2026年4月、経済産業省は2024年度のエネルギー需給実績(確報)を公表した。2024年度の最終エネルギー消費は11,280PJで前年度比2.0%減少し、若干の凸凹はあるが2005年度をピークとして年々減少している。
一次エネルギー供給は18,480PJで、前年度比で0.5%減少した。内訳はシェア80.1%の化石燃料が13.992PJで1.3%減少し、残りの原子力を含むシェア19.9%の非化石燃料が3.469PJで2.5%増加した。
その結果、エネルギー由来のCO2排出量は、前年度比1.6%減少し、2013年度比で26.6%減少となる9.07億トンとなり、1990年度以降の最小を更新した。
一次エネルギーの国内供給量
エネルギー供給とCO2排出
石油、天然ガス、石炭、原子力、水力、その他の再生可能エネルギー、バイオマスなど、自然から直接得ることができるものが「一次エネルギー」であり、海外からの輸入分を含めたものが「一次エネルギー総供給」と呼ばれている。国内備蓄量などを差し引いたものが、「一次エネルギー国内供給」である。
また、使い勝手の面から「一次エネルギー」を、電力、ガソリン・軽油燃料、水素などに加工・転換して利用する場合が増えており、これらは「二次エネルギー」と呼ばれている。実際に、石炭を使って発電する場合や原油をガソリン・石油などに精製する場合には、CO2排出が生じる。
消費者は、「一次エネルギー」と「二次エネルギー」の両方を使い、消費したエネルギーは「最終エネルギー消費」と呼ばれている。ただし、「最終エネルギー消費」には、「一次エネルギー」の輸送や「二次エネルギー」への加工・転換中に生じる損失分は含まれない。
したがって、「エネルギー起源CO2排出量」は、消費者が直接排出するCO2排出量の他に、「運輸部門」や「エネルギー転換部門」が排出するCO2排出量をカウントする必要がある。

一次エネルギーの国内供給
「一次エネルギー国内供給」は17,461PJで、前年度比0.5%減少した。内訳はシェア80.1%の化石燃料が13.992PJで1.3%減少し、残りの原子力を含むシェア19.9%の非化石燃料が3.469PJで2.5%増加した。
化石燃料の内訳は、石炭が前年度比で0.1%増加でシェア24.6%、石油が3.7%減少でシェア34.5%あり、天然ガス・都市ガスが1.2%増加でシェア21.0%であった。
また、非化石燃料の内訳は、原子力が9.6%増加でシェア4.5%、水力は3.4%の減少でシェア3.6%、水力を除く再生可能エネルギーは1.2%で12年連続の増加でシェア8.5%、廃棄物発電などの未活用エネルギーは3.4%の増加でシェア3.3%である。
注釈:図中のエネルギー量は、エネルギー単位(ジュール)を使用。原油換算kℓlに換算する場合には、図中のPJ(ペタジュール:1015ジュール)の数字に0.0258を乗じることで、原油換算百万klとなる。
(原油換算:原油1リットル = 9,250kcal = 38.7MJ。1MJ = 0.0258リットル)。

2005年をピークに「一次エネルギー国内供給」は減少傾向を示している。これには化石燃料の減少の影響が大きく、非化石燃料は原子力が減少した分を再生可能エネルギーが補うかたちで増減への影響は少ない。
2024年度の「一次エネルギー国内供給」の内訳から明らかなように、化石燃料のシェアは80.1%であり依然として高いのが現状である。2050年カーボンニュートラルを達成するためには、「一次エネルギー国内供給」の抜本的な見直しが必要なことは自明である。

