電力会社の非化石電源比率の現状(Ⅰ)

はじめに

 2020年3月、年間販売電力量が5億kWhを超える小売電気事業者に対し、「2030年度に非化石電源比率(再エネ+原子力)を44%以上」とする中間目標値が定められた。もちろん、めざす最終目標は2050年に非化石電源比率100%である。
 この進捗はどうなっているのであろうか?また、「エネルギー供給構造高度化法」の目標年度が迫る中で、2031年度以降の非化石電源比率の目標を定める必要がある。

エネルギー供給構造高度化法とは?

小売電気事業者に課された目標

 この法律は、エネルギー供給事業者(電気、ガス、石油など)に対し、非化石エネルギー源の利用拡大と、化石エネルギー原料の有効利用を目的に、2009年7月に成立した。(東日本大震災の前に成立した法律である。)

 しかし、注目されたのは2020年3月、小売電気事業者に対して「エネルギー供給構造高度化法」の中間目標値が設定されてからである。すなわち、年間販売電力量が5億kWhを超える小売電気事業者に、「2030年度に非化石電源比率を44%以上」とする中間目標値が定められた。

 目標が達成できなかった小売電気事業者には、資源エネルギー庁から指導・勧告・命令・罰則が科される。(ただし、非化石電源比率(%)=非化石電源による発電電力量/総発電電力量×100)                     

図1 小売電気事業者の電力販売量ランキング 出典:新電力ネット

 トップの東京電力エナジーパートナーの販売量は126.62億kWhであり、十二位の沖縄電力が5.95億kWhと旧大手電力会社が上位を占め、十三位のENEOS Powerが4.96億kWh、十四位のミツウロコグリーンエネルギーが4.63億kWh、十五位の大阪瓦斯が4.45億kWhと新電力と呼ばれる新規参入企業が並ぶ。

 「エネルギー供給構造高度化法」では、年間販売電力量が5億kWh以上の小売電気事業者を対象としており、十二位の沖縄電力(5.95億kWh)までが該当する。しかし、十五位までは僅差で年度によっては順位が逆転する。

 また、中途半端に思える44%は、2021年10月の第6次エネルギー基本計画で、2030年度の電源構成を原子力比率20~22%、再生可能エネルギー比率22~24%をめざすとした数値の合算値とほぼ整合する。これまで放任していた小売電気事業者に、非化石電源の導入比率目標を設定したのである。

 当然のことであるが、最終目標は2050年に非化石電源比率100%で、既に目標を達成した小売電気事業者でも、非化石電源比率の更なる向上への努力を求めた。
 また、「エネルギー供給構造高度化法」に従い、小売電気事業者には自社の電源構成非化石証書の使用状況、並びにCO2排出係数を毎年公表する義務を課した。

小売電気事業者の電源構成の現状

 公表されている「非化石電源比率」の定義であるが、各社が保有する発電設備の出力ではなく、発電電力量で定義したのは休・停止設備を除外する意味でより実質的である。(非化石電源比率(%)=非化石電源による発電電力量/総発電電力量×100)   

 火力発電、原子力、再生可能エネルギーは、小売電気事業者が自社で保有する発電設備からの販売電力量である。また、FIT電気とは、固定価格買取制度(FIT)に基づいて再生可能エネルギーで発電された電気を、小売電気事業者が買い取り販売したものである。

 年間販売電力量が約5億kWhを超える小売電気事業者が公表している2024年度の電源構成を観ると、電源構成において火力発電比率が圧倒的に高いことが分かる。

 また、中間目標である「2030年度に非化石電源比率を44%以上」については、自社で保有する発電設備の非化石電源比率(再エネ+原子力)で目標をクリアしている小売電気事業者はない
 旧大手電力会社の自前の再エネ比率が低いことが目を引く。10%を超えているのは、北陸電力(26%未満)、東北電力(10%)のみである。

 一方、非化石電源比率(再エネ+FIT電気+原子力)は、九州電力(57.9%)、関西電力(37.6%)が高く、2030年の44%中間目標値をクリアあるいは近づいている。いずれも原子力が再稼働しており、その影響が大きいことは明らかである。

図2 公表されている小売電気事業者上位15社の電力構成  出典:各社の2024年度公表資料から

  「エネルギー供給構造高度化法」の目的は、火力発電主体の電力供給形態を非化石電源(再エネ+原子力)へ移行することにあるが、まだまだ見通しは暗いと言わざるを得ない。 

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