原子力

事故耐性燃料の開発(Ⅲ)

現行のジルカロイ被覆燃料棒に比べて耐熱性に優れた事故耐性燃料(ATF)は、水素爆発や炉心溶融など過酷事故の発生・拡大を抑える効果が期待できる。そのため、既に米国では商用炉を用いた照射試験が行われており、中国、ロシア、フランス、韓国なども開発に乗り出している。短期的なATF概念として、燃料被覆管に「Crコーティング・ジルカロイ」、燃料ペレットに「酸化物ドープ・ウラニア」、長期的なATF概念として、燃料被覆管に「FeCrAl(-ODS)改良ステンレス鋼」、「SiC/SiC複合材料」、燃料ペレットに「窒化ウラン(UN)」、「ケイ化ウラン(U3Si2)」があげられている。
原子力

事故耐性燃料の開発(Ⅱ)

福島第一原発事故の経緯から、燃料被覆管には「高温水や水蒸気との酸化発熱反応が起き難い材料として水素発生速度を遅らせ、より耐熱性に優れた材料とする」こと、燃料自体にも「燃料中心温度の低下や、放射性物質の保持性能を向上させる」ことが、事故耐性燃料(ATF)の基本概念として提案された。2018年、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の軽水炉に関するATF専門家グループ(EGATFL)による会合(2014~2017年)で、ATF候補概念が検討され候補材料が示された。
原子力

事故耐性燃料の開発(Ⅰ)

2011年3月、東京電力福島第一原子力発電所では、東日本大震災の津波を受けて「炉心溶融」という重大事故(SA:Severe Accidentt)を引き起こした。原子炉建屋の一部が水素爆発で吹き飛び、多量の放射性物質を大気中に放出した。今でも損傷した炉心の冷却を続けており、高レベル汚染水を排出し処理を続けている。このような重大事故を二度と起こさないために、各国ではプラントメーカーと協力して様々な安全対策を打ち出し研究開発を進めている。中でも、「事故耐性燃料(ATF:Accident Tolerant Fuel)」の開発は世界的なトレンドとなり、2030年以降の早期実現をめざして開発が進められている。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅺ)

2023年度の国内総生産(GDP)は、物価の影響を含めた名目GDPが前年より5.7%増えて591.4兆円に達した。 しかし、米ドル換算では1.1%減の4.2兆ドルで、ドイツの4.4兆ドルに抜かれ、世界4位に転落した。円安を何とかしないと、2024年度はインドにも抜かれるとの報道が流れている。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅹ)

FIT制度が導入された2012~2015年、バイオマス発電の発電電力量の年平均伸び率は4%程度で推移し、2016年以降は、年平均伸び率は14.8%と高い値を示している。バイオマス発電の買取実績は太陽光発電、風力発電に次いで多く、堅調な導入が進められている。年平均伸び率14.8%で発電電力量が増加を続けた場合、2030年には1054億kWhに到達する。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の5%とするバイオマス発電の電力量(465~470億kWh)の2.2~2.3倍になる。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅸ)

FIT制度が導入された2012~2015年、地熱発電の設備設置容量の年平均伸び率は0%で推移し、2016年以降は、2019年、2020年、2023年に若干の伸びを示したものの、概ね年平均伸び率は4%に留まる。年平均伸び率は4%で増設が進むと仮定すれば、2030年の地熱発電の発電電力量は43億kWhに拡大する。しかし、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の1%とする地熱発電の電力量(93~94憶kWh)の45.7~46.2%に留まる。 
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅷ)

FIT制度が導入された2012~2016年、風力発電の設備設置容量の年平均伸び率は4.6%程度で上昇傾向を示した。2017年以降は伸び率は隔年で変動するが、上昇傾向は平均7.2%に留まっている。2023年度の発電電力量は105億kWhに達したものの、2030年度の目標値である465~470億kWhには程遠い。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅶ)

FIT制度が導入された2012年の太陽光発電の発電電力量の年平均伸び率は78.3%と異常に高い値を示した。しかし、買取価格の引き下げと共に、2014年以降の年平均伸び率は51.3%、31.6%、20.3%、13.8%、10.7%、14.0%、8.8%、7.5%、2023年は4.2%と明らかに導入は鈍化傾向を示している。仮に4.2%の年平均伸び率をキープできても、2030年には1290億kWhと予測される。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の14~16%とする太陽光発電の電力量目標(1302~1504億kWh)の86~99%に留まる。ただし、年平均伸び率は年々低下してきており、現時点では太陽光発電も2030年の発電電力量の目標値はクリアできないと予測できる。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅵ)

FIT制度が導入された2012~2015年、水力発電の発電電力量の年平均伸び率は3.8~5.1%と順調に上昇したが、2015年あたりでピークを示し、2017年以降はー1.7%と明らかな減少傾向を示している。このまま-1.7%で発電電力量が減少を続けた場合、2030年には670億kWhに減少すると予測される。これは、第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の11%とする水力発電の電力量(1023~1034憶kWh)の65.5~64.8%にまで低下することになる。
はじめに

脱炭素に向けた発電電力量の推移(Ⅴ)

FIT制度が導入された2012~2015年、大規模水力発電を含む再生可能エネルギーの発電電力量の年平均伸び率は10~12%と伸びたが、2016年以降は年平均伸び率は鈍化し、2023年は3.0%まで低下した。今後、仮に年平均伸び率3.0%を維持できた場合でも、2030年には2854億kWhにしか到達しない。これは第6次エネルギー基本計画で目標とした総発電電力量(9300~9400億kWh)の36~38%とする再生可能エネルギー発電の電力量(3348~3572憶kWh)の80~85%であり、目標は未達となる。2011年の東日本大震災以降の国内の再生可能エネルギー導入状況を観てみよう。