二次エネルギーへの加工・転換
2024年度の「一次エネルギー国内供給」は17,61PJで、前年度比0.5%減少した。内訳はシェア80.1%の化石燃料が13.992PJで1.3%減少し、残りの原子力を含むシェア19.9%の非化石燃料が3.469PJで2.5%増加した。二次エネルギーへの加工・転換には、この「一次エネルギー国内供給」の一部が使われる。
石油精製の場合
ガソリン・軽油・重油などの「石油製品生産量」は、2024年度は5,101PJで前年度比7.2%減少しており、2010年度以降で最小となった。主力のガソリンは1,385PJで前年度比5.6%減少し、軽油は1,255PJで6.7%減少し、重油は999PJで10.5%減少と、いずれも減少傾向にある。
原料となる「一次エネルギー国内供給」の内の化石燃料は13.903PJと比べ、2024年度の石油製品生産量は5,101PJであることから、石油精製の歩留まりを考慮すると大きな割合を占めていることが分かる。
発電電力量の場合
「一次エネルギー」の電力への転換では、発電用のエネルギー投入量(PJ)➡発電電力量(億kWh)の変換が行われる。原料となる「一次エネルギー国内供給」の化石燃料は13,903PJと比べ、2024年度の発電用のエネルギー投入量は8,440PJであることから、大きな割合を占めていることが分かる。
火力・原子力・再生可能エネルギーなどの「発電電力量」は、2024年度は9,911億kWhで前年度比0.4%とわずかに増加となった。火力発電の化石電源比率は67.5%と依然として高いが、原子力・再生可能エネルギーの非化石発電比率は東日本大震災以降で最大の32.5%まで上昇した。
化石電源の内訳は、石炭が2785億kWhで前年度比1.0%の減少、天然ガスが3194億kWhで1.2%の減少、石油等が711億kWhで2.7%の減少と、いずれもわずかに減少傾向を示した。
一方、非化石電源の内訳は、原子力が935億kWhで前年度比11.2%の増加、⽔⼒が735億kWhで1.8%の減少、太陽光が981億kWhで1.7%の増加、⾵⼒が117億kWhで11.3%の増加、地熱が39億kWhで13.8%の増加、バイオマスが414億kWhで1.4%の増加で、水力のみが減少傾向を示した。

2024年度の火力発電のシェアは67.5%に減少した。CO2排出量の多い老朽火力発電所(石炭と石油)の休廃止によるものである。また、2024年度は夏季・冬季共に、全エリアにおいて安定電力供給に最低限必要な予備率3%を確保でき、節電要請は出されなかった。
再生可能エネルギー発電のシェアは23.1%に増加した。その内訳は太陽光発電が9.9%で前年度比1.7%増加、水力発電が7.4%で1.8%減少、バイオマス発電が4.2%で1.4%増加、風力発電が1.2%で11.3%増加、地熱発電が0.39%で13.8%増加である。出力変動の大きい太陽光発電に偏り、水力発電の減少が、今後の課題である。
原子力発電のシェアは9.4%に増加した。 2024年10月には東北電力女川原発2号機(PWR、82.5万KW)、同年12月には中国島根原発2号機(PWR、82.0万KW)が相次いで再稼働した。しかし、定期点検や司法判断などによる休停止で、2024年の国内原子力発電所の平均設備利用率は30.6%に留まる。
ただし、国内原発の平均設備利用率は2023年の28%、2025年の34.1%と徐々に上昇傾向にある。
最終エネルギー消費
最終エネルギー消費の減少傾向
日本の最終エネルギー消費は2005年度をピークに、年々減少傾向を示している。政府はこれを「省エネ効果」と呼んでいるが、少なくとも2010年以降のエネルギー消費量の低下には国内産業停滞の影響が含まれていることに注意が必要である。
2024年度の最終エネルギー消費は11,280PJで、前年度比2.0%減少した。その内訳は、石炭が3.9%減少、石油が3.8%減少の影響が大きい。2020年からの新型コロナウイルス感染拡大以前のエネルギー消費の減少傾向に戻りつつある。

2024年度の最終エネルギー消費に占める化石燃料(石炭、石油、天然ガス・都市ガス)のシェアは64.5%と高く、非化石燃料(電力、熱、再生可能・未利用エネルギー)のシェアは35.5%である。

部門別の最終エネルギー消費
2024年度の最終エネルギー消費の部門別シェアでは、企業・事業所他部門が60.7%、運輸部門が15.0%、家庭部門が24.3%を占め大きな変化はない。すなわち、企業・事業所他の生産活動の一部が、家庭でのテレワークなどに移行した状態が続いている。
前年度比増減は、企業・事業所他部門が前年度比2.7%減少(うち製造業は4.1%減少)、家庭部門も0.0%、運輸部門が1.5%減少(旅客が0.6%減、貨物が2.8%減)である。
最終電力消費は、企業・事業所他部門が0.6%増(内製造業は0.5%減少、業務他は2.0%増)、家庭部門が0.7%増、運輸部門が0%となっている。
若者の車離れや人口減などの影響を受けた製造業の生産活動停滞の影響は継続しており、家庭ではテレワークの継続や節エネが進められ、運輸の2024問題の影響が出始めている。
政府は、将来的に人工知能(AI)の普及に伴うデータセンターや半導体工場の稼働によるエネルギー消費の増加を見込んでいるが、現時点ではその影響は見えてこない。

