電気自動車用蓄電池の供給状況(Ⅱ)

自動車

 2007年からテスラはパナソニックと蓄電池の独占供給を進めてきたが、2021年には実質的に解消し、原料調達を含む蓄電池の自社工場での生産にシフトした。従来から多くの自動車メーカーは複数の蓄電池メーカーからの調達が主体であったが、蓄電池確保のために自社工場の建設を加速している。

米国自動車メーカーの動向

テスラモーターズとパナソニック

 EV最大手の米国テスラモーターズは、2007年にパナソニックと技術提携し、2009年に蓄電池の供給が始まる。2014年、ネバタ州で共同運営する電池工場「ギガファクトリー1」(生産能力:35GWh/年)の建設に合意し、2017年には米国内で蓄電池の共同生産を始めて、量産車向けの供給を開始した。

 2019年にテスラの中国工場が稼働し、蓄電池は中国のCATL韓国のLG Energy Solutionが供給しており、パナソニックからの独占供給体制は崩れた。同年、米国マクスウェル・テクノロジーズを買収し、電極素材や製造工程を抜本的に見直して蓄電池の自社生産を進めている。

 2021年、テスラはニューカレドニアのニッケル製造企業と提携し、オーストラリアのBHPとニッケル調達契約を締結した。2022年1月、米国ミネソタ州の鉱山からのニッケル調達契約をタロン・メタルズと締結した。2022年3月、ドイツ・ベルリン郊外の電池工場「ギガファクトリー」の生産を開始した。

 一方、2021年6月、パナソニックが社名をパナソニックホールディングスに変更した翌日、テスラモーターズの全保有株式を約4000億円で売却し、蓄電池メーカーとしての全方位経営を公表した。

 2022年1月、EV15万台分のテスラ向け新型バッテリー「4680」を、2023年から和歌山工場で生産する計画を公表した。従来の円筒形蓄電池と比べて直径:約2倍の4.6cm、長さ:8.0cm、容量:約5倍である。テスラ「モデルS」では、1回の充電での航続距離が650kmから750kmと延びる。

 2022年7月、米国中西部カンザス州デソトに蓄電池の新工場建設を発表した。投資額は40億ドルで最大約4000人を雇用する大型工場で、米国テスラに新型バッテリー「4680」を供給する。「ギガファクトリー1」に続き米国で2カ所目の工場となる。

ジェネラル・モータース(GM)とLG Energy Solution

 2021年4月、GMは韓国LG Energy Solutionと合弁会社Ultium Cells(アルティウムセルズ)を設立し、2022年にオハイオ州第1蓄電池工場(生産能力:35GWh/年以上)、2023年にテネシー州第2蓄電池工場(35GWh/年以上)を操業開始、2022年1月、ミシガン州第3蓄電池工場の建設を発表した。

 2021年6月、2025年までにBEVと自動運転技術に350億ドルを投資し、世界で30車種以上のBEV発売計画を公表した。LG Energy Solutionと共同開発したリチウムイオン電池、モーターなどの動力装置で構成されるEVプラットホーム「アルティウム(Ultium)」を幅広い車種に共通使用する。

 アルティウムは、大型EV「ハマーEV」から導入を始めており、2023年には大型ピックアップトラック「シルバラードEV」(電池容量:200kWh)が販売される。また、GMは自動運転機能「ウルトラ・クルーズ」を米半導体大手のクアルコムと共同開発を進めている。

フォード・モーターとSKオン

 2021年5月、韓国のSKオンと合弁会社を設立して米国内に蓄電池工場を作り、2022年春から電動ピックアップトラック「F-150 ライトニング」の北米向けを15万台/年、「マスタング」を北米、欧州、中国向けに27万台/年の生産販売を目指している。

 2022年7月には、2023年末までに予定しているBEV60万台/年の生産体制(生産能力:60GWh/年)について、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)韓国・SKグループなど蓄電池の調達のめどがついたことを発表した。

欧州自動車メーカーの動向

フォルクスワーゲン(VW)

 ドイツのVWは、2026年までに6.7兆円をEV関連に投資し、2030年までに欧州に6カ所の蓄電池工場を設置することを表明している。

 2022年3月、スウェーデンのノースボルトに14億ユーロ超を出資し、折半出資で3カ所目となる蓄電池工場をドイツ北部シュレスウィヒ・ホルシュタイン州ハイデに建設する。2025年後半に生産を始め、生産能力は60GWh/年で約100万台のEVに供給できる。
 デンマークや北海の風力発電を使い製造過程でCO2排出量が少ない電池生産を目指し、レアメタルを再利用するリサイクル工場も敷地内に設置する計画である。

 その他、中国の国軒高科にも11億ユーロ出資して欧州に電池工場を建設するほか、LG化学や中国のCATLなど電池メーカーと幅広く提携しており、2029年までに約75車種のBEVを投入する方針である。

 また、2024にも全固体電池の量産を計画する米国スタートアップのクアンタムスケープにも出資している。自動運転機能に関しては、米国インテルと提携を行っている。

ダイムラー(メルセデス・ベンツ)と輝能科技

 ドイツ・ダイムラーの高級車部門であるメルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)は、2025年以降に発表する次世代車をすべてBEV専用とし、2030年から販売する全モデルをBEV100%にすることを表明している。

 2022年1月、台湾の全固体電池ベンチャーである輝能科技(ProLogium Technology、プロロジウムテクノロジー)と次世代の全固体電池を共同開発するために提携・出資を発表した。2025年に全固体電池を搭載したBEVの販売を目指している。 

 2006年設立の輝能科技は、世界で初めてセラミック型の全固体電池を量産しており、既に約8000個のサンプルを自動車各社に提供している。2022年内には、台北近郊に量産工場を設置する計画である。全固体電池では、2021年に米国スタートアップのファクトリアルエナジーにも出資を発表していた。

ボルボ・カーとノースボルト

 スウェーデンの新興電池メーカーNorthvolt(ノースボルト)は、2021年末にスウェーデン北部シェレフテオに最初の電池工場を稼働させ、2022年2月にはスウェーデン南部ヨーテボリに、スウェーデンのVolvo Cars(ボルボ・カー)と共同出資で2つ目の蓄電池工場建設を公表している。

 新工場は2023年に建設を始め、2025年から稼働する予定で、生産能力は最大60GWh/年で、約60万台/年の電気自動車(EV)に供給する。生産した電池セルはVolvo、Polestarブランドの次世代高級EVに搭載される。また、2030年までに欧州に少なくともあと2カ所の工場を建設すると表明している。

 ノースボルトは米テスラの元幹部が創業し、ドイツのVW、BMW、米国ゴールドマン・サックスが出資している。さらに、スウェーデンやカナダの年金ファンドなどが新たに参加しており、VWは6億2千万ドルを出資することを発表し、約20%の出資比率を維持している。

中国メーカーの動向

広州汽車集団

 2022年8月、広東省広州市にEV向け車載電池(リン酸鉄リチウムイオン電池(LFP))の工場(生産能力:26.8GWh)の新設を発表した。総投資額は109億元で2025年の完成を目指す。蓄電池は自社のEVに搭載するとともに外部にも供給する。

 傘下の広州巨湾技研も、広州市内で急速充電に対応する蓄電池工場を運営しており、2カ所目の工場となる。中国の自動車メーカーの多くは、電池が祖業である比亜迪(BYD)を除き、寧徳時代新能源科技(CATL)などから電池を調達していたが、電池コストが車全体の4~6割を占めるための対策である。

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