2010年代のFCEVとBEVの開発競争(Ⅱ)

自動車

FCEVの商品化と国際編成

 2002年12月に本田技研工業とトヨタ自動車が世界初の燃料電池車(FCEV)の市販車を発売して以来、FCEVの開発は日本が世界をリードした。

図2 本田技研工業のFCEV一号機「ホンダFCX」
図3 トヨタ自動車のFCEV一号機「トヨタFCHV」

 当初は製造コストが1億円超/台と現実離れした価格であったが、国際連携により低コスト化の加速と開発費の削減が進められた。当初は、日本メーカーを中心に3グループの編成が進められたが、その後、韓国の現代自動車がFCEVの市販車を出したことで図4に示す4グループに集約された。

 このように、日米欧韓の大手自動車メーカーが戦略的技術提携を結ぶことにより、2010年代の前半においてFCEVの開発は世界的な広がりを見せた。

図4 日本・韓国を中心に進む燃料電池自動車の国際連携

 トヨタ自動車は、2013年1月にドイツBMWとFCEVの共同開発で合意し、開発期間の短縮とコスト低減を目指すことを公表した。
 2015年1月、トヨタ自動車はFCEV関連の特許約5680件の無償実施を表明した。他の自動車メーカーや水素インフラ企業に特許の利用を促し、FCEVの普及に弾みをつけるのが狙いである。水素ステーション関連の約70件は無期限、残りは2020年末まで無償で提供する。

 2015年12月には、FCEV「MIRAI(ミライ)」の国内販売を実現した。最高出力:113kWのFCスタック、ニッケル水素電池、高圧水素タンク(70MPa、122.4L×2本)を搭載し、価格は723.6万円(税込)である。MIRAIは3分間の水素充填で、航続距離:650km、燃費:10円/kmである。
 2019年4月、トヨタ自動車は中国自動車大手の北京汽車集団とFCEVでの提携を発表した。燃料電池システムや水素タンクなどを、商用車(バスやトラックなど)を手掛ける傘下の北汽福田汽車に販売し、清華大学系の北京億華通科技が持つFCEVの制御システムと組み合わせて商品化する。トヨタ自動車は他の中国商用車メーカーにもFCEVの部品外販を進める方針である。

 2020年12月、新型MIRAIを発売し最高出力:114kWのFCスタック、約20%拡大した高圧水素タンク(134MPa、141L×3本)を搭載し、航続距離:850kmと向上した。価格710万円~805万円(税込)で補助金により約570万円から購入できる。2020年までのFCEV販売累計は、約11000台に留まる。
 2021年10月、トヨタ自動車は北京億華通科技と共に華豊燃料電池において、新型MIRAIに搭載した燃料電池システムをベースに開発した商用車向けの燃料電池システム「TLパワー100」(定格出力:101kWで3万時間の耐久性)の製造・販売を中国で開始した。

 本田技研工業は、2013年7月に米国ゼネラル・モーターズ(GM)とFCEVの技術提携を発表し、GMの同分野における豊富な特許を生かし、相互に補完する形で基幹システムの共同開発を加速した。
 2016年3月に量産型のFCEV「CLARITY FUEL CELL(クラリティフューエルセル)」を発売した。駆動機構をボンネット内に収め、最高出力:103kWのFCスタック、高圧水素タンク(70MPa、141L)、リチウムイオン電池を搭載し、航続距離:約750kmを達成し、価格を766万円(税込み)とした。 
 2016年末までに欧米でも発売し、2025年にはGMと発電装置の共同生産を検討し、量産効果を高めてFCEVの価格をHEV並みにすることを目指した。

 日産自動車とフランス・ルノー連合、ドイツのダイムラーはFCEVの共同開発を進めていたが、2013年1月には米国フォード・モーターが合流し、開発費低減と燃料電池スタックや水素タンクなどの部品規格を共通化し、大幅なコスト削減計画を発表した。
 また、2016年6月には、日産自動車はバイオエタノールを燃料に使うSOFC「e-バイオフューエルセル」を開発したと発表している。BEVに併用することで連続走行距離を現状の280kmから800km程度に延ばすことが可能で、車両価格は現行BEV並みに抑えた。
 しかし、2018年6月、世界的なEVシフトの流れを受け、日産自動車・ルノーの企業連合は、ダイムラーやフォード・モーターと共同開発するFCEV商用化の凍結を表明している。

 ダイムラーはメルセデス・ベンツの多目的スポーツ車(SUV)「Mercedes-Benz GLC」をベースにしたプラグイン型燃料電池車「GLC F-CELL」を、2019年10月に発表している。従来より30%小型化して白金の使用量を90%低減した固体高分子型燃料電池を開発し、容量:9kWhのリチウムイオン電池を搭載している。

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