2024年度の最終エネルギー消費の部門別シェアの詳細からは、企業・事業所他部門の60.7%の中でも製造業の割合が41.5%と高く、運輸部門では旅客部門14.1%と貨物部門10.1%が均衡している。

エネルギー起源のCO2排出状況
国内のCO2排出量
現在、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大以前のCO2排出傾向に戻りつつある。202年度のCO2排出量は前年度比1.6%減少し、2013年度比で26.6%減少となる9.07億トンとなり、1990年度以降の最小を更新した。2030年の目標である6.67億トンに向け、今後も継続的にCO2排出量を低減する必要がある。
部門別の内訳は、企業・事業所他部門が前年度比1.6%減少して4.96億トン、家庭部門が0.7%減少して1.46億トン、運輸部門が1.6%減少して1.87億トン、エネルギー転換部門が3.6%減少して0.77億トンである。
企業・事業所他部門のCO2排出量の削減は順調に進んでいるが、家庭部門、運輸部門、エネルギー転換部門はより一層の削減努力が必要である。


2026年4月、政府は、カーボンプライシングの具体的な施策として、CO2の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者(300~400社で、国内排出量の約6割)を対象に「排出量取引制度」を導入した。目標を策定しない企業には罰則を科す方向で、目標は政府が公表して外部から監視できるようにする。
政府が毎年度、各社にCO2排出上限の枠を割り当て、排出量の実績が枠を超えた企業は取引市場で枠を購入する。排出量が枠より少なければ、余った枠を市場で売却できる。実績は第三者機関が認証する。
CO2排出量の低減に向けて
■温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、2021年に第6次エネルギー基本計画で2030年度の電源構成の目標値が閣議決定された。
火力発電を(天然ガス20%、石炭19%、石油2%)を低減し、再生可能エネルギーを36~38%(太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%)、原子力を20~22%に増強する。
■2024年12月、第7次エネルギー基本計画の概要が報道され、2040年の電源構成の目標値が示された。
火力発電を30~40%に低減し、再生可能エネルギーを40~50%(太陽光22~29%、風力4~8%、地熱1~2%、水力8~10%、バイオマス5~6%)、原子力を20%に増強する。
2024年度の火力発電のシェアは総発電量の67.5%と高止まり状態にある。火力発電所の休廃止はCO2排出量削減に直接効いてくるため、目標シェアの2030年度の41%、2040年度の30~40%に向けた具体的な施策が必要である。
また、CO2を排出しない再生可能エネルギーの増強は不可欠である。しかし、2024年度における再生可能エネルギー発電のシェアは23.1%に留まっている。2023年の主要国電源別発電電力量の構成比を見ると、ドイツ、イタリア、英国、中国などと比較して、日本はまだまだ低いのが現状である。

2024年度の太陽光発電のシェアが9.9%で風力発電のシェアが1.2%と目標には程遠いのが現状である。共に出力変動が顕著なため、現状は火力発電による出力平準化を行っているが、本格的な太陽光・風力発電の導入拡大には、電力貯蔵システムの設置が不可欠である。
また、出力変動がない地熱発電のシェアが0.39%、バイオマス発電が4.2%と低調であるため、増強の具体的な施策が必要である。
一方、2023年度の原子力発電のシェアは9.4%と増加したが、目標にはまだまだ遠い。2024年12月、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、「可能な限り原発依存度を低減する」方針から、「最大限活用する」と方針を見直すことが報道された。
今後、閣議決定が行われる第7次エネルギー基本計画に基づいて、原子力発電所の再稼働ならびに稼働率の向上、安全性を高めた次世代新型炉への建て替えも期待したい。
2022年までの電力ひっ迫による節電要請は、政府の長期エネルギー政策の見通しの甘さによるものである。2022年2月から続くロシアのウクライナ侵攻による燃料高騰、2026年2月からの米国・イスラエルによるイラン攻撃で混乱が続く中東情勢から、エネルギー安全保障の重要性が増している。
政府には単なる目標設定だけの成り行き任せではなく、より緻密で具体的なエネルギー政策が求められる。
進まない電力会社の非化石電源化
エネルギー供給構造高度化法による推進
2020年3月、年間販売電力量が5億kWhを超える小売電気事業者(電力会社)に対し、「2030年度に非化石電源比率(再エネ+原子力)を44%以上」とする中間目標値が定められた。もちろん、めざす最終目標は2050年に非化石電源比率100%である。
この進捗はどうなっているのであろうか?また、2030年度が迫る中で、2031年度以降の非化石電源比率の目標を定める必要が出てきている。
小売電気事業者に課された目標
この法律は、エネルギー供給事業者(電気、ガス、石油など)に対し、非化石エネルギー源の利用拡大と、化石エネルギー原料の有効利用を目的に、2009年7月に成立した。(東日本大震災の前に成立した法律である。)
しかし、注目されたのは2020年3月、小売電気事業者に対して「エネルギー供給構造高度化法」の中間目標値が設定されてからである。すなわち、「年間販売電力量が5億kWhを超える小売電気事業者に、2030年度に非化石電源比率を44%以上」とする中間目標値が定められた。
そもそも電力会社が供給する電力の脱炭素化が進まなければ、それを利用するEV、FCVを始めとする電動化技術開発の意味は薄くなる。
そこで目標達成できなかった小売電気事業者には、資源エネルギー庁から指導・勧告・命令・罰則が科される。(ただし、非化石電源比率(%)=非化石電源による発電電力量/総発電電力量×100)

