異種材料の継手設計について

エネルギー

 異種材料の継手部が有する特有の力学的問題として、材料不連続による応力集中があげられる。すなわち、図1(a)に示すように、き裂のような応力集中源を有する平板が一様に引張荷重を受ける場合、き裂の先端近傍には(1)式で示すような顕著な応力集中が生じることは良く知られている。
・異種金属接合継手の設計法、機械の研究、55-7、(2003)757-766.

図7 一様一様引張をうける平板モデルの応力分布特性

         σy=K/(2πr)1/2               (1)

ただし、K:応力拡大係数であり、作用する荷重やき裂長さ、平板寸法で決まる。(π:3.14)

 これは形状の不連続による応力集中と呼ぶことができ、脆性破壊や疲労破壊などのように局部応力によって破壊が生じる場合の原因となる。一般に接合部の多くは形状の不連続部に設けられるため、従来から接合部の継手設計においては形状による応力集中を十分に考慮する強度設計が行われている。

 一方、図1(b)には材料不連続による応力集中を示すが、これに関しては十分に認識されているとは言い難いのが現状である。すなわち、図に示すように形状不連続のない平板の場合でも、異種材料の接合界面端部近傍には次式で示すような顕著な応力集中が生じる。

         σy=K‘/(2πr)p                (2)

ただし、K‘:接合界面端部の応力拡大係数、p(θ):応力特異性指数は材料1と材料2の接合界面端部でのアペックス角度θの関数である。(図1(b)ではθ=90°)

 形状不連続による応力集中の度合いは、形状によって大きな影響を受ける、材料不連続による応力集中の度合いは材料1と材料2の弾性定数(弾性率、ポアソン比)の差によって影響を受ける
 

 材料不連続による応力集中は(2)式から分かるように、接合界面端部近傍の応力が接合界面端部に向かって無限大に発散する。ただし、0<p(θ)<1であり、p(θ)が大きくなるほど応力集中は顕著となる傾向を示す。
 p(θ)=0.5の場合には、(1)式で示すき裂と同じ応力特異性を示すことから、材料不連続による応力集中の厳しさは明らかである。しかし、アペックス角度θを適切に選定することでp(θ)=0とすれば応力特異性は消失し、接合界面の応力集中低減のためには有効な手段である

 このような異種材料接合界面の端部に生じる応力特異性については、多くの異種材料の組み合わせやその継手形状により異なるため、異種材料継手の設計法の概念を構築し、継手設計指針として体系的にまとめる必要がある。

 図2には、異種材料の平板で構成される継手形状の基本形式をまとめて示す。突合せ継手は図中に示すI型突合せ継手(θ=90°)が一般的であるが、異種材料継手においては接合面積を大きくするために、接合面を斜めとしたスカーフ継手(θ≠90°)が使われる場合も多い。
 この場合の接合界面端部近傍の応力集中は、図中の右側に示すように材料1と材料2の接合界面が自由縁とアペックス角度θで交差する場合にモデル化することができる。アペックス角度θを適切に選定することでp(θ)=0とすれば応力集中を軽減することが可能である。

 その他、T継手、角継手、重ね継手などがある。中でも、重ね継手は接合面積を自由に選ぶことができるため、異種材料継手では多用される。これら3種類の異種材料継手の接合界面端部近傍の応力集中は、図中右側に示すように材料2が端部角度θで材料1と接合される場合にモデル化できる。

 このようなモデル化した各種の異種材料継手(アルミニウムータングステン、アルミニウムー炭素鋼、アルミニウムー銅、チタン―ニッケル、チタンー銅など)のスカーフ継手については応力特異性解析が行われており、応力特性指数p(θ)を低減できる継手端部角度θが明らかにされている

図2 異種材料継手の基本形式と接合界面端部モデル

 以上で示した異種材料継手の設計法の有効性は、有限要素法解析や実験検証により確認されている。

 実際に、接合界面に脆弱な金属間化合物層が形成された銅とアルミニウムの摩擦圧接継手を対象に、接合界面形状を制御して接合界面端部における応力集中を低減することで、衝撃強度が大幅に向上し信頼性が改善できることが明らかにされている。
 また、炭素鋼とアクリル樹脂(PMMA)の接着継手の曲げ強度の向上や、アルミニウム合金基材に形成された13Cr鋼溶射皮膜の界面端部からのはく離強度の向上などにも有効であることが明らかにされている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました