を締結した。
 国外では、2019年11月にヨルダン原子力委員会と、2022年7月にカナダのオンタリオ州政府と、「Xe-100」の利用可能性検討のため、協力合意書を交わした。

 2022年8月、米国ダウ(Dow)はテキサス州メキシコ湾岸シードリフト市の同社施設に、「Xe-100」を4基設置する原子力発電所(出力:32万kW)の建設で基本合意した。2030年頃までに「Xe-100」実証炉を完成させる計画で、X-エナジーへの出資も公表した。

 2023年7月、エナジー・ノースウエストは、ワシントン州内で最大12基の「Xe-100」を建設するための共同開発合意書(JDA)に調印した。同社コロンビア発電所(BWR、121.1万kW)の隣接区域での建設を計画し、2030年までに最初のモジュールの稼働を目指す。

図5 ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」の炉構造 出典:X-エネジー

 ところで、「Xe-100」に装荷されるのはTRISO燃料粒子である。ウラン235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン(HALEU燃料)を、黒鉛やセラミックスで4重被覆した粒子型燃料である。

 2022年4月、商業規模の「TRISO-X燃料製造施設(TF3)」をテネシー州オークリッジの「ホライズンセンター産業パーク」内に建設すると発表。TRISO燃料粒子は2028年の運転開始を見込む「Xe-100」のみならず、他社が開発中の新型炉でも使用される見通しである。  

 2022年10月、「TRISO-X(TF3)」を建設するため、X-エナジー子会社のTRISO-Xがテネシー州オークリッジで起工式を実施。2022年4月、特殊な核物質(カテゴリーⅡ)の取り扱いに関する許可申請を原子力規制委員会(NRC)に提出しており、早ければ2025年にも操業可能となる。
 TF3の初期段階の生産量は「Xe-100」12基分に相当する8トン/年(ウラン換算)で、2030年代初頭までに16トン/年の生産量を目指す。

図6 4重被覆燃料粒子「TRISO」の構造 出典:TRISO-X

ウルトラ・セーフ・ニュークリアの「MMR」

 Ultra Safe Nuclear(USNC、ウルトラ・セーフ・ニュークリア)が開発を進める小型モジュール式の高温ガス炉「MMR(Micro Modular Reactor)」(熱出力1.5万kW、電気出力:0.5万kW)は、用途に応じて電力と高温熱(炉心出口温度:630℃)の供給を可能とし、TRISOを燃料に用い20年間にわたり燃料交換の必要がない。
 一次冷却材にヘリウムガス、外部電源や人為的な介入なしに作動する重力駆動冷却システムや、事故時に放射性物質の放出を防ぐ格納システムなどの受動的安全システムが組み込まれている。

 2020年12月、米国原子力規制委員会(NRC)が、USNCの「MMR」の設計認証申請を承認した。2021年6月、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)が、学内で将来的に「MMR」を建設するため、原子力規制委員会(NRC)に意向表明書(LOI)を提出した。

 一方、2019年3月、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)とUSNCの合弁企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)が、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトにおける「MMR」の初号基建設に関して、カナダ原子力安全委員会(CNSC)にサイト準備許可(LTPS)を申請した。
 
 2022年8月、USNCは、「MMR」で使用するTRISO燃料粒子と、セラミック・マイクロカプセル(FCM:Fully Ceramic Microencapsulated)燃料のパイロット製造施設を、テネシー州オークリッジで開所した。
 1960年代に米国と英国で開発されたTRISO燃料粒子は、ウラン酸化物の核に黒鉛やセラミックスを4重に被覆しているが、2000年以降にDOE傘下の国立研究所が改良を重ねた結果、USNCが特許を持つFCM燃料」は黒鉛マトリックスの代わりに炭化ケイ素(SiC)マトリックスを使用する。 

図7 「MMR」の完成予想図 出典:Ultra Safe Nuclear

BWXテクノロジーズの「BANR」

 米国防総省(DOD)は「プロジェクトPele」による先進的な可搬式超小型炉(マイクロリアクター)の実証に向け、X-エナジーと共にBWX Technologies(BWXT)を選定した。米国航空宇宙局(NASA)も月面での原子炉設置に向けて設計案を募るなど、マイクロリアクターの活用範囲が広がりつつある。

 2022年6月、DODが「プロジェクトPele」で、最終的に小型高温ガス炉「BANR」(熱出力:5万kW、電気出力:1000~5000kW、炉心出口温度:800℃)を選定した。2024年までに、アイダホ国立研究所内に設置し、HALEU燃料のTRISO燃料粒子を使用する。燃料の交換間隔は5年を想定している。

 原型炉は、市販の輸送用コンテナを使い、鉄道やトラック、船舶、航空機等で安全かつ速やかに運搬するため、長さ約6mの機器を内蔵した複数モジュールでの構成とする。組立開始から72時間以内に稼働でき、撤収では7日以内の停止後に冷却・接続切断・分解・輸送機器への積載を可能にする。

図8 BWXTの小型高温ガス炉「BANR」の概念図 出典:BWX Technologies

テラパワーとGE日立・ニュクリアエナジーの「Natrium」

 一方、高速炉に関しては、1951年12月に米国で世界初となる高速実験炉EBR-1(電気出力:100kW)が稼働した。その後、原型炉「CRBR」の設計・製作が進められたが、建設費高騰により計画が中止された。1978年10月、実証炉の設計研究が開始されたが、その後に進捗はなく高速炉開発から撤退した

 2019年6月、GE日立・ニュクリアエナジーが、小型モジュール式高速炉「PRISM」をベースに設計したナトリウム冷却高速炉「多目的試験炉(VTR:Versatile Test Reactor)」の建設で、日米政府間で研究協力の覚書を締結し、安全に関する研究開発などの協力が進められた。 

 TerraPower(テラパワー)とGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)は、小型モジュール式高速炉「PRISM」を基に「Natrium」(電気出力:34.5万kW、炉心出口温度:540℃)の共同開発をめざす。テラパワー開発の溶融塩蓄熱システム(容量:100万kWh)と組み合わせ、ピーク時出力:50万kW×5.5時間以上稼働する。
 現在、急速に普及している再生可能エネルギーの出力変動を、「Natrium」で調整するのが狙いである。

 2020年8月、テラパワーとGEHは、商業用発電・エネルギー貯蔵システムの開発を発表した。原子炉を小型化し、非原子力の機械・電気機器を原子炉建屋外に設置、設備の大半を原子力グレード規格から一般的な工業規格に変更するなどの低コスト化を進め、2028年の実用化をめざした。

 2021年11月、実証炉「Natrium」(出力:34.5万kW)をワイオミング州ケンメラーの石炭火力発電所跡地に建設することで、同州を含む西部6州に電力を供給するパシフィコープと合意し、2024年3月に建設を開始した。また、2023年3月、パシフィコープは2033年までに、さらに2基の「Natrium」をユタ州で建設する方針を示した。

 一方、2022年1月には、「Natrium」開発を進めているテラパワーと、日本原子力研究開発機構、三菱重工業、三菱 FBR システムズは技術協力で合意した。 
 

図9 高速炉発電(左下)と溶融塩蓄熱システム(右上)の完成予想図
出典:テラパワー

テラパワーの「MCFR」とサザン・カンパニーの「MCRE」

 テラパワーが開発する塩化物溶融塩高速炉「MCFR(Molten Chloride Fast Reactor)」は、燃料と冷却材に塩化物溶融塩を使う。高温運転(炉心出口温度:755℃)が可能で発電効率が高い。

 2021年11月、米国大手電力のThe Southern Company(サザン・カンパニー)は、高速炉タイプの溶融塩実験炉「MCRE(Molten Chloride Reactor Experiment)」の設計・建設・運転を行う協力協定をエネルギー省(DOE)と締結した。「MCRE」は、共同開発を実施するテラパワー「MCFR」の商業版である。
 テラパワーのほか、アイダホ国立研究所(INL)、コア・パワー、オラノ・フェデラルサービス、米国電力研究所(EPRI)、3M(スルーエム)が参画する共同プロジェクトで、INL敷地内に「MCRE」(熱出力:500kW未満)を建設して、2026年の運転開始をめざしている。

 2023年5月、米国務省と原子力規制委員会は、93%の高濃縮ウランを使う「MCRE」計画の低濃縮ウランへの変更を要請。海外諸国に新型炉開発でウラン濃縮度を核兵器級に上げる口実を与えないためである。

図10 塩化物溶融塩高速「MCRE」の概念図
出典:The Southern Company

オクロの「Aurora」

 Oklo(オクロ)が開発するヒートパイプ冷却方式の液体金属高速炉「Aurora(オーロラ)」(熱出力:4000kW、電気出力:1500kW、炉心出口温度:>500℃)は、「マイクロ炉」である。HALEU燃料を使い、燃料交換なしで20年間の熱電併給を行う。アイダホ国立研究所(INL)に設置し、2025年の運転開始をめざす。

 2020年2月、アイダホ国立研究所は、初号基用燃料を使用済燃料から回収して提供することを確約。DOE支援を受けて、電解精製技術を使い放射性廃棄物を転換して先進的原子炉燃料を製造するほか、使用済燃料のリサイクルを図る技術の商業化を進める計画である。

 2023年5月、商業用のマイクロ高速炉「オーロラ」(電気出力:0.15~1.5万kW)を2基建設する立地点としてオハイオ州南部を選定し、同地域の4郡で構成される「オハイオ州南部の多様化イニシアチブ(SODI)」と土地利用に関して合意した。

 2023年8月、ウラン濃縮企業セントラス・エナジーと協力拡大の新たな覚書を締結した。既に、2021年にHALEU燃料の製造施設建設に向けた協力で基本合意書を締結していたが、今後は、「オーロラ」建設とHALEU燃料の製造を協力して進め、オハイオ州南部を重要ハブとする内容である。

ケイロスパワーの「KP-FHR」

 Kairos Power(ケイロスパワー)が開発するフッ化物塩冷却高温炉「KP-FHR:Kairos Power Fluoride salt-cooled High temperature Reactor)」(熱出力:32万kW、電気出力:14万kW、炉心出口温度:650℃)は、冷却材に低圧のフッ化リチウムやフッ化ベリリウムを混合した溶融塩を使用する。
 燃料には、高温ガス炉で使われるTRISO燃料粒子を使用し、運転中の供給を可能とする。

 2030年代初頭の商業規模完成をめざしており、現在は、低出力の非発電実証炉「Hermes(ヘルメス)」(熱出力:3.5万kW)を、テネシー州オークリッジの米国エネルギー省の「東部テネシー技術パーク(ETTP)」に建設し、2026年の運転開始をめざしている。

 2023年12月、米国原子力規制委員会(NRC)は、発電を伴う実証炉「ヘルメス」(熱出力:3.5万kW)の建設許可を発給すると発表した。現在、NRCは「ヘルメス」の隣接区域で、同炉を2基備えた実証プラント「ヘルメス2」を建設するための許可申請書を審査中で、2028年までの発電をめざしている。

カナダ

カナダ原子力研究所(CNL)の導入計画

 カナダ政府は北部遠隔地域でのエネルギー源として小型軽水炉(SMR)と新型炉に注目しており、2018年11月にロードマップを策定し、2020年12月にアクションプランを公表した。

 2026年までに、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトあるいはホワイトシェル・サイトに実証炉を建設する計画で、2018年に溶融塩炉のTerrestrial Energy、高温ガス炉のStarCore Nuclear、Global First Powerチーム 、U-Battery カナダの4社が選定され、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が審査中である。
 なお、Global First Powerチームは、カナダGlobal First Power(GFP)、カナダOntario Power Generation(OPG)、米国USNCで構成。U-Batteryカナダは、ウラン濃縮大手の英国URENCOが率いる企業連合のカナダ支社。Terrestrial Energy(TEUSA、テレストリアル・エナジー)は、カナダを本拠地とする米国企業。

図11 小型モジュール式一体型溶融塩炉「IMSR」の炉心ユニット
(熱出力:40万kW、電気出力:19.4万kW)
出典:Terrestrial Energy

州政府の導入計画

 2019年12月、3州(オンタリオ州・ニュー・ブランズウィック州・サスカチュワン州)の州政府がカナダ国内でSMR を開発・建設するための協力覚書を締結。これを受けて、2021年4月、3州の電気事業者が共同で実施したSMR開発の実行可能性調査結果が公表された。また、アルバータ州も協力覚書に参加した。

 オンタリオ州の州営電力企業オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)は、GEH 製の小型軽水炉「BWRX-RX300」(電気出力:30万kW)計4基の初号機をダーリントン原子力発電所サイト内に、2028年までに建設する。また、次フェーズで最大4基のSMRの最初の1基を、2032年までにサスカチュワン州内で完成させる。

 ニュー・ブランズウィック州では,米国ARC 製のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」(電気出力:10万kW)の実証炉を2030年までに完成させる。
 また、英国Moltex Energy製の燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W:Stable Salt Reactor-Wasteburner」(電気出力:30万kW)と廃棄物リサイクル施設を2030 年代初頭までに稼働可能にする。

表3 カナダで開発が進む主なSMRと新型炉 出典:JAEA

 2024年1月、カナダのキャピタル・パワーとオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)は、SMR「BWRX-300」(電気出力:30万kW)のアルバータ州での建設を目指して協力を合意した。技術面だけでなく事業運営も含めた実現可能性調査を2年以内に完了し、その後の取り組みでも協力を継続する。

 2024年1月、可搬型原子力発電システムの開発を行うカナダのプロディジー・クリーン・エナジーは、米国ウェスチングハウス(WH)と協力し、2030年までにWE社製マイクロ原子炉「eVinci」(熱出力:1.4万kW、電気出力:0.5万kW)を搭載する洋上可搬型原子力発電所の、カナダで初の設置をめざすと発表した。
 ヒートパイプ冷却式原子炉の「eVinci」の燃料交換は約8年間隔で、単一または複数の原子炉を搭載した可搬型発電所を、海岸線の設置場所に曳航して設置し、60年後の運転終了時に撤去するする。既に、概念設計と規制要件の調査は完了している

図12 eVinci搭載の洋上可搬型の発電所のイメージ 出典:Prodigy Clean Energy

英国

 英国では、Rolls-Royce(ロールス・ロイス)が主導する企業連合が、既存技術をベースに「UK-SMR」と呼ばれるPWRタイプの小型軽水炉SMR(熱出力:127.6万kW、電気出力:47万kW)を開発中で、2031年の初号基の運転開始を目指している。

 一方で、2017年12月、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、次世代新型原子炉プログラム開発で世界のリーダー的地位を獲得するため、原子力産業界に対する包括的な支援方策を公表し、「AMR実行可能性・開発プロジェクト」を開始した。

 英国政府は、2018年から先進モジュール炉(AMR)の実行可能性調査を進め、2020年7月、最終的に核融合炉開発でTokamakEnergy、鉛冷却高速炉開発でWestinghouse Electric Company UK、高温ガス炉開発でU-Battery Developmentsの3社を選定した。

 2020年11月、政府はCO2排出量実質ゼロ実現のため、「グリーン産業革命に向けた10ポイント計画」を発表。計画には先進原子力基金(最大3.85億ポンド)の創設が含まれ、SMR設計開発に最大2.15億ポンド、AMR研究開発に最大1.7億ポンドを投資し、2030年代初頭までにSMR初号機とAMR実証炉の導入をめざす。

 2021年7月、BEISは「グリーン産業革命に向けた10ポイント計画」と「エネルギー白書」に基づき、2030年代初頭までの「AMR RD&Dプログラム」を発表した。すなわち、最も有望なAMRとして、高温の熱利用が可能な高温ガス炉を選定し、実証スケジュールを明らかにした。

表4 英国で開発が進む主なSMRとAMR 出典:JAEA

フランス

 2021年10月、フランスは10億ユーロ(約1300億円)を投じてSMR開発を進めると表明した。同年11月にはCOP26において大型軽水炉(EPR=欧州加圧水型軽水炉)の建設再開を宣言し、原子力依存を電力供給の5割まで引き下げる方針(現在はおよそ7割)を事実上撤回した。

 2023年6月、フランス電力(EDF)、子会社のNUWARD、ベルギーのTractebelは、フランスのPWR型のSMR「NUWARD」(熱出力:54万kW×2モジュール、電気出力:17万kW×2モジュール)の技術開発の協力強化の枠組み協定に調印した。
 SMRロードマップによれば、2025~2030年に「NUWARD」の詳細設計と正式申請を計画し、同期間中の設計認証とサプライチェーンの開発を経て、2030年に初号基を着工し、建設期間を約3年としている。