トップの東京電力エナジーパートナーの販売量は126.62億kWhであり、十二位の沖縄電力が5.95億kWhと旧大手電力会社が上位を占め、十三位のENEOS Powerが4.96億kWh、十四位のミツウロコグリーンエネルギーが4.63億kWh、十五位の大阪瓦斯が4.45億kWhと新電力と呼ばれる新規参入企業が並ぶ。
「エネルギー供給構造高度化法」では、年間販売電力量が5億kWh以上の小売電気事業者が対象で、十二位の沖縄電力(5.95億kWh)までが該当。しかし、十五位までは僅差で年度により順位が逆転する。
中途半端に思える44%は、2021年10月の第6次エネルギー基本計画で、2030年度の電源構成を原子力比率20~22%、再生可能エネルギー比率22~24%をめざすとした数値の合算値とほぼ整合する。これまで放任していた小売電気事業者に、非化石電源の導入比率目標を設定したのである。
当然のことであるが、最終目標は2050年に非化石電源比率100%で、既に目標を達成した小売電気事業者でも、非化石電源比率の更なる向上への努力を求めた。
また、「エネルギー供給構造高度化法」に従い、小売電気事業者には自社の電源構成と非化石証書の使用状況、並びにCO2排出係数を毎年公表する義務を課した。
小売電気事業者の電源構成の現状は?
公表されている「非化石電源比率」の定義であるが、各社が保有する発電設備の出力ではなく、発電電力量で定義したのは休・停止設備を除外する意味でより実質的である。(非化石電源比率(%)=非化石電源による発電電力量/総発電電力量×100)
火力発電、原子力、再生可能エネルギーは、小売電気事業者が自社で保有する発電設備からの販売電力量である。また、FIT電気とは、固定価格買取制度(FIT)に基づいて再生可能エネルギーで発電された電気を、小売電気事業者が買い取り販売したものである。
年間販売電力量が約5億kWhを超える小売電気事業者が公表している2024年度の電源構成を観ると、電源構成において火力発電比率が圧倒的に高いことが分かる。
また、中間目標である「2030年度に非化石電源比率を44%以上」については、自社で保有する発電設備の非化石電源比率(再エネ+原子力)で目標をクリアしている小売電気事業者はない。
旧大手電力会社の自前の再エネ比率が低いことが目を引く。非化石電源比率10%を超えているのは、北陸電力(26%未満)、東北電力(10%)のみである。
一方、非化石電源比率(再エネ+FIT電気+原子力)は、九州電力(57.9%)、関西電力(37.6%)が高く、2030年の44%中間目標値をクリアあるいは近づいている。いずれも原子力が再稼働しており、その影響が大きいことは明らかである。

