始まった原発処理水の海洋放出(Ⅰ)

原子力

 2023年8月24日午後1時ごろ、東京電力は福島第一原発にたまる処理水を太平洋に放出する作業を開始した。放出完了には、30年程度という長期間が見込まれている
 一端、原発処理水の海洋放出を始めたからには、東京電力は当事者として安全に細心の注意を払いながら、海洋放出を粛々と続ける必要がある。長期間にわたり絶対にミスは許されない

原発処理水の海洋放出開始

2023年8月24日海洋放出開始

 2023年8月24日午後1時ごろ、東京電力は福島第一原発にたまる処理水を太平洋に放出する作業を開始したと発表。政府は22日に処理水の放出作業を24日に開始すると決定し、これを受けて東電は処理水を海水で希釈する作業を始めていた。放出完了には、30年程度という長期間が見込まれている

 最初となる今回の海洋放出は、約7800トンの処理水を海水で薄めた上で17日間かけて行う方針。今年度の放出量は貯蔵量の約2%にあたる約3万1200トンの処理水を4回に分けて放出する。初回の処理水はトリチウム濃度を190ベクレル/L程度まで下げる。

 日本政府は2021年4月に、海洋放出計画を発表。その後、国際原子力機関(IAEA)は2年にわたる評価の末、2023年7月に国際基準に合致しているとする包括報告書を提出した。
 しかし、原発周辺に住む住民や近隣のアジア・太平洋諸国の一部からは、海洋汚染や風評被害への懸念の声が上がっており、なお物議をかもしている。

 今回の海洋放出は、多くの科学者が安全だと述べている。水の処理過程と放出計画は、国際原子力機関(IAEA)により綿密に精査され、保守的な安全基準さえ順守していることが判明している。IAEAは報告書で、処理水の放出が人や環境に与える影響は無視できる程度とした。

 一端、原発処理水の海洋放出を始めたからには、東京電力は当事者として安全に細心の注意を払いながら、海洋放出を粛々と続ける必要がある。長期間にわたり絶対にミスは許されない
 一方、政府は多くの国が海洋放出に理解を示していることに慢心せず、反対する国・地域に対して粘り強く説得を続けて、風評被害を最小限に抑える努力が不可欠である。

海洋放出後に行われた表明

 当事者である政府、東京電力、国際原子力機関(IAEA)は、海洋放出の開始を受けて、以下の表明を行った。その内容は、データの公表安全性の確保風評対策監視と評価活動の継続である。

 岸田総理大臣は、官邸で記者団に対し「IAEAとしても連日高い頻度での原子力発電所からのモニタリングデータのライブ配信をはじめ、国際社会が利用できるさまざまなデータの公表など、透明性の向上に資する取り組みを実施していく予定だと承知している。先日、福島第一原発を訪問した際には、私自身、IAEAが常駐する予定のスペースも確認した。日本政府として緊張感を持って全力で取り組んでいく」と述べた。

 東京電力の小早川社長は、記者団の取材に対し「今日から処理水の放出を開始したが、引き続き、緊張感を持って対応していく。処理水の放出は廃炉が終わるまで長い時間がかかるので、その間、安全性を確保し、地元の人たちの信頼に応えていく必要がある。風評対策や迅速かつ適切な賠償などについて、全社を挙げて持続的に対応し、風評を生じさせない、県民の信頼を裏切らない、という強い覚悟のもと、社長である私が先頭に立って対応にあたっていく」と強調した。

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は声明を発表し、「IAEAの専門家は国際社会の目の役割を果たし、放出活動がIAEAの安全基準に合致していることを保証するため現地にいる」として、福島にIAEA事務所を設置して監視と評価活動を続ける方針を改めて強調した。
 また、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、基準以下の濃度に薄めて海洋放出する活動が計画通り否かをリアルタイムで知らせるウェブサイトを公開。データは東京電力から入手する。

図1 IAEAによる福島第一原発の処理水の海洋放出データのリアルタイム発信 出典:IAEA

 ウェブサイトでは作業の各段階ごとに数値と印が表示され、計画通りであれば緑印、東京電力による対応が必要な異常値が示された場合は赤印で知らせる。図1は8月29日午前6時のデータで、海洋放出される水に含まれるトリチウム濃度は、208ベクレル/Lと排出基準以下である。

 一方、終始、処理水の海洋放出に反対の意向を示してきた全国漁業協同組合連合会(全漁連)の坂本会長のコメントは、「すでに発生している風評被害への可及的速かな対応を強く求める」であった。

 全魚連の坂本会長は「我々が処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わりはない。国が全責任を持って放出を判断したとはいえ、今、この瞬間を目の当たりにし、全国の漁業者の不安な思いは増している。我々、漁業者は安心して漁業を継続することが唯一の望みだ」とし、その上で、「国には安全性の確保や消費者の安心を得ていく取り組みなどを通じて『漁業者に寄り添い、必要な対策を取り続けることをたとえ今後数十年にわたろうとも、全責任を持って対応する』との岸田総理大臣の約束を確実に履行して頂きたい。加えて、現在、すでに発生している風評被害への可及的速かな対応を強く求める」と強調した。

コメント

タイトルとURLをコピーしました