脱炭素COP30で分断が鮮明に!(2)

はじめに

 国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が、2025年11月10日~11月22日(1日延長)、ブラジルの熱帯雨林に隣接したベレンにおいて開催された。2015年にパリで開催されたCOP21で採択された「パリ協定」から、10年目という節目の年である。
 COP30では、気候変動の進行を遅らせるために、「化石燃料からの脱却」に向けた工程表の作成で合意できるか否かが焦点であった。会期を延長して協議が行われたが、石油産油国などが強固に反対の姿勢を示して合意に至らず、閉幕した。

COP30の動き

気候変動に備えるための対策資金

 地球温暖化の原因は主に先進国によるものであるのに、気候変動による自然災害などの影響は途上国でみられている。これらの途上国に「気候資金」の支援を行うことが議論され、この資金をどのように国際的に用意していくか?拡大と早期の資金供出について討議された。

 この「気候資金」についても、負担増を警戒する先進国と途上国との対立が続いた。途上国は2030年までに2025年比で3倍の1200億ドル(約18兆7000億円)に増やすよう求め、議長国ブラジルが、その主張に沿った選択肢を盛り込んだが、日本やEUなどの先進国が追加の資金負担を嫌い反対した。

 最終的には、「気候資金を2035年までに少なくとも3倍に増やすよう求める」という努力目標に後退し、期限も5年先送りとなった。また、各国がすでに約束している排出削減目標を達成できるよう、気候対策を加速するための自主的な取り組みについて2年間の作業計画の立上げが決定した。 

森林・植林などによるCO2吸収量の増大

 議長国ブラジルは、世界の注目をアマゾン熱帯雨林に集めて投資資金を呼び込むため、COP開催地にベレンを選んだ。COP30の冒頭で、熱帯林を保護する国々に資金を支払う新基金「トロピカル・フォレスト・フォーエヴァー・ファシリティ(国際熱帯雨林保護基金、TFFF)」の立ち上げを表明した。

 新たな森林基金は、海外からの資金で森林破壊の監視や伐採地の回復を行う仕組みで、COP30を前に開かれた首脳級会議で正式に発足した。政府が拠出する公的資金で賄い、1000億ドルは民間投資から集め、1250億ドル規模の基金にする目標を掲げた。

 しかし、会期中にアマゾン先住民組織と環境NGOが連名で、熱帯林保全の国際基金(TFFF)を拒否する声明を発表した。資金の少なくとも20%を先住民組織に配分するルールであるが、先住民らは「新基金は先住民や地域社会を優先しておらず、資金の80%は各国政府に渡る」と反発を強めた。
 「森林基金は、農業、鉱業、石油採掘といった森林破壊の真の構造的な要因に対処しようとしていない」との先住民の訴えに、森林保全の新潮流が垣間見えた

 森林基金の支援対象には、森林破壊面積が大きいブラジル、インドネシア、アフリカのコンゴ民主共和国を含む74か国が想定されており、対象国の森林の総面積は合計10億ヘクタールに達する。
 「森林破壊に対する世界的な計画の行程表」を求める呼びかけに90カ国以上がを支持を表明した。しかし、採択された決定文書には、期待された森林破壊に歯止めをかける具体策は盛り込まれず、先住民らが訴えた「森林破壊の真の構造的な要因」への具体的な記載もなかった

  気候変動対策に加えて生物多様性の保全が注目されているが、最近では森林破壊と共に人権侵害につながる各種原料調達について批判が続出している。先住民族らが訴えた「森林破壊の真の構造的な要因」が、今後、日本を含むバイオマス大量輸入国への大きな批判となる可能性が高い。

 世界各地で異常気象が報告され、地球温暖化の影響が明らかになってきた。しかし、米国トランプ政権の「パリ協定」からの再離脱欧州の政治基盤の右傾化などにより、自国第一主義がはびこり、国際協力としての脱炭素への取り組みに明らかに逆風が吹いている。
 COPでは欧州連合が主導的立場で、米国がそれを強力に支持する形で進められきた。今回、米国の”にらみ”がなくなった分、各国は自由に思惑を発言した。しかし、このままの状況では、脱炭素に向けた国際協力は大きく後退することになる。
 今後、米国に替わり覇権をねらう中国の動きが脱炭素の鍵となる。日本も自国第一主義によりグリーントランスフォーメーション(GX)が後退する可能性が高くなった。ポスト脱炭素を考える時期に来ていることは間違いない。世界が2.3~2.5℃の気温上昇に直面した場合、どうするか?

                                                      (おわり)

コメント

タイトルとURLをコピーしました