ロシア

 ロシア(旧ソ連)は、早くからナトリウム冷却型高速炉の研究開発を進めている。1981年にはエカテリンブルグ市ベロヤルスクで原型炉「BN-600」が稼働した。1984年にはベロヤルスクでタンク型実証炉「BN-800」の建設がで始まったが、ソ連崩壊により建設が中断され、2006年に再開された。
 2016年10月、「BN-800」(出力:88万kW)が、ベロヤルスク原子力発電所4号機として商業運転を開始。ハイブリッド炉心(ウラン燃料+MOX燃料)から、燃料交換時に順次MOX燃料へ置換が進められた。

 2022年10月、ロシア国営原子力企業ROSATOM(ロスアトム)は、営業運転中の高速実証炉「BN-800」の全炉心にMOX燃料が装荷されたと発表。MOX燃料集合体は、2018年後半からクラスノヤルスク地方ゼレズノゴルスクの鉱業化学コンビナート(MCC)で連続製造を開始している。

 2021年6月、ロスアトム傘下の燃料製造企業TVEL(トヴェル)傘下のシベリア西部トムスク州セベルスク市の化学コンビナート(SCC)で、鉛冷却高速炉のパイロット実証炉「BREST-300」(電気出力:30万kW)の建設を開始し、組み立てを進めている。遅くとも2027年に運転開始の計画である。
 SCC内では、2024年に専用のウラン・プルトニウム混合窒化物(MNUP)燃料製造プラント、2030年に同炉から出る使用済燃料の再処理プラントが稼働を予定している。これら3施設で「パイロット実証エネルギー複合施設(PDEC)」を構成する。

 ロスアトムは、鉛冷却高速炉(LFR、30万kW)の実証炉の運転は性能確認に重点を置き、10年後には120万kWの「BR-1200(LFR)」の商業運転を計画しいる。また、鉛ビスマス冷却高速炉の小型炉「SVBR-100」(電気出力:10万kW)も開発中である。

中国

中国の「HTR-PM」

 2012年から、清華大学原子力・新エネ技術研究院(INET)の技術を基に、ペブルベッド型高温ガス炉実証炉「HTR-PM」(熱出力:25万kW×2基、電気出力:21万kW、炉心出口温度:750℃)が、山東省威海市石島湾で建設を開始した。
 中国の国家科学技術重要特定プロジェクトの一つとして、中国華能集団有限公司、中国核工業集団公司、清華大学が共同出資して華能山東石島湾核電有限公司を設立して開発が進められた。

 2016年12月に公表された中国の「エネルギー技術創新”一三五”計画」の重点項目として、実証炉「HTR-PM」による発電運転実証が進められ、2021年12月には電力網に接続して発電を開始した。2023年12月、「HTR-PM」が168時間の連続運転に成功し、世界初となる商業運転に移行した。 

 現在、商用炉「HTR-PM600」(熱出力:25万kW×6基×2ユニット、電気出力:65万kW×2、原子炉出口冷却材温度750℃)を設計中で、福建省、江西省、広東省、浙江省での建設が計画されてある。

図13 華能石島湾高温ガス炉「HTR-PM」 出典:中国華能集団

中国の「CEFR」

 中国はロシアの協力を得て独自設計を進め、北京の原子能科学研究院高速炉研究センターに、プール型ナトリウム冷却炉高速実験炉(CEFR、電気出力:2万kW)を保有し、2014年12月に100 %出力運転を達成し、プルトニウム燃焼炉の開発を進めた。

 2017年12月、中国核工業集団は福建省霞浦県長表島で、プール型ナトリウム冷却高速原型炉「CFR600」(電気出力:60万kW)の建設を開始した。2020年12月、2基目の「CFR600」の建設を開始した。それぞれ2023年と2026年の稼働を予定している。
 また、実証炉「CFR1000」(電気出力:100万kW)を計画しており、2030 年代に運転開始の見込みである。

 2023年5月、福建省霞浦県長表島で高速増殖炉「CFR600」の建設が最終段階に入った。年内の稼働が見込まれ、本格運転すれば100発超/年の核弾頭を製造できるプルトニウムが生産される。中国は核施設の査察義務がなく、民生用の核物質を軍事転用する可能性が高い。

インド

 インドはウラン資源と豊富なトリウム資源が存在するため、長期的にはトリウムの有効利用が可能な独自の核燃料サイクル(トリウム・サイクル)を目指している
 ウランあるいはトリウムをブランケットに装荷したプルトニウム燃料の高速増殖炉を開発し、最終的には、トリウム232が中性子を吸収して生ずる核分裂物質ウラン233を燃料とする高速増殖炉が計画されている。

 1985年10月、ループ型高速実験炉(FBTR)(電気出力:1.5万kWMW)が臨界に達し、運転が続けられている。2015年9月、タンク型高速増殖炉原型炉(PFBR)(電気出力:50万kW)が建設を完了した。今後、2025年頃までに実証炉(電気出力:60万kW)を2基建設する計画である。

2024年3月、インド原子力省(DAE)は、タミルナドゥ州・カルパッカムで建設中の同国初のナトリウム冷却の高速増殖原型炉「PFBR」(50.0万kW)で、MOX燃料の装荷を開始した。PFBRは、2003年10月設立のDAE傘下のバラティヤ・ナビキヤ・ビデュト・ニガム(BHAVINI)が開発した国産高速増殖原型炉である。
 2004年に着工したが、様々な技術的課題に直面して遅れた。運転が開始されれば、ロシアに次いで世界で2番目の高速増殖炉の商業運転国となる。今後、6基の同規模FBRの建設計画があり、プルトニウムとウラン233を増殖させ、トリウムを利用したAHWR(新型重水炉)の燃料に使う

韓国

 2023年7月、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、SMR市場を韓国が主導するため官民の総力を統合した「SMRアライアンス」を発足させ、サプライチェーン構築や関係事業への参加を推進する。2024年前半には、「SMR協会」の発足をめざす。

2024年2月、韓国のHD現代(ヒュンダイ)グループ傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、英国コア・パワーと米国サザン・カンパニーおよびテラパワーと協力して、船舶用の小型モジュール原子炉(SMR)の開発への参画を公表。2022年11月、KSOEはテラパワーに3,000万ドル(約45億円)を出資している。
 冷却材と燃料の両方に塩化物溶融塩を使う塩化物溶融塩高速炉(MCFR)がベースで、テラパワーはMSFRの船舶用溶融塩炉である「m-MSR」を開発中。2023年10月、サザン・カンパニーとテラパワーは溶融塩を用いるポンプ駆動運転等の統合効果試験(IET)に成功している。

韓国のSMR関連アクティビティ:
■2012年半ばに、韓国原子力研究院(KAERI)は海水脱塩と熱電併給が可能なPWRタイプのSMR「SMART」炉(熱出力33万kW、電気出力10万kW)を開発し、韓国規制当局から標準設計認証を取得した。
■斗山エナビリティは米国ニュースケール・パワーのSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の開発に出資し、主要機器の製造契約を獲得した。
■SKグループのSKイノベーションと、韓国水力・原子力会社(KHNP)は、米国でナトリウム冷却式の小型高速炉「Natrium」を開発中のテラパワーに事業協力している。
■現代E&C(現代建設)は、米国ホルテック・インターナショナルのPWR型SMR「SMR-160」の商業化と建設プロジェクトに協力している。
■サムスン重工業は、デンマークのシーボーグ製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計に協力している。「CMSRパワー・バージ」は、電気出力:10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能で、2028年までの商業化をめざしている。

日本

 2022年7月、経済産業省が示した工程表では、小型軽水炉について、2030年代から国内で実証炉の製造・建設を始め、2040年代に運転を開始する目標を掲げている。また、新型炉(高速炉、高温ガス炉、核融合)についても、実証炉の製造・建設・運転について、おおよその目標を示した。
また、2023年1月、経済産業省と米国エネルギー省(DOE)は、SMRと新型炉の開発・建設などの原子力協力の機会を、各国内および第三国において開拓することを表明した。

表5 GX会議で示された次世代原子炉の工程表  出典:経済産業省

東芝の「MoveluX」

 2022年12月、東芝は小型水素化物冷却高温炉「MoveluX(ムーブルクス)Mobile-Very-small reactor for Local Utility in X-mark)」(熱出力:1万kW、電気出力:3000~4000kW、炉心出口温度:700℃以上)の開発を発表。水素化カルシウム(CaH2)を原子炉冷却材と中性子減速材に用いる。

