加速できるのか?原発再稼働(Ⅲ)

原子力

 北海道電力の泊原発3号機の再稼働は、地元自治体の同意が事実上の要件となっており、立地・周辺4町村の泊村と、神恵内かもえない共和町岩内町は既に同意を表明している。
 北海道知事は、2025年12月の定例道議会の会期中に泊原発を視察し、4町村長との面会も実施して泊原発3号機の再稼働の最終判断を発表した。

北海道電力泊とまり3号機の再稼働

北海道知事の原発再稼働の容認

 電力広域的運営推進機関(OCCTO)の試算では電力10エリアのうち、四国エリア以外で電力需要は増加する見通しで、北海道エリアは今後10年で伸び率13%で最大とした。政府は国策として全面支援し、2026年にソフトバンクによるデータセンター開設、2027年にラピダスの半導体工場が量産化に入る。

 2025年11月、北海道の鈴木直道知事は、北海道電力の泊原発3号機の再稼働を容認すると表明した。再稼働に必要な知事同意は、今後、定例道議会の議論を踏まえて最終判断が行われる。
 容認する理由として、①泊原発3号機が国の新規制基準に適合していること、②再稼働により電気料金の値下げが見込まれ、③データセンターや半導体工場が計画される道内での電力安定供給が確実となり、④脱炭素電源の確保で温暖化ガスの削減につながることなどが示された。 

 泊原発3号機の再稼働は、地元自治体の同意が事実上の要件となっており、立地・周辺4町村の泊村と、神恵内かもえない共和町岩内町も同意を表明している。北海道知事は、12月12日までの定例道議会の会期中に泊原発を視察し、4町村長との面会も実施して再稼働の最終判断を発表する。

 北海道電力は、知事の容認意向の表明を受け、「原発の必要性や安全対策などについて引き続き丁寧に説明を行っていく」とコメントしている。

再稼働の容認に至るまでの経緯

 2011年3月、東日本大震災とそれに伴う津波により、福島第1,2原発が運転を停止。福島第1原発は、原子力基準の『レベル7』に相当する放射性物質漏れを伴う重大事故に至る。

 2011年3月7日、調整運転として泊原発3号機は再稼働し、8月17日に営業運転に移行したが、2012年5月5日には定期検査のため停止された。

 2013年7月、原子力規制委員会(NRA)に対し、泊3号機の安全審査を申請した。敷地内に存在する複数の断層が活断層でない調査結果がNRAにより認められ2025年7月に安全審査に合格する。
 この結果を受けて、北海道電力は泊3号機の2027年早期の再稼働をめざすとし、審査中の1,2号機も2030年代前半の再稼働をめざしている。
 
 NRAは、原発周辺で発生しうる地震に対して、施設の耐震性は十分にあると評価した。また、津波対策は新防潮堤の建設で安全性を確保できるとした。また、周辺の火山活動については、原発運転期間中に活動する可能性は小さいと結論づけた。
 安全対策は、①格納容器内への水素爆発防止装置の設置と、②電源喪失を想定した多数の電源車の高台へ設置は終了、③旧防潮堤を撤去して海抜19m、全長1.2kmの新防潮堤工事の実施。安全対策工事の総工費は約5100億円で、当初(2011年)の200~300億円の17倍以上に達する。

 2025年7月、NRAは泊原発3号機の安全審査を終えて、正式合格を認めた。経済産業省はこれを受け、北海道と原発周辺の4町村に再稼働の容認を促す「理解要請」を出した。原子力を最大限活用する政府方針が具体化に向けて動き出し、自治体トップへ圧力をかけた。

 2025年9月20日~10月11日、北海道主催の住民説明会が開催される。NRA、資源エネルギー庁、北海道電力の担当者が審査結果や国のエネルギー政策における原発の位置づけ、泊原発の災害対策について説明と質疑応答が行われた。
 原発立地地域の泊村、岩内町、神恵内村、共和町のほか、5~30km圏内の緊急時防護措置準備区域(UPZ)にある倶知安町、余市町、寿都町の計7町村を対象に、説明会が行われた。

