何故、急速に高まる核融合熱!(Ⅶ)

原子力

 核融合スタートアップ各社の開発動向についてレビューを進める。米国TAE Technologies(TAEテクノロジーズ)に続き、カナダGeneral Fusion(ジェネラル・フュージョン)、英国Tokamaku Energy(トカマク・エナジー)に注目する。

カナダGeneral Fusion(ジェネラル・フュージョン)

 2002年に設立されたカナダのGeneral Fusionは、磁場閉じ込め型と慣性閉じ込め型の中間となる独自の磁化ターゲット核融合(MTF:Magnetized Target Fusion)技術を用い、2030年代までに2台の商業用核融合発電所(出力:約230MWe)の開設を目指している。
 2022年8月末の段階で、カナダの政府系ファンド、投資会社ベゾス・エクスペディションズなどから、合計3.2億ドルの資金調達を達成し、2025年までにパイロット・プラントの MTF装置「LM26」をリッチモンドに建設し、2026年までにNet energy gainの達成を目標としている。

 磁化ターゲット核融合(MTF)とは、内部壁が高速回転して液体金属(Pb-16Li)が壁面に均一に広がる球状の液体金属チャンバー、プラズマを生成してチャンバー内部に注入するプラズマインジェクター、プラズマを音響波で圧縮加熱するコンプレッションシステムで構成される。
 重水素と三重水素で形成されたコンパクトロイドプラズマを液体金属チャンバーに注入し、多数の圧縮空気ピストンで球状容器に衝撃を与えて中心部に収束する音響圧力波を作り出し、プラズマを圧縮して爆縮状態を作りDーT反応を起こさせる。この爆縮を繰返し行うことで核融合反応を継続させる。

 導電性の液体金属でプラズマを包み込むため、プラズマ中の磁場が漏れ出るのを防ぎ、DーT反応で生じた中性子を受けてトリチウムを増殖でき、構造部材への中性子照射を遮蔽できる。また、液体金属は吸収した熱を蒸気タービンへ伝える媒体として循環利用される。

図12 General Fusion の磁化ターゲット核融合炉のイメージ  出典:General Fusion

 2021年6月、英国原子力公社と共同でオックスフォード近郊のカラム核融合エネルギーセンター内にMTF技術の実証プラントを2022年に建設し、2025年の稼働、2030年代初頭の商用化を発表した。

 2021年11月、商業用パイロットプラント計画の一環として、米国テネシー州オークリッジ市に米国拠点を設けると発表。国立研究所、大学、米国政府との協力関係を拡大しつつ、カーボンニュートラルの電源である核融合エネルギーの商用化を目指す。

英国Tokamaku Energy(トカマク・エナジー)

 2009年に設立した核融合ベンチャーのTokamaku Energyは、2022年3月に球状トカマク型実験装置「ST40」民間企業で世界初となるプラズマ温度1億℃を達成したが、プラズマ持続時間は0.02~0.03秒と短時間に終わった。
 2027年に、「ST40」に高温超電導(HTS:High-Temperature Superconductivity)コイルを組み合わせたパイロットプラント「ST80-HTS」の運転開始を予定。2033年には原型炉を運転して、2030年代中盤以降の商用化(出力:500 MWe)を目指す。

 2023年1月、古河電気工業と高温超電導(HTS)線材を数年にわたり供給する契約を締結した。Tokamaku Energyでは、このHTS線材を用いて24テスラの強磁場を生む高温超電導コイル(HTS)を開発し実験装置の大出力化を進めている。

 2022年8月末の段階で、合計1.5億ドルの資金調達を達成し、2023年7月には住友商事と、核融合エネルギーの社会実装に向けた協業契約を締結した。

図13 球状トカマク型パイロットプラン「ST80-HTS」のイメージ
出典:Tokamaku Energy

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