 冷却機構は電源を必要としないナトリウム・ヒートパイプを採用し、事故時にポンプなしで自然循環により炉心を冷却して安全性を高める。また、原子炉容器(高さ6m×直径2.5m)をコンクリート製の地下室に設置し、発電設備を地上に置き、燃料交換なしで約20年間稼働させる。主要部品は、コンテナ2個分の体積に収まる。

図14 小型水素化物冷却高温炉「MoveluX™」
出典:東芝

三菱重工業の「全固体原子炉

 2022年4月、トラックで運べる超小型の全固体原子炉(マイクロ炉、熱出力:1000kW、電気出力:500kW)を、2030年代に商用化すると発表。船舶への動力供給や災害地域での分散型電源として有効で、地下設置も容易で事故耐性に優れている。建設費は数十億円/基を想定している。

 真空二重構造のカプセル型格納容器には、直径1m×長さ2mの炉心(ウラン濃縮度20%を上限とするHALEU燃料を蜂の巣状に埋め込んだ黒鉛の燃料積層体)、核分裂熱を抽出する高熱伝導黒鉛体と伝熱管、中性子吸収材による核分裂反応の制御ドラムと非常用制御棒が内在し、不活性ガスが満たされ密閉している。

 伝熱管にはCO2が満たされており、最高850℃に加熱されたCO2を格納容器外に取り出して、タービンを回して発電する。マイクロ炉は燃料交換なしで25年前後運転し、その後、格納容器ごと回収して廃棄する。

図15 トラックで運べる大きさの超小型原子炉 
出典:三菱重工業

 その他、高温ガス炉(HTTR)使い三菱重工業はガスタービン発電システム、東芝・富士電機は蒸気タービン発電システム、また、小型ナトリウム冷却高速炉の開発を三菱重工業が公表している。

表6 日本で開発中の小型軽水炉と新型炉

新型炉開発の課題

 現在、フィンランド、ポーランド、ルーマニア、チェコ、エストニア、ウクライナなど北・東欧諸国、ヨルダン、サウジアラビア、トルコなど中東諸国、インドネシアなど、世界各国で新型炉を含むSMR導入検討が行われている。詳細は国際原子力機関(IAEA)「Advances in Small Modular Reactor Technology Developments」を参照。

 広大な国土を有するロシア・中国は、各種産業の基本となるエネルギー計画に力点を置いて国土開発を進めており、原子力をその中核技術と位置付けてきた。一方、1990年代から日本を含む西欧諸国は、エネルギー資源を安価な資源国からの輸入に頼る政策に舵を切り、原子炉開発の停滞期を迎えた。

 現在、世界の原子炉市場は核燃料を含めて、ロシア・中国が主導権を握っているといっても過言ではない。そのため、2010年代後半から、米国、カナダ、英国などが原子炉市場での主導権を取り戻すべく多くのプロジェクトを発足させてきた。遅れて、日本も米国、英国との協調路線を打ち出しているのが現状である。

 日本のエネルギー自給率は2020年度に11.3%で、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べても明らかに低水準である。東日本大震災前の2010年度は20.2%であり、原子力発電所の停止により大幅に下落した。脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーと安全な原子力発電所の増設は不可欠である。

図16 主要国の一次エネルギー自給率比較(2020年)
出典:IEA「World Energy Balances 2021」の2020年推計値、
日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2020年度確報値。※表内の順位はOECD38カ国中の順位図 

 次世代に向けた新型炉の開発は、地政学的なリスクを回避するためにも米国や英国との協調路線は必要と考えられる。
 第4世代原子力システム国際フォーラムで、日本は5システム(ガス冷却高速炉、鉛冷却高速炉、ナトリウム冷却高速炉、超臨界水冷却炉、超高温ガス炉)への参加を表明しているが、国力に見合った絞り込みが必要である。従来の全方位戦略ではなく、今は「選択と集中」の時である。

日本における高温ガス炉開発

 次世代炉として注目される高温ガス炉は、中性子減速材に黒鉛原子炉冷却材に高温ヘリウムガス(He)を使う熱中性子炉である。ウラン燃料を黒鉛などで被覆するため、燃料温度が高くなると自然に中性子を吸収して核反応が減衰する。また、化学的に安定なHeガスを使うため、水素爆発や水蒸気爆発の危険性が無い。

 原子炉出口のHeガス温度が700〜950℃と高く、直接にガスタービンに導いて発電できるほか、熱の多用途展開(熱化学法水素製造、高温熱供給による原子力製鉄、地域暖房、海水淡水化)が可能とされている。中でも、水素社会の実現に向けて、水を原料としたカーボンフリーの高効率水素製造が注目を集めている。

高温ガス炉の開発 

 次世代炉として注目される高温ガス炉(HTGR:High Temperature Gas Reactor)は、高温ガス冷却炉とも呼ばれ、中性子減速材に黒鉛を用い、原子炉冷却材として高温ヘリウムガス(He)を使う熱中性子炉である。
 原子炉出口の冷却材温度が700〜950℃のものを高温ガス炉(HTGR)と呼び、原子炉出口冷却材温度が950℃以上のものを超高温ガス炉(VHTR)と呼ぶこともある。

 高温ガス炉の開発のながれ
■1960~1980年代に、主に米国とドイツで開発が進められ、両国において出力:30万kW級の原型炉が運転され、発電プラントとしての基本性能が実証された。
■1980年代前半に、原子炉固有の安全性を高めて、炉心溶融や大量の放射性物質放出の恐れがないモジュール型高温ガス炉の概念が生まれた。
■1990年代前半、モジュール型高温ガス炉とガスタービンを組合せた発電プラントが開発され、米国General Atomicsの「GT-MHR」(出力:29万kW)は、ロシアとの共同開発に発展。原子炉から取り出した高温Heガスで直接ガスタービンを駆動し、45~50%の高い発電効率を実現した。
■2003年1月、ドイツの協力を得て中国清華大学でペブル・ベット型試験炉「HTR-10」(出力:2500kW、原子炉出口温度700℃)が稼働した。2023年12月、「HTR-PM」(電気出力:21万kW、原子炉出口温度:750℃)が世界初となる商業運転に移行した。 

 運転温度を高く設定できるため発電効率が高く、様々な熱利用が可能となる。ただし、炉心は高温となるため金属材料に代わり黒鉛やセラミックスで構成される点が、他の炉型と比較した時の最大の特徴である。
 冷却材に化学的に安定なHeガスを用い、水素爆発や水蒸気爆発の危険性が無い。また、ウラン燃料を中性子減速材の黒鉛で被覆するため、燃料温度が高くなると自然に中性子を吸収して核反応が減衰する。

 一方で、軽水炉と比べると出力密度が小さく、同出力規模の炉心に対して原子炉が相対的に大きくなるため、経済性の観点から大型化には不向きとされ、小型モジュール化が進められている。

高温ガス炉用の燃料

 直径:200~600μmの燃料核(ウラン、トリウムの酸化物あるいは炭化物)を、核分裂生成物を閉じ込めるために熱分解炭素(PyC:Pyrolytic Carbon)、炭化ケイ素(SiC)で多層被覆した直径:0.5~1mmのTRISO被覆燃料粒子が使われている。
 TRISO被覆燃料粒子を黒鉛粉と混合・焼結して成形された燃料体は、中性子減速材の黒鉛製構造物に組み込んで使われる。この燃料体の形式により、高温ガス炉はぺブルベッド型高温ガス炉ブロック型高温ガス炉に分類される。

ぺブルベッド型高温ガス炉

 ぺブルベッド型高温ガス炉では、TRISO被覆燃料粒子を黒鉛内に分散・焼結して直径:約6cmの黒鉛球に閉じ込めた球状燃料をドイツが開発して使われている。球状燃料を炉の上部から下部に流動させる方式で、高温ガス炉を運転しながら燃料の供給・排出が可能で、制御棒無しで反応制御ができる。
 中国が2023年12月に営業運転を開始した「HTR-PM」や、米国のX-energy(X-エナジー)が開発中の「Xe-100」は、ぺブルベッド型高温ガス炉に分類される。