  2025年12月、北海道電力が2027年早期の再稼働をめざす 
とまり
 原子力発電所3号機について、鈴木直道知事は道議会で同意を表明した。国が道と立地・周辺4町村の泊村、 神恵内
かもえない
 村、共和町、 岩内
いわない
 町は11月までに同意を表明し、「地元同意」が出揃った。
 鈴木知事は、北海道電力が再稼働後の電気料金の11%程度の値下げを発表したこと、再稼働が道内の投資促進や雇用拡大につながることなどを説明。北海道電力は、再稼働により約600億円/年の収支改善を見込む。

図1 北海道電力が再稼働を目指す泊原子力発電所(左から3、2、1号機) 出典:読売新聞

北海道の産業活性化に向けた動き

 政府は国策として、半導体工場やデータセンターの北海道への誘致を推進している。

 2025年4月、先端半導体の国産化をめざすラピダスは、北海道千歳市の工場で試作ラインを始動した。今後、顧客企業に試作品の情報を提供し、2027年の量産化をめざしている。
 ラピダスは世界で量産が実現していない回路線幅2nmの半導体開発を進めており、AI(人工知能)普及に伴い幅広い分野で需要が見込まれる。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子などが先行しており、競争は激化している。  

 2025年4月、ソフトバンクは、北海道苫小牧市で大規模データセンターの本体工事に着手。AIによる機械学習の推進拠点として、2026年度の稼働をめざしている。8割超のデータセンターは東京と大阪に集中しており、電力供給や災害への備えに課題を抱えるため、政府は地方分散を推進している。
 総受電容量:約50MW規模で始めて、総工費:650億円超(国は補助事業で最大300億円を支援)を見込む。当面は300MWを目標に拡張し、需要に応じて1GWをめざす。ソフトバンクは、電気や水と共にAIが産業立地の条件になるとし、東京、堺、苫小牧の3拠点でのサービス提供を進める。

 北海道で起きている状況を簡潔に示すと、「半導体工場やデータセンターの北海道への誘致」→「電力需要の増加」→「泊原発の再稼働」である。審査に12年を要したのは、敷地内の活断層や津波対策を巡りNRAとの調整に時間を要したためである。
 北海道釧路湿原周辺でメガソーラー建設が相次いでいるが、希少生物への影響が懸念され、釧路市は建設反対を宣言したことが原発再稼働の追い風になっている。
 しかし、北海道で起きている状況は、これだけではない!

高レベル放射性廃棄物の最終処分地の動き

 北海道電力泊原発の立地地域は泊村、岩内町、神恵内村、共和町であるが、5~30km圏内の緊急時防護措置準備区域(UPZ)には倶知安町、余市町、寿都町の計7町村が対象であるが、寿都町と神恵内村は高レベル放射性廃棄物の最終処分地に名乗りを上げている。

 2020年11月、北海道の寿都町すっつちょう神恵内村かもえないむらが名乗りをあげ、電源立地地域対策交付金(調査期間中最大20億円)により文献調査が開始された。一方、北海道知事は条例で高レベル放射性廃棄物は受け入れがたいとし、第2段階の概要調査には反対を表明した。
 寿都町と神恵内村には交付金が支払われたが、道は核のごみを受け入れがたいなどとする条例に基づき、配分金を受け取らなかった。

 2024年2月、原子力発電環境整備機構(NUMO)は、第1段階の文献調査結果の報告書案を公表。寿都町は町全域、神恵内村は積丹岳しゃこたんだけの半径15km圏内に入るため南端部(陸域3~4k㎡)を第2段階の概要調査の候補地とした。北海道知事は反対姿勢を貫いており、第2段階の概要調査へのハードルは高い。

 今後の課題は、「泊原発の再稼働」→「使用済み燃料の貯蔵」→「六ケ所村の再処理工場への搬出」→「高レベル放射性廃棄物の最終処分」であり、寿都町と神恵内村が高レベル放射性廃棄物の最終処分地に名乗りを上げている。
 北海道知事は反対姿勢を貫いているが、今後の動きに注意が必要。高レベル放射性廃棄物の半減期は、含まれる核種により数万年以上の長期間にわたるため、監視対象である火山(洞爺カルデラ、支笏カルデラ)周辺の火山活動の影響を完全に否定することはできない。

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