限界が見えたか?燃料電池の実用化

はじめに

 2000年代に入ると、2002年に本田技研工業(株)とトヨタ自動車(株)が相次いで、水素タンクと固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)を搭載した燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)を販売したことで、再び燃料電池が世界的に脚光を浴びる。
https://car-moby.jp/article/car-life/useful-information/fuel-cell-vehicle/

 しかし、次世代自動車振興センターによると、国内を走るFCEVは2020年度末時点で5170台であり、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)の123,706台と比較して5%にも満たない
https://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai3.html

 また、PEFCの出力密度が大幅に向上し、長寿命化が達成されたことで、2009年には一般家庭を対象にLPガス・都市ガス改質により作動温度:80℃、システム発電効率:35~50%である出力:0.7kWのPEFC定置用燃料電池システム(エネファーム)の商品化が相次いだ。

 2011年には一般家庭を対象にLPガス・都市ガス改質により作動温度:750℃、システム発電効率:40~50%である出力:0.7kWの固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)の定置用燃料電池システム(エネファームS)が商品化された。

 日本ガス協会によれば、定置用燃料電池システムの出荷台数は、2021年度で累計422,264台に達しているが、現在は頭打ちの状態にある。
https://www.gas.or.jp/gas-life/enefarm/fukyu/

2014年6月、資源エネルギー庁は水素利活用技術の適用可能性を示している。既に実用化段階にあるFCEV、定置用燃料電池と並べて、将来には調査用潜水艇・潜水艦、水素燃料船・燃料電池船、燃料電池鉄道車両、水素ジェット飛行機・燃料電池飛行機が列挙されている。いつか見た景色である。
https://internetcom.jp/webtech/20140625/2.html

水素利活用技術の適用可能性
出典:資源エネルギー庁燃料電池推進室「水素・燃料電池について」(2014.6)

 また、2021年7月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が燃料電池の飛躍的な普及拡大に向け、農機や建機、港湾荷役機器、ドローンなど多様な用途への燃料電池活用を目指す実証事業に着手することを公表している。日本の燃料電池技術は世界のトップレベルと言っても過言ではない。

 しかし、燃料電池が「いろいろな用途がある夢のエネルギー」として、既存システムの代替を狙う限りは、経済性とインフラ整備が大きな縛りとなる。燃料電池が「究極のエコエネルギー」であるためには、グリーン水素が低コストで供給されることが、前提条件であることを再認識しておく必要がある。
燃料電池の飛躍的な普及拡大に向けた新たな研究開発に着手 | プレスリリース | NEDO

燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業の展開
出典:NEDOニュースリリース(2021年7月15日)

 以上のように、未来を予測することは難しい。科学が発達した現代においても、同じように未来を予測することが難しいことは、よく認識しておく必要がある。

参考までに、1967年に発行された「交通の図鑑」によれば、未来の自動車について、次のような説明がくわえられている。ホバークラフト型の自動車であるが、最近注目度が高まっている空飛ぶ自動車とも共通点が見られる。

床下から噴き出す空気の圧力で車台を路面から数10cm持ち上げ、後ろにふき出すガスで走る浮かぶ自動車が、米国フォードで計画されており、時速600kmが出せる。

出典:山中忠雄ほか3名、小学館、1967年5月発行

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