ブロック型高温ガス炉

 ブロック型高温ガス炉では、TRISO被覆燃料粒子を多数含んだ棒状の燃料コンパクトを分散・焼結し、六角柱の黒鉛ブロック内に設置する。原子炉停止時に燃料交換を行い、反応制御には制御棒が用いられる。

 ブロック型は、燃料コンパクトを六角黒鉛ブロックの多数の穴に装填して封入する米国型のマルチホール型燃料と、環状ペレットに成形した燃料コンパクトを黒鉛スリーブに挿入して燃料棒とし、六角柱黒鉛ブロックに多数本装填するピンインブロック型燃料が開発されている。
 このピンインブロック型燃料は、日本の高温工学試験研究炉(HTTR)で採用されている。

図1 高温ガス炉用の各種燃料形態 出典:日本原子力研究開発機構

高温ガス炉の安全性

高温ガス炉の安全性が高いとされる理由:
耐熱性に優れた多層被覆のTRISO燃料粒子が採用されており、1600℃までの高温に耐える。また、事故が起きても、多層被覆により放射性核分裂生成物の大量放出を防止できる。
原子炉冷却材として化学的に不活性なHeガスを用いており、冷却材が燃料や構造材料と化学反応を起こさず、軽水炉のような水素爆発や水蒸気爆発が発生しない。
軽水炉に比べ1桁ほど出力密度が低く炉心に大熱容量・高熱伝導率・耐熱温度:2500℃の多量の黒鉛を配置しており、冷却材のHeガスが消失しても自然放熱により冷却されて炉心溶融に至らない。

 上記の高温ガス炉の安全性は、長らく机上の想定であったが、最近になり安全性を確認する実証実験が国内で始まっている。

 2022年1月、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の国際共同試験を、高温工学試験研究炉(HTTR)を使って実施した。その結果、全電源喪失に遭遇しても炉心溶融などは起きないことを公表した。
 実験は冷却材のHeガス循環を停止するなど、全電源喪失に相当する過酷条件下で実施された。停止直後に燃料温度は若干上昇したが、制御棒を用いることなく原子炉は自動停止し、炉心の自然放冷も進行した。ただし、原子炉出力30%での試験であり、今後、原子炉出力100%での試験を実施する計画としている。

 2024年3月、JAEAは、100%の出力でHTTRを運転した時、炉心冷却する機能を失うことを想定した試験で、出力がほぼゼロになり、炉心溶融が起きないことを実証した。炉心冷却に使うヘリウムガスの循環を意図的に止めると、出力は順調に低下し、約20分後には1%を下回り、核分裂が再び始まらないことを確認する。

図2 高温ガス炉の安全性について 出典:日本原子力研究開発機構

高温工学試験研究炉(HTTR)

 茨城県大洗町に日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構、JAEA)の高温工学試験研究炉(HTTR:High Temperature Engineering Test Reactor)が建設され、1998年11月に初臨界を達成した。2004年4月には、原子炉出口冷却材温度:950℃での全出力(熱出力:3万kW)運転に成功した。

 HTTRはブロック型高温ガス炉であり、設計・建設・運転は、三菱重工業、東芝、IHI、富士電機、川崎重工業、日立製作所(現在は撤退)などにより行われている。原子炉圧力容器内で核分裂反応により生じた熱を、Heガスにより取り出す。HTTRから取り出した高温熱の用途展開が進められている。 

図3 高温工学試験研究炉「HTTR」の仕様

 2014年8月、JAEAはインドネシアと、高温ガス炉導入に向けた技術協力協定を締結。2014年11月、福島第一原発事故以降に停止していたHTTRの再稼働に向け、安全審査を原子力規制委員会に申請した。
 原発導入を検討する地震国インドネシアでは、事故などで炉心冷却が働かない場合でも、自然に冷える高温ガス炉は安全面から魅力的である。また、高温ガス炉は原子炉冷却材に水を使わないため砂漠でも設置が可能で、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など中東諸国でも導入に積極的である。

 2019年9月、JAEAと原子燃料工業は、高温ガス炉向けに実用レベルの燃料体を開発した。すなわち、TRISO被覆燃料粒子の製造で、セラミックス被覆層の厚さを工夫し、実用レベルの核反応が生じても壊れない燃料を開発して中性子照射試験で性能を確認した。
 JAEAでは、従来のHTTR用燃料の3倍のウラン燃焼エネルギーを取り出せる燃料体の設計技術を開発し、原子燃料工業が量産規模でのTRISO被覆燃料粒子の製造技術を確立した。

 2021年7月、HTTRは安全対策工事を終了して10年半ぶりに運転を再開した。2009年に開始したOECD/NEAの安全性実証試験プロジェクト「炉心強制冷却喪失共同試験」を再開し、高温ガス炉に関する安全基準の国際標準化を進めている。

 2021年8月、文部科学省と経済産業省は、HTTRを利用した水素製造のため、2025年頃に水素製造施設の建設開始計画を発表した。
 この水素製造施設では、HTTRから高温(900℃)のHeガスを移送し、2030年までにメタン熱分解法による水素製造を検証し、その後、2050年以降に向けて熱化学分解法(IS法)高温水蒸気電解法による水素製造を進める計画である。

図4 高温ガス炉の熱利用構想 出典:日本原子力研究開発機構

三菱重工業

 2022年4月、日本原子力研究開発機構(JAEA)と三菱重工業は、2050年カーボンニュートラルに向け、経済産業省委託事業「超高温を利用した水素大量製造技術実証事業」を受託し、HTTRに新たに水素製造施設を接続して水素製造事業を開始した。
 大量の水素製造に対応可能とするため一部機器(高温隔離弁等)の大型化検討や、カーボンフリー水素製造技術として、①熱化学反応を組み合わせた水蒸気の熱化学分解法(IS法)、②触媒と熱によるメタン熱分解法、③固体酸化物型燃料電池の逆反応である高温水蒸気電解法(SOEC)の実証試験が進められている。

 2023年7月、三菱重工業が、経済産業省が推進する高温ガス炉開発を担う中核企業に選定された。今後、2030年代の運転開始をめざす実証炉建設に向け、研究開発および設計・建設を一括して取りまとめるとし、900℃以上の超高温核熱を利用する水素製造と発電を両立するコジェネプラントの概念を公表した。
 原子炉出力は一定運転としたまま水素製造とガスタービン発電のバランスを制御することで、電力需要変化に追従し、再生可能エネルギーの出力変動にも柔軟に対応する。

図5 高温ガス炉を活用した水素ターミナルのイメージ 出典:三菱重工業業

東芝

 2021年11月、東芝エネルギーシステムズは富士電機と、経済産業省・文部科学省のNEXIP事業で進めた高温ガス炉の取組みを公表した。高温ガス炉からの熱供給を生かし、蒸気タービン発電と蓄熱システムを組み合わせた電力供給である。東芝エネルギーシステムズは、高温水蒸気電解プラントとの接続も公表した。

 高温ガス炉は熱出力一定で運転を行い、太陽熱発電で実績のある溶融塩タンクに一端蓄熱し、蒸気発生器により必要な量の蒸気を蒸気タービンに供給して発電する。普及が進む再生可能エネルギーの電力需給変動に対し、高温ガス炉を出力調整力を持つ発電プラントとする概念で、早期の実用化が期待できる。

 具体的には、高温ガス炉4ユニット構成(750℃、7MPa)からの総熱出力(240万kW)を一定とし、高温槽と低温槽で構成される溶融塩タンク(KNO3(40%)+NaNO3(60%))4モジュールで蓄熱(総容量:810万kWh、12時間)を行い、供給される蒸気(565℃)で蒸気タービン(最高出力:96万kW)により柔軟な電力供給を行う。

 また、水素製造用HTGRシステムとして、固体酸化物型電解セル(SOEC)に水蒸気(約700 ℃)を供給して電気分解する高温水蒸気電解法も検討し、水を原料としたカーボンフリーの高効率水素製造を提供する。

図6 電気出力:100万kW級の高温ガス炉蒸気タービン発電プラント
出典:東芝エネルギーシステムズ

海外との共同開発

ポーランドとの国際協力

 2017年5月、日本とポーランドの両国政府が包括的な経済協力「戦略的パートナーシップ行動計画」を結び、高温ガス炉の共同開発が盛り込まれた。同年9月には、政府が従来の原子炉より安全性と環境性の面で優れた高温ガス炉の輸出検討に入ったことを表明した。
 ポーランドはエネルギーの大半を石炭火力発電に依存しているが、パリ協定の影響でCO2を排出しない高温ガス炉(出力:20~30万kW )への切り替えを検討しており、10~20基の建設を計画している。

