2020年代におけるBEVシフト(Ⅻ)

自動車

FCEVと水素エンジンの開発動向

FCEV

 2021年9月、ドイツBMWはミュンヘン国際自動車ショーで、トヨタ自動車と共同開発した多目的スポーツ車(SUV)のFCEV「iX5 Hydrogen」のコンセプトモデルを公開した。水素充塡に必要な時間は3~4分で、航続距離は公開していないが、約6kgの水素が入るCFRP製タンクを2基搭載している。

 2022年8月、ドイツBMWはミュンヘンの水素コンピテンスセンターで、燃料電池システムの小規模生産を開始した。2022年末から製造するデモンストレーション車両「iX5 Hydrogen」に搭載する。この第2世代燃料電池システムは、小型・軽量化を進め、出力を2倍以上の125kWに向上させている。

 「iX5 Hydrogen」は、第2世代燃料電池システムと第5世代電動パワートレーン「eDrive」に、このモデル用に開発した高性能蓄電池を組み合わせて、パワートレーン出力:275kWを目指している。2022年初めにはスウェーデンで冬季の実証試験を行い、2025年に量産を始めると公表した。

 BMWグループでは、小型車「ミニ」や超高級車「ロールス・ロイス」の電動化も進めており、2030年までに年間販売台数の50%をEVにする方針で、さらに前倒しの可能性を示唆している。2030年時点で販売の半分はHEVを含めたガソリン車が残るとみており、内燃機関車への投資も継続する。 

 2022年7月、トヨタ自動車は小型FCトラックを、日野自動車、いすゞ自動車と2023年1月を目指して共同開発すると発表した。小型トラックはスーパーやコンビニなどの物流に使われることが多く、長時間・長距離の走行性能が求められ、短時間での燃料補給が必要であるためFCEVが有効としている。 

水素エンジン

 2022年6月、トヨタ自動車は、水素をエンジンで燃焼させて走る開発中の「水素エンジン車」の市販を目指す方針を示した。既に、2021年から耐久レースに参戦して技術面の実証を続けている。現在はFCEVで開発した水素タンクを用いているが、液体水素燃料の搭載も検討している。

 2022年9月、フラットフィールドと東京都市大学、トナミ運輸、北酸、早稲田大学アカデミックソリューションは、環境省の2021年度「水素内燃機関活用による重量車等脱炭素化実証事業」を進めており、水素エンジン車に改造したトラックでディーゼルエンジン並みの出力を得られたと発表した。
 2022年度後半には富山県で耐久試験を実施し、2026年度の販売開始を目指す。また、ベース車両の70%以上の積載量を確保するために車両開発を継続する。

 2022年9月、川崎重工業傘下のカワサキモータースは、開発中の二輪車用水素エンジンを搭載した北米向けオフロード四輪車を「ENEOS スーパー耐久シリーズ 2022」で一般公開した。エンジンはカワサキの大型バイク「Ninja H2」をベースに、水素燃料をシリンダーに直接噴射する仕様へ改良した。
 エンジン開発にはトヨタ自動車、ヤマハ発動機、スズキ、ホンダ、デンソーの技術協力を得ている。

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