遅れた放射性廃棄物の処理(Ⅱ)

原子力

 話題に上らないが、福島第一原発事故により発生した放射性災害廃棄物は消滅した訳ではない。地震や台風・大雨による放射性物質の流出が危惧される状況に置かれている。

 「指定廃棄物」は、2015年6月時点で約16万トンに達した。宮城、栃木、群馬、茨城、千葉に多く、政府は処分場をこの5県に1カ所づつ建設する表明したが、住民の反対で農地などに一時保管されている。
 また、「除染廃棄物」は、2014年9月に政府が福島県内に最長30年にわたり保管する総面積は16km2の「中間貯蔵施設」の建設を発表したが、最終処分場になるとの不安から反対が相次ぎで、福島県内各地の仮置き場に一時保管されている。

低レベル放射性廃棄物と福島の災害廃棄物

低レベル放射性廃棄物の浅地中処分

 現在、原子力発電所から出た低レベル放射性廃棄物は、1992年12月に操業を開始した青森県六ケ所村にある日本原燃の「低レベル放射性廃棄物埋設センターで、一部の浅地中処分が始まっている。

 原子炉施設の廃止措置で発生する低レベル放射性廃棄物は、放射能レベルが比較的高いものから低いものまで幅広く分布しており、放射能濃度に応じて余裕深度処分(地下50~100m)コンクリートピット処、人工構築物を設けないトレンチ処分に区分して埋設される。

 再処理工場やMOX燃料工場の操業では、高レベル放射性廃棄物のほかにも、各種の低レベル放射性廃棄物が発生する。これらの廃棄物中には、TRU核種(ウラン238が中性子を吸収しβ崩壊を繰り返してウランより高い原子番号の元素になった種々の核種)が含まれ、放射能レベルに応じて埋設処分される。

 ウラン濃縮工場や燃料加工の工場の操業では、半減期が極めて長いウラン廃棄物が発生する。ウラン濃度が比較的低い大部分の廃棄物については、浅地中処分を行うことが可能であり、再利用による資源の有効利用の可能性も含めた研究開発が進められている。

2019年末に読売新聞が国内の電力会社8社に対してアンケート調査を実施した結果:
■現時点で廃炉が決まっている原発18基の解体で排出される低レベル放射性廃棄物は合計約164000トンに達するが、93%の処分先が未定。(事故を起こした福島第一原発は廃炉工程が異なるため除く)
■この低レベル放射性廃棄物は、使用済核燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物以外のもので、放射能が高い順に制御棒などの「L1廃棄物」汚染された廃液などの「L2廃棄物」コンクリートなどの「L3廃棄物」に分類される。
 L1廃棄物は電力会社が地下70m以上に300~400年埋設した後、国が10万年管理する。L2廃棄物は300~400年、L3廃棄物は50年、国が管理する。
■原発18基のうちで処分先が決まっているのは日本原子力発電の東海原子力発電所のみで、L3廃棄物12300トンを同敷地内に埋設することを東海村は認めている。しかし、放射能レベルの高いL1とL2廃棄物については、東海村は認めない方針を示している。
 処分先を決めるには法的手続きの他に立地自治体の同意が必要であるが、立地自治体は廃棄物の受け入れには消極的であり、廃棄物の処理が停滞するのは自明である。

指定廃棄物と除染廃棄物はどうする?

 環境省の廃棄物関係ガイドラインによれば、福島第一原発事故により発生した災害廃棄物は「指定廃棄物」「除染廃棄物」に分けられる。

指定廃棄物

 原発事故で飛散した放射性物質に汚染された水道施設、公共下水道・流域下水道、工業用水道施設、特定一般廃棄物処理施設又は特定産業廃棄物処理施設である焼却施設、集落排水施設から生じた廃棄物で、放射性物質濃度が8000ベクレル/kgを超えるのが指定廃棄物

 2015年6月時点で指定廃棄物量は約16万トンに達し、宮城、栃木、群馬、茨城、千葉の5県が多いため、処分場をこの5県に1カ所づつ建設する計画である。しかし、住民の反対により農地などに一時保管されているのが現状で、処分場建設の目途は立っていない。

除染廃棄物

 福島県内を中心に除染特別地域内又は除染実施区域内の土壌などの除染により発生したもので、政府は福島県内での中間貯蔵施設の建設を発表。しかし、中間貯蔵施設が最終処分場になる不安の声が強く、用地取得率は2017年6月時点で33%過ぎず、福島県内各地の仮置き場に一時保管されているのが現状。

 2014年9月、政府は福島県内の除染作業で出た汚染土壌などを最長30年にわたり保管する総面積は16km2の中間貯蔵施設の建設を発表した。総事業費が1兆円規模の大型プロジェクトで、双葉町、大熊町にある福島第一原発周辺の用地を整備する計画である。 

 除染廃棄物の受け入れ・分別施設で重量・放射線量を測定して分別し、放射線セシウム濃度に応じて土壌貯蔵施設」に埋設される。放射性物質の濃度が低く地下水を汚染する恐れがない土壌は低地に、それ以外は丘陵地や台地で底面に遮水シートや水を通しにくい地層を設置する。
 雨水などは排水管を通じて水処理施設に集め、放射性物質を除去してから河川に放出する。草木などの可燃物は減容化施設で焼却して、専用のドラム缶に入れ、鉄筋コンクリート構造など遮蔽効果のある廃棄物貯蔵施設で保管する。

図3 放射性物質汚染対処特措法に基づく特定廃棄物(※)及び除去土壌等の処理フロー(福島県内)
(※)対策地域内廃棄物又は指定廃棄物(特措法第20条) 出典:環境省

 福島第一原発事故により発生した放射性災害廃棄物は、消滅した訳ではない。地震や台風・大雨による放射性物質の流出が危惧される状況に置かれている。
「指定廃棄物」は、2015年6月時点で約16万トンに達した。宮城、栃木、群馬、茨城、千葉が多く、政府は処分場をこの5県に1カ所づつ建設するとしたが、住民の反対で農地などに一時保管されている。
「除染廃棄物」は、2014年9月に政府が福島県内に最長30年にわたり保管する総面積は16km2の「中間貯蔵施設」の建設を発表したが、最終処分場になるとの不安から反対が相次ぎで、福島県内各地の仮置き場に一時保管されている。 

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