 2022年11月、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、高温ガス炉研究炉の基本設計をポーランド国立原子力研究センターと開始すると発表した。研究炉(熱出力:3万kW、原子炉出口冷却材温度:750℃)は2025年までに建設し、商用炉(出力:16.5万kW)を2030年代に完成させる計画である。
 JAEAはHTTRの技術をベースに、商用炉の開発・輸出を念頭に置いて技術協力を申し入れ、2023年3月には、基本設計のうち最後の安全設計に関する研究協力契約を締結した。

英国との国際協力

 2019年7月、日英両政府は「クリーンエネルギーイノベーションに関する協力覚書」に署名した。これを受け、2020年10月には、JAEAと英国国立原子力研究所(NNL)が高温ガス炉開発に関する覚書を締結した。

 2022年9月、英国は、原子力利用の最有力候補として高温ガス炉に着目しており、発電設備を含む実証炉の建設に向け、炉の規模や発電コストの予備調査をJAEA、NNL、英国企業など5機関で実施すると公表した。2025年頃までに設計、2030年代初頭までに建設・運転を実現する計画である。

 2023年7月、JAEAとNNLのチームが、英国の高温ガス炉実証炉プログラムの基本設計を行う事業者に採択された。また、NNLは高温ガス炉燃料開発プログラムの製造技術開発等を行う事業者として採択されたことで、JAEAはNNLと連携して英国における燃料製造の技術開発を進める。

国内スタートアップ企業

 2022年4月操業のBlossom Energy(ブロッサムエナジー)が、ブロック型高温ガス炉の商用化に挑戦している。原子炉の減速材には黒鉛、冷却材にはヘリウム(He)ガスを用いる。
 同社は自前の生産拠点を持たないファブレス・メーカーである。8基の原子炉(熱出力:9万kW)をクラスター化した発電システム(電気出力:約33万kW)を目指し、冷却材出口温度:約750℃を想定。2035年に国内で第1号機の運転開始を計画している。 

高温ガス炉の抱える課題

 現在、高温ガス炉(HTGR)の発電所としての実績は、中国が2023年12月に実証炉を商業運転に移行しているのみである。米国は2028年を目指して小型モジュール炉として実証炉の建設を進めている。日本の実験炉(HTTR)は、2010年に950 ℃で50日間の連続運転による熱供給以降に目立った成果は見られない。

 実証炉の開発には数兆円規模の投資が必要である。日本は実験炉(HTTR)の研究成果を基に、英国・ポーランドに協力して実証炉建設のノウハウを吸収し、2029年から実証炉の製作・建設を開始する計画で、2030年代後半の実証炉の運転開始を目指している。

なぜ、高温ガス炉の開発が必要なのか?

 その理由は、現有の軽水炉と比べた場合に高温ガス炉の利点とされる2点にある。すなわち、①原子力プラントとしての安全性②高温の熱供給である。

 原子力プラントとしての安全性は、常に追求しなければならない。現在、日本原子力研究開発機構(JAEA)が、OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)の国際共同試験を高温工学試験研究炉(HTTR)を使って実施しており、原子炉出力100%運転中に全電源喪失に遭遇した場合の試験結果の公表が待たれる。

 事故時の安全性が確認されれば、次に長期の原子力プラントとしての信頼性評価が重要となる。一方で、革新軽水炉や小型軽水炉(SMR)との経済性(建設単価、発電単価)比較により、高温ガス炉の優位性が明らかとなれば、次世代炉の本命となる。

 また、高温の熱供給は高温ガス炉の特長であり、多用途展開が期待されている。中でも水素社会を実現するためには、安価で大量のクリーン水素が不可欠であり、様々な検討が進められている。課題は高温ガス炉を利用した原子力水素の経済性である。対抗馬となる再生可能エネルギー水素との比較が重要である。

 現在、中国や米国などで進められている高温ガス炉の炉心出口冷却材温度は750℃である。水素製造の経済性を高めるためには、950℃以上の超高温ガス炉(VHTR)の開発が有効である。まだまだ、先は長い。

 2023年7月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、ニューヨークの国連本部で記者会見を開き、「地球沸騰化の時代が到来した」と発言した。地球温暖化ではなく、切羽詰まった状況にある。「将来ではなく、今できることは何であろうか?」を真剣に考える分岐点に到達している。
 再生可能エネルギー水素は技術的に成熟しており、欧米中は大型水電解装置導入による低コスト化に舵を切っている。一方、高温ガス炉による水素製造はHTTR建設当初からの目的で、既に20年超を経過しているが経済性を含めた見通しは立っていない。今、どちらを選択すべきかは明確である。

なぜ、高速炉の開発が必要か?

 原子炉(核分裂炉)は、核分裂反応によって生じる高速中性子を減速して核分裂反応を生じさせる熱中性子炉と、減速しないで核分裂反応を生じさせる高速中性子炉に大別される。高速中性子炉は、当初「核燃料サイクル」を実現するための重要な炉と位置付けられ、高速増殖炉(FBR)として開発が進められた。

 高速中性子炉は、プルトニウムを燃料として発電するための新型炉であると共に、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム)を生成することができる。しかし、プルトニウムが過剰で増殖に意義を見出せなくなり、最近では単に高速炉(FR or FNR)と呼びプルトニウム焼却用原子炉と位置付けられている
 すなわち、高速炉を使って「核燃料サイクル」を回すことで、軽水炉での使用済み燃料を再利用でき、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を低減し余剰プルトニウムの削減ができる。

核燃料サイクルとは

 原子力発電所(軽水炉)では、天然ウラン(ウラン238の中に同位体ウラン235が約0.7%含有)を濃縮して、核分裂しやすいウラン235の濃度を3~5%に高めて燃料としている。

 核分裂反応はウラン235に中性子が衝突することで生じ、核分裂の過程で発生した中性子が次々とウラン235に衝突して連鎖反応的に核分裂が進み、熱エネルギーが生じる。ウラン238も中性子を吸収して核分裂しやすいプルトニウム239に核変換し、さらに中性子を吸収すると核分裂して熱エネルギーが生じる。

 その結果、軽水炉での使用済燃料にはウラン235が1%、プルトニウム239が1%、核分裂生成物など高レベル放射性廃棄物が3~5%が含まれ、残りはウラン238となる。

図1 軽水炉における発電前後の燃料の変化  出典:日本原子力財団

 使用済燃料に含まれるウラン235やプルトニウム239を、再処理工場で化学的に抽出し、燃料として再利用するのが「核燃料サイクル」である。この核燃料サイクルは、軽水炉を中心にリサイクルする「軽水炉サイクル」と、将来的に高速増殖炉を開発してリサイクルする「高速増殖炉サイクル」とに区別される。 

軽水炉サイクル

 現在行われている軽水炉サイクルでは、再処理工場で高レベル放射性廃棄物を除去し、プルトニウム239を分離・回収して劣化ウラン(濃縮後にウラン235含有量が0.2%程度となったウラン)と混ぜた混合酸化物燃料(MOX燃料、プルトニウム239を4~9%含む)に加工し、軽水炉の燃料としてリサイクルする。

 通常のウラン燃料(約2.7億円/トン)に比べてMOX燃料(約4.2億円/トン)は高価であるが、ウランの利用効率はリサイクルを行わない直接処分に比べて1.2倍程度と試算され経済性は低い。しかし、プルトニウムを減らす目的で一部の原発でMOX燃料が使われており、この方式は「プルサーマル」と呼ばれている

高速増殖炉サイクル

 将来的に「高速増殖炉」が開発できれば、再処理工場で分離・回収されるプルトニウム239を15~20%に高めて劣化ウランとの混合燃料を炉心に使用し、その外周にブランケット燃料として劣化ウラン(主にウラン238)を配置し、中性子吸収を進めてプルトニウム239の増殖比を高めることができる。

 そのため高速増殖炉サイクルでは、使用済み燃料の再処理を繰り返すことで、プルトニウムを燃料として利用しない直接処分に比べて利用効率を100倍以上に高めることができる。ウラン鉱石の可採年数は燃料の直接処分による利用では85年程度とされており、高速増殖炉サイクルは重要である。

