無人自動運転車の開発現状(Ⅴ)

自動車

 2022年8月、深圳しんせん自動運転タクシーの試験走行が日常の風景になりつつあると報じられた。登録済みの自動運転車であれば走行できるが、セーフティードライバー1人の乗車は義務付けられている。
 深圳当局は、自動運転車で運転者がハンドルを握っていた場合の事故責任は運転者にある。運転者不在の場合には車両オーナーが責任を負う。車両の欠陥が原因の事故では、オーナーはメーカーに補償を求めることができるなど、事故時の法的責任を巡る枠組みを整えている。

その他の海外開発動向

中国

 2017年4月、「自動車産業中長期発展計画」で、2020年までに動力電池やコネクテッドカー分野の製造業イノベーションセンターを建設して国際競争力の強化に努めるとし、「次世代AI発展計画」で自動運転を重点分野と位置付け、リードする企業として百度(Baiduバイドゥ)が選定された。

 百度が主導する自動運転開発プロジェクト「阿波羅(Project Apollo、アポロ計画)」は、自動運転車向けソフトウェア・プラットフォームをオープンソース化し、2017年4月の発表後、100社を超える世界の自動車メーカーやサプライヤーがパートナーとして参画している。
 既に、バス車両メーカー金龍客車がレベル4自動運転車の量産化、大手自動車メーカー第一汽車米国フォードスウェーデンのボルボ・カーなどもレベル4自動運転車の開発を進めている。

 2018年1月、「知能自動車創新発展戦略」で、自動運転システムを搭載した知能自動車を、2020年までに中国で販売される新車の50%、2025年には100%とする目標が掲げられた。現在、北京や上海、深圳しんせんなど大都市を中心に実証環境が整い、自動運転タクシーの実用化が急加速されている。
 関係当局は、セーフティドライバーなしでの公道走行の許可を多くの企業に出し始めている。 

 中国では2019年頃から公道実証が本格化し、IT大手の百度(バイドゥ)の他、配車サービス大手の滴滴出行(Didi Chuxing、ディディチューシン)、スタートアップでは日産自動車などが出資する文遠知行(Weride、ウィーライド)、トヨタ自動車が支援する小馬智行(Pony.ai、ポニー・エーアイ)Momenata(モメンタ)、アリババが支援するオートX(AutoX)などが、無人自動運転タクシーの実証実験や商用化を開始している。

 2022年8月、深圳しんせん自動運転タクシーの試験走行が日常の風景になりつつあると報じられた。登録済みの自動運転車であれば走行できるが、セーフティードライバー1人の乗車は義務付けられている。
 深圳当局は、自動運転車で運転者がハンドルを握っていた場合の事故責任は運転者にある。運転者不在の場合には車両オーナーが責任を負う。車両の欠陥が原因の事故では、オーナーはメーカーに補償を求めることができるなど、事故時の法的責任を巡る枠組みを整えている。
 一方、自動運転車の製造コストが下がらなければ商業的に見合わないとし、低コスト化とデータ収集を目的として、自動運転車の大量生産が始められている。

百度

 2022年6月、百度は2022年末までに予約販売を始める自動運転技術(レベル4)を搭載したEVの多目的スポーツ車(SUV)「ROBO-01」のコンセプト車を公開した。百度と中国民営自動車大手の浙江吉利控股集団の共同出資子会社の集度汽車がEVの開発や製造を担う。
 高速道路や駐車場だけでなく、市中走行でも高度な自動運転技術を利用でき、U字型ハンドルを採用し、運転席は助手席と一体的に設計され、3次元対応の大画面に走行状態などを表示する。 

図9 百度のレベル4SUV「ROBO-01」のコンセプト車
出典:百度

韓国

 2018年12月、国土交通部は第5世代移動通信システム「5G」を活用した自動運転車の走行試験用に、疑似都市「K-City」を構築したと発表した。また、レベル3に必要とされる安全基準を策定し、2020年7月から基準を満たした車両の販売を許可している。

現代自動車

 2019年9月、現代自動車は、自動車部品大手の米国Aptiv(アプティブ)と自動運転技術の提携を発表した。両社が共に20億ドルを出資して2020年には米国に合弁会社Motionalを設立し、2022年からレベル4自動運転タクシーを事業者らに提供する計画である。

 2022年3月、2019年設立のスタートアップ42dot(フォーティートゥドット)が、起亜自動車のEVを使用して、ソウル市内で有料の自動運転タクシーサービスを開始した。自動運転車やドローン、ロボットなどを駆使し、人と物の移動全てを自動運転化することを目指している。

図10 42dotの自動運転タクシー 出典:42dot

イスラエル

 2020年7月、車載向け画像認識チップなどを開発しているインテル傘下のMobileye(モービルアイ)は、日本の高速バス大手のWILLERと戦略的パートナーシップを結び、日本、台湾、ASEAN地域で自動運転タクシーの商用展開を公表した。

 2021年8月、Mobileyeは、自動運転タクシー車両としてEV仕様の「Mobileye AV」を発表した。このMobileye AVを使い、インテル傘下のMoovit(モービット)が、2022年にドイツとイスラエルでサービス展開を開始する。既に、ドイツで自動運転車の商用展開のための試験認可を得ている。

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