「エネルギー供給構造高度化法」の目的は、火力発電主体の電力供給形態を非化石電源(再エネ+原子力)へ移行することにあるが、まだまだ見通しは暗いと言わざるを得ない。
「非化石証書」の問題点とCO2排出係数
小売電気事業者の「非化石証書」の使用状況
2016年1月、経済産業省は「非FIT非化石証書に係る制度」を導入し、小売電気事業者の非化石電源比率は、電源構成ではなく非化石証書の使用量で定まるとした。 「非化石証書」を購入しないと、再エネ発電であっても火力発電並みのCO2発生があるとして、小売電気事業者のCO2排出係数が算定される。
すなわち、小売電気事業者は非化石電源(再エネか原子力)を導入すると共に、2018年5月に開設された非化石価値取引市場から「非化石証書」を購入する必要がある。これは、非化石電源を持たない小売電気事業者に対し、「非化石証書」を購入すれば非化石電源比率をアップできるとする救済である。
当初、「非化石証書」は固定価格買取制度(FIT)に基づく再エネ由来の「FIT非化石証書」が取引された。2020年11月以降、大手電力会社が供出したFIT対象外の大型水力や卒FITなどの「非FIT非化石証書(再エネ指定あり)」、原子力やごみ発電などの「非FIT非化石証書(再エネ指定なし)」も取引が始まる。
これにより非化石電源の電力コストは、「非化石証書」の購入費分だけ高くなる。現在、オークションによる「非FIT非化石証書」は、最高価格:1.3円/kWhで最低価格:0.6円/kWhと定められている。
また、大手電力会社のように非化石電源を自社で保有する場合、非化石電源から内部調達できる量に上限が設定され、超過して保有する分は「非FIT非化石証書」として市場等へ供出することが推奨された。
また、全ての小売電気事業者は非化石電源の保有量に関係なく、自社の販売電力量に対して同じ比率で外部から「非化石証書」の購入が定められた。
固定価格買取制度(FIT)に基づく再エネ由来の「FIT非化石証書」の使用状況は、小売電気事業者により異なる。政府の決めた2030年の中間目標の44%に向け、自社の経営状況に合わせて「非化石証書」を購入しているのが現状である。
すなわち、大手電力会社の多くは、自社が有する再エネや原子力分の「非化石証書」を購入せず、火力発電並みのCO2排出係数を甘んじて受けている。
実際に、大手電力会社の「非化石証書」の使用率は20%前後である。非化石電源比率(再エネ+FIT電気+原子力)の高い、九州電力(非化石電源比率:57.9%)、関西電力(37.6%)でも「非化石証書」の使用率は20%前後である。
一方で、東京ガスは「非化石証書」の使用率100%を達成し、島嶼県として中間目標44%を免除されている沖縄電力はゼロ%を更新している。

各小売電力事業者の「非化石電源比率」と「非化石証書の使用率」とは必ずしもリンクしていないのである。本来はリンクすべきであるが、個々の事業者の経営状況が反映された結果である。
小売電気事業者のCO2排出係数
電気事業者の自主的な取り組みである温暖化ガス排出量の削減目標は、「2030年に温暖化ガス排出係数を0.37kgCO2/kWh以下」である。
これに対して、各社が公表している調整後CO2排出係数は東京ガスは0kgCO2/kWh、エネットが0.374kgCO2/kWh、大阪瓦斯が0.32kgCO2/kWh(2025年計画値)で、CO2削減目標をクリアあるいは近い値を示している。しかし、多くの電力会社では削減目標をオーバーしている。
ただし、調整後CO2排出係数とは、固定価格買取制度(FIT)に基づき国から配分された環境価値(余剰非化石価値相当量)や調達した非化石証書の環境価値等による調整を反映した後のCO2排出係数である。そのため、各小売電力事業者の真のCO2排出係数とは異なる点に注意が必要である。

実質的な非化石電源比率の高い九州電力(61%)、四国電力(42.8%)、関西電力(40.9%)は、いずれも調整後CO2排出係数は目標値をオーバーしている。非化石証書を十分に使わないことによる修正の影響であろう。
一方で、東京ガスはLNG発電が主体であるが、「化石燃料証書」を100%購入することで調整後CO2排出係数のゼロを早くも達成している。
繰り返しになるが「エネルギー供給構造高度化法」の目的は、小売電気事業者の非化石電源比率を高めることである。しかし、小売電気事業者の非化石電源比率が順調に伸びているとはいえない。「非化石証書」の仕組みが最善の取り組みになっているのであろうか?
エネルギー供給構造高度化法の進捗状況
2025年10月、経済産業省で第108回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会が開催された。
今年度は第2フェーズの最終年度であり、2026年度からの第3フェーズに向け、中間目標値の達成状況等の確認と、今後の運用等について検討を行われた。
これまでの「非化石電源比率」の推移
2018年度の対象事業者の非化石電源比率は22.8%であった。「エネルギー供給構造高度化法」では、第1フェーズ(2020~2022年度)では中間目標(2030年度に40%以上)を導入した。
その結果、第1フェーズでは非化石電源比率は21%から29%に上昇したが、第2フェーズ(2023~2025年度)では2024年度で31%にとどまった。
中間目標(2030年度に非化石電源比率を44%以上)の達成は、まだまだ明るいとは言えない状況にある。ただし、FIT電源への高い依存から、FIP電源の増加や原子力再稼働により非FIT電源の割合が増加したのは、電気料金の高騰対策としても明るいニュースである。

ゆっくりと増加する「非化石証書」の取引状況
「非化石証書」は、固定価格買取制度(FIT)に基づく再エネ由来の「FIT非化石証書(FIT証書)」と、大手電力会社が供出したFIT対象外の「非FIT非化石証書(非FIT証書)」があり、日本卸電力取引所(JEPX)が運営する「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」で売買される。
「非FIT証書」の取引量はゆっくりと増加している。大部分が発電事業者と需要家の相対取引(電力会社内での内部取引を含む)によるものであり、市場取引は少なく、今後の伸びが期待される。
また、2022年度以降は需要家が非FIT証書(再エネ指定あり)を直接購入でき、データセンター、不動産、自治体による利用など増加傾向にあるが、2024年度で4.6億kWh程度と限定的である。
一方、「FIT証書」の取引量もゆっくりと増加しているが、売札量(売りたい企業による入札量)に比べて買札量(買いたい企業による入札量)の増加が顕著である。

これまでの「高度化法義務達成市場」は、非FIT証書の取引価格が上限価格(1.3円/kWh)となる場合もあったが、多くの入札で下限価格(0.6円/kWh)となっている。
「再エネ価値取引市場」についても、FIT証書の取引価格は着実に増加しているが、これまで全ての入札で売入札量が買入札量を大幅に上回り、約定加重平均価格は下限価格(0.4円/kWh)近傍であった。
2040年度の中間目標設定は?
「エネルギー供給構造高度化法」の中間目標の2030年度が迫る中で、2031年度以降の非化石電源比率の目標を定める検討が始まっている。
2020年3月に発表された中間目標の44%は、2021年10月の第6次エネルギー基本計画で、2030年度の電源構成を原子力比率20~22%、再生可能エネルギー比率22~24%をめざすとした数値の合算値とほぼ整合する。
2025年2月に策定された「2040年度のエネルギー需給見通し」では、再エネ4~5割程度、原子力2割程度、火力3~4割程度という新たな電源構成が示された。したがって、「2040年度のエネルギー需給見通し」の非化石電源の下限値を参照し、「2040年度に非化石電源比率を60%以上」(案)が示されている。
また、これまでと同様に第3フェーズも3年間(2026~2028年度)で終了することとし、2029年度以降は第4フェーズ(仮称)が運用開始される予定である。

「非FIT証書」の販売収入
非化石価値取引制度の目的の一つは、非化石証書の販売収益を非化石電源の新設・増設や維持に充てることにより、非化石電力量を維持拡大することである。
そのため「非化石証書」の売り手のうち、旧一般電気事業者であった発電事業者及び電源開発については、外部への非FIT証書の販売収入がある場合、証書販売収入の額及び使途について、資源エネルギー庁に報告することを求めている。
2024年度の「非FIT証書」の販売収入は、市場取引19億円、相対取引576億円である。
使途の内訳は、拡充・改良については主に水力発電所の大型改修工事および原子力発電所の安全対策工事などで、修繕については主に水力発電所の放水管浚渫および定期点検などであった。具体的なそれぞれの金額は公開されていない。

「エネルギー供給構造高度化法」の仕組みは難解である。真に、非化石電力量を維持拡大する取り組みとなっているのか?
大きな問題は旧大手電力会社の自前の再エネ比率が低いことにある。非化石電源比率10%を超えているのは、大規模水力発電を保有する北陸電力(26%未満)、東北電力(10%)のみである。再エネ電源の導入を、主に新電力に依存したことが原因である。
一方、非化石電源比率(再エネ+FIT電気+原子力)は、九州電力(57.9%)、関西電力(37.6%)が高い。いずれも原子力が再稼働しており、その影響が大きいことは明らかである。