図2 核燃料サイクル 出典:資源エネルギー庁 

核燃料サイクルのメリット

 「軽水炉サイクル」を使わずに使用済燃料を直接処分する場合、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物などを含む使用済燃料を全部「高レベル放射性廃棄物」として処分することになる。一方、使用済み燃料の再処理を行えば高レベル放射性廃棄物を減らすことができ、放射線の影響を1/10程度に低減できる。

 将来的に「高速増殖炉サイクル」が確立できれば、核兵器に転用可能なプルトニウムを効率よく燃やすことができる。また、使用済燃料中の半減期の長い超ウラン元素(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム)も、高速増殖炉で燃焼させることが可能であり、放射線廃棄物の低減が期待できる。

 原子力を平和利用に限る日本は、余剰プルトニウムを保有してはならない。そのため、使用済み燃料中のプルトニウムを再び核燃料として利用する核燃料サイクルを確立する必要がある。国際社会から疑念を持たれないよう、余剰プルトニウムの非保有を示す必要がある。

プルサーマル計画の現状

 日本では、使用済み燃料を再利用できる高速炉開発には早くから取り組んできたが、発電ができる原型炉「もんじゅ」の開発に失敗した。そのため原子力政策では、民間事業として「軽水炉サイクル」を確立し、将来に向け国レベルで研究開発を推進して「高速増殖炉サイクル」を確立すると改変した。

 福島第一原発事故以前からプルサーマル計画は進められ、日本原子力発電敦賀原子力発電所1号機、関西電力美浜原子力発電所1号機で実証試験が行われた。
 その後に、東京電力福島第一原子力発電所3号機、九州電力玄海原子力発電所3号機、中部電力浜岡原子力発電所4号機、四国電力伊方原子力発電所3号機、北海道電力泊原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機でプルサーマル運転が進められた。

 福島第一原発事故以降は、2023年2月時点で再稼働した四国電力伊方原子力発電所3号機、関西電力高浜原子力発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3号機でプルサーマル運転が進められている。2020年12月、大手電力会社は、新プルサーマル計画を策定し、2030年度までに少なくとも12基の計画を掲げた。

 現在、建設中断している電源開発の大間原発(138.3万kW)はMOX燃料100%で運転できる。しかし、他の認可原発ではMOX燃料は全燃料の1/3程度しか使えないため、大幅なプルトニウム削減には至っていない

再処理工場の現状

 ところで、軽水炉サイクルを回すためには、青森県六ヶ所村で日本原燃が建設を進めている「六ヶ所再処理施設」を稼働させる必要ある。六ヶ所村には、1992年から操業しているウラン濃縮工場低レベル放射性廃棄物埋設センター、1995年から操業している高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターある。

 しかし、施設の中核である核燃料の再処理工場の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したが、許認可手続きと安全対策などで、2022年9月に26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早くに操業」とした。MOX燃料工場も、2024年度上期に竣工の予定である。

 六ヶ所再処理工場が完成すれば、フル稼働時には約800トン/年の使用済み燃料を処理できる。使用済み燃料は各原発などで管理保管されており、2023年の総量は約1.9万トンに達している。全施設の管理容量は合計約2.4万トンのため約80%にまで達している。遅れている再処理工場の早期の稼働が待たれる。

図3 日本原燃の六ヶ所再処理施設 出典:日本原燃

  ところで、六ケ所再処理工場の操業が大幅に遅れたため、長年にわたり再処理は英国とフランスに委託している。既に再処理は終了しており、現在フランスにあるプルトニウムはMOX燃料にして徐々に送り返されている。英国ではMOX燃料工場がトラブルで閉鎖したため、プルトニウムは英国で貯蔵されている。

 2020年12月末の日本のプルトニウム保有量は、英国に21.805トン、フランスに15.411トン、日本国内に8.854トンで、合計46.07トンである。この量は、IAEAの計算方法に従えば核兵器5800発分に相当する。

図4 日本の分離プルトニウム保有量の推移 出典:原子力資料情報室

 2024年2月、電気事業連合会は、使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを、フランスでウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料に加工して消費する計画を公表した。電力会社大手の保有量は2023年度末で40.1トンとなる見通しで、MOX燃料の利用で減らすのが狙い。
 東北・中部・北陸・東電・日本原電の5社がフランスに保有するプルトニウムを、九電に1トン譲渡して玄海3号機で2027年度以降、四電に0.7トンを譲渡して伊方3号機で2029年度以降にMOX燃料として使う。九電はフランスに保有する0.1トンを自社で使い、建設中のJパワー大間原発には中部・東電が0.1トンを譲渡する。
 国内でMOX燃料を燃やせる原発は九州電力・四国電力・関西電力の3社で計4基しかない。電事連は2030年度で少なくとも原発12基でMOX燃料を使った運転の実現をめざしている。公表した計画では2027年度で2.1トン、2030年度までに6.6トン/年程度のプルトニウムの利用をめざす。

日本における高速炉の開発

 高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを分離・回収して再利用する「核燃料サイクル」の中核となる。国内では、1977年に初臨界を達成した基礎段階の実験炉「常陽」、1994年に初臨界を達成した発電できる原型炉「もんじゅ」を開発した。しかし、トラブルが相次いだ「もんじゅ」は、2016年に廃炉が決定した。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の失敗

 日本原子力研究開発機構(JAEA)の 「もんじゅ」(電気出力:28万kW)の原子炉本体は、燃料集合体(炉心燃料、ブランケット燃料)制御棒集合体、中性子反射体(中性子遮蔽体)などを、液体ナトリウム(Na)を浸した鋼製の原子炉容器に納めている。

 原子炉容器上部には制御棒駆動機構燃料交換機などを取り付けた遮蔽プラグを設置し、液体Naの液面上部には不活性なアルゴンガスが封じ込められている。また、原子炉容器からNa漏洩事故が生じた場合でも、炉心の崩壊熱除去に必要なNa液位を保つため、ガードベッセルが容器外周に設置されている。

 炉心で発生した熱を原子炉冷却材(一次主冷却系)の液体Na(529℃)により除去し、一次主冷却系中間熱交換器に伝え、放射化されない原子炉冷却材(二次主冷却系)である液体Na(505℃)が過熱器・蒸発器で蒸気(483℃、12.5MPa)を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する。

図5 高速増殖原型炉「もんじゅ」の発電システム構成

 1994年4月に高速増殖原型炉「もんじゅ」は初臨界を達成した。しかし、1995年12月には原子炉冷却材であるNa漏れによる火災事故が発生して停止した。2000年5月に試験運転を再開したが、同8月には点検停止中に核燃料交換用装置を原子炉容器内に落下させる事故を起こした。

 運転再開の準備中、2012年11月に立ち入り検査した原子力規制庁が、4万9千点近くある機器の約1万点の点検期間設定などが適切でないと指摘。2013年5月、原子力規制委員会が運転再開の準備停止を命じ、11月にはJAEAに代わる運営主体を探すよう、監督官庁の文部科学省に勧告した。

 原子力規制委員会は、新たな運営主体が見つからない場合は廃炉を含む抜本的な見直しを求めた。結局、総事業費約1兆1313億円をかけて開発した「もんじゅ」は運転実績がほとんどなく、会計検査院による研究達成度は16%に留まり、2016年12月に廃炉が正式に決定された。JAEAの運営体制が否定された。

 廃炉は第一段階(2018~2022年)で核燃料の取り出しと2次系Naの抜き取り、第二段階(2023年以降)に最も困難とされる1次系Na冷却材の取り出しなど、第三段階(未定)ではNa機器の解体・撤去、第四段階(~2047年度完了)で建物などの解体・撤去の手順で進められる。

図6 ナトリウム冷却高速中性子型増殖炉「もんじゅ」
出典:日本原子力研究開発機構

増大するプルトニウム問題

 一方、核燃料サイクルが機能してプルトニウムを燃やさない限り、核兵器に転用可能なプルトニウム保有量は増え続ける。日本は使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理ができる唯一の非核保有国である。1988年に発効された日米原子力協定は、2018年7月に30年の期限を迎えて自動延長された。

 高速増殖原型炉「もんじゅ」の失敗で、日本の核燃料サイクル政策は行き詰まりを見せた。米国は核不拡散の観点から日本にプルトニウム量の削減を求めている。これを受け、日本の原子力規制委員会はプルトニウム保有量を減らし、現在のプルトニウム保有量約46トンの水準を越えない方針を決めた。

 日本が保有するプルトニウムのうち約37トンは、使用済み燃料の再処理を委託する英国とフランスにある。米国は海外の在庫も問題視しており、日本政府内では英仏譲渡案も浮上しているが、交渉は始まっておらず実現は見通せない。現在は、再稼働している原発でのMOX燃料消費のみが行われている。

図7 分離プルトニウム保有量 出典:長崎大学核兵器廃絶研究センター

 2022年6月、JAEAは廃炉作業中の新型転換炉「ふげん」(出力:16.5万kW)の使用済み燃料を、フランスで再処理して抽出したプルトニウムをフランスに譲渡すると公表した。JAEAは2023年から搬出を開始し、2026年までに完了させる計画で、フランスでは譲渡されたプルトニウムを民生用原発の燃料として使う。

高速炉開発の戦略ロードマップ

 エネルギーの安定供給確保は重要な政策課題であるが、核燃料サイクルは、国ごとのエネルギー事情により独自の政策が進められている。米国は一度は開発を中止したが、その後、核燃料サイクルに再び着目し高速炉開発を推進している。フランス、ロシア、中国、インドは、積極的に高速増殖炉の開発を進めている。

 一方で、英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、使用済み燃料を直接処分する方針を打ち出している。現状ではウラン燃料の価格が安く、核燃料サイクルによるプルトニウム燃料での発電が高価となるためである。

フランスとの研究協力

 2014年8月、JAEA、三菱重工業、三菱FBRシステムズは、フランス原子力・代替エネルギー庁と、アレバが2030年頃の稼働をめざす高速炉実証炉「ASTRID」(出力:60万kW)とナトリウム冷却炉の研究協力で合意。 

 2016年12月、「もんじゅ廃炉」が決定した後、政府はプルトニウム増殖に重点を置かない「高速炉」の開発に向け、今後10年はもんじゅ廃炉と並行して、液体Naの取り扱いなど安全性研究を進めるとした。

 しかし、2019年9月、フランス政府が資金難で高速炉実証炉「ASTRID」の中止を発表したため、2019年12月、JAEA、三菱重工業、三菱FBR、フランス原子力・代替エネルギー庁、フラマトムの間で、ナトリウム冷却高速炉のあらたな開発協力を締結してシミュレーションや実験などを進めている。 

米国との研究協力

 2017年3月、GE日立ニュークリア・エナジー(GEH)は、最新鋭のNa冷却プール型高速炉(出力:10万kW)の開発で、Na冷却技術を有する米国ARCニュークリアとの提携を発表した。カナダでの認可取得を目指し、北米で2020年代後半の実用化をめざしている。

 2017年6月、GEHと米国原子力発電事業社エクセロンを含む米国企業5社は、ナトリウム冷却方式の小型モジュール高速炉「PRISM」(出力:31.1万kW)の許認可取得で協力するため、チーム結成協定を締結した。プルトニウムなど超ウラン元素の燃焼消費による核燃料サイクルに重点を置いた設計が進められている。
 採用される原子炉容器補助冷却システム(RVACS)は、格納容器の外側から空気の自然循環によって炉心崩壊熱を除去するシステムで、電源および運転操作を必要とせず高い安全性と信頼性を実現する。冷却材のナトリウムと良好な共存性を示す金属燃料(U-Pu-Zr三元系合金燃料)が採用される。

図8 GE日立ニュークリア・エナジーの「PRISM」 出典:GE Hitachi Nuclear Energy

 2018年12月、高速炉開発「戦略ロードマップ」が閣議決定され、高速炉開発は「ウラン需給状況等を踏まえ、中長期的には資源の有効利用と我が国のエネルギーの自立に大きく寄与し、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減に重要である」とし、実証炉の開発を国際協力で進める方針が示された。
 政府は高速炉開発を政府主導から民間の技術競争を促すために財政支援を行い、米国のナトリウム冷却式の多目的試験炉「高速スペクトル中性子照射試験炉(VTR)」(熱出力:30万kW)への参画方針を示した。VTRは「PRISM」をベースにGEHが設計を担い、早ければ2026年頃の運転開始を目指している。

 2022年1月、JAEA、三菱重工業、三菱FBRシステムズ(MFBR)は、米国テラパワーとナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書を締結し、日本が蓄積した技術をテラパワーに提供することで合意した。
 テラパワーは、米国エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉実証プラグラム」(ARDP)による支援で、小型ナトリウム冷却高速実証炉「Natrium」(電気出力:34.5万kW)の開発を進めており、西部ワイオミング州に石炭火力の代替として、2028年以降に稼働する計画である。

 2022年12月、日本における高速炉開発「戦略ロードマップ」が改訂された。2023年夏頃に炉概念の仕様を選定し、2024~28年度に実証炉概念設計・研究開発を行うとする計画で、2040年代に経済性を検証する「実証炉」を稼働する目標が掲げられた。  

 2023年6月、高速炉開発「戦略ロードマップ」を受けて、電気事業連合会は「原子燃料サイクルの早期確立に向けた事業者の取組について」を発表した。すなわち、2030年度までに少なくとも原子炉12基でのプルサーマルを目指し、使用済みMOX燃料の再処理実証研究を進めることを決定した。

 2023年7月、資源エネルギー庁は高速炉実証炉の開発に向け、三菱FBRシステムズ(MFBR)が提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」(電気出力:65万kW)を選定し、将来的にその製造・建設を担う中核企業として三菱重工業を選定した。
 選定された「ナトリウム冷却タンク型高速炉」は、同じナトリウム冷却炉でもループ型の「もんじゅ」とは異なる仕様であるが、フランス、中国、インドなどの海外では多く採用されている。

図9 実証炉の概念設計対象に選定された「ナトリウム冷却タンク型高速炉」
出典:三菱FBRシステムズ

 2023年10月、JAEA、三菱重工業、三菱FBRシステムズ、米国テラパワーの4機関は、2022年1月に締結した覚書を高速炉の実証計画を含む内容に拡大することで合意。実証炉開発で先行するテラパワーが日本側に技術支援を行う内容で、高速炉の大型化検討や金属燃料の安全性評価などが追加された。 

核燃料サイクルの抱える課題

 軽水炉サイクルを実現するための再処理工場の中核施設である青森県六ケ所村の核燃料の再処理工場の操業が大幅に遅れている。1992年に建設を開始したが、許認可手続きと安全対策などで、2022年9月には26回目となる工事完成の延期を発表。日本原燃は「2024年度のできるだけ早くに操業」とした。
 再処理工場の建設費は当初計画の4倍の3兆1000億円になり、建設開始から2040年頃までの総事業費は14兆4000億円と多額である。

 また、2018年6月、日本原子力研究開発機構(JAEA)の東海再処理施設(1981~2007年に約1140トンの使用済み燃料からプルトニウムを取り出す再処理を実施)が、福島第一原発事故を発端に新規制基準が施行され1000億円を超す安全対策費が見込まれたため廃止を決定した。
 総廃止の総費用は約1兆円と試算され、作業は約70年の長期にわたり、機器や配管の除染、機器の解体や廃棄物の搬出、建屋の洗浄などが行われる。再処理は核燃料の切断や溶解、分離精製など様々な工程があり、300億~800億円/基の商業用原発の廃炉に比べ、桁違いに膨大な費用が見込まれる。

図10 核燃料サイクル工学研究所の東海再処理施設 
出典:日本原子力研究開発機構

 一方、高速炉では、使用済み燃料から再処理工場でプルトニウムを分離・回収して製造されたMOX燃料を高効率で燃やすことができる。しかし、1994年に初臨界を達成した原型炉「もんじゅ」では、トラブルが相次ぎ2016年に廃炉が決定した。
 総事業費約1兆1313億円をかけて開発した「もんじゅ」は運転実績がほとんどなく、現在、解体作業中である。2047年の廃炉完了までには、さらに3750億円を要する

 英国、カナダ、ドイツ、フィンランド、スウェーデンなどは技術的な難易度、莫大な開発費用から、経済性が見出せないとし、高速炉を開発せず使用済核燃料を直接処分する方針を打ち出している。
 一方、日本は当初の計画をはるかに超える再処理工場への投資や、原型炉「もんじゅ」の失敗にも懲りずに、高速炉実証炉の開発を目指し、将来的には再び高速増殖炉の開発を指向している。莫大な費用を要する核燃料サイクルの開発を再開するには、より確実な見通しが必要である

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