運輸部門と合成燃料「e-fuel」(Ⅱ)

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 液体合成燃料の製造で、再生可能エネルギー由来の水素を原料としたものが「e-fuel」と定義されている。発電所や工場などから排出されたCO2を回収(CCS:Carbon Capture and Storage)して使用する。将来的にはDAC(Direct Air Capture)技術で、大気中のCO2を直接分離・回収する。
 合成燃料研究会により、e-fuelの製造コストは300〜700円/Lと試算されており、低コスト化が大きな課題である。

合成燃料(e-fuel)とは?

 CO2とH2を原料とする合成燃料は、液体合成燃料気体合成燃料とに大分類できる。触媒(Ni、Ru)を用いて熱化学的にメタンを製造するサバティエ反応(CO2 + 4H2 →CH4 + 2H2O)などを使い、メタネーション技術により製造される合成メタンが、気体合成燃料である。
 CO2からのメタン製造技術としては、熱化学的手法のほかに、電気化学、光還元、生物学的手法などについて研究・開発が行われている。

図3 合成燃料の分類 出典:合成燃料研究会(2021年4月)

 一方、触媒(Fe、Co)を用いて熱化学的にFT(Fischer-Tropsch、フィッシャー・トロプシュ)反応((2n+1)H2+nCO →CnH2n+2 +nH2O)を使い製造されるナフサ・ガソリン、灯油・ジェット燃料、軽油、重油などの混合物が液体合成燃料である。

 この液体合成燃料の製造で、再生可能エネルギー由来の水素を原料としたものが「e-fuel」と定義されている。発電所や工場などから排出されたCO2を回収(CCS:Carbon Capture and Storage)して使用する。将来的にはDAC(Direct Air Capture)技術で、大気中のCO2を直接分離・回収する。

 また、メタノールなど多くの含酸素化合物も液体合成燃料に大別される。メタノールはゼオライト触媒を用いMobilが開発したMTG(Methanol to Gasoline)プロセス(nCH3OH →(CH2)n+nH2O)により、ガソリンにも転換できる。

 合成液体燃料はカーボンリサイクル技術により製造され、回収されたCO2を用いるため脱炭素燃料とみなせる。また、硫黄や重金属成分を含まないクリーンな燃料である。エネルギー密度や搬送・貯蔵などの特性も、従来の液体化石燃料と同等であり、既存の化石燃料機器がそのまま使用可能である。

e-fuelの製造技術とコスト

 合成燃料研究会により、e-fuelの製造コストは300〜700円/Lと試算されており、低コスト化が大きな課題である。そのため協議会では、想定される今後の需要量を推計し、企業が開発や導入のためにどれだけの投資が必要になるか把握できるようにする。

 合成燃料の製造プロセスとしては、CO2をCOに変換(逆シフト反応)し、COとH2①FT合成反応させる方法が知られているが、低コスト化を目指した製造効率向上が課題である。そのため、以下に示す②CO2電解法、③共電解法、④直接合成(Direct-FT)法などが研究開発されている。

  • 逆シフト+FT合成反応法は、逆シフト反応に平衡制約があるため、600℃以上で触媒を用いた還元反応(CO2+H2→CO+H2O)にもH2を消費する。その後、触媒(Co、Feなど)を用いてFT合成反応((2n+1)H+nCO→CH2n+2+nHO)を行う。一部実用化されているが、目的とする合成燃料の留分を高めるためには、新たな触媒開発が必要である。
  • CO2電解+FT合成反応法は、CO2→CO+1/2O2の不可逆反応であり、CO2の電解に電力を直接用いるため、比較的低温で反応しやすく、水素製造コストが抑えられる。長期時間安定的にCOを生成できる電解装置の開発が重要である。その後、FT合成反応を行う。
  • 共電解+FT合成反応法は、共電解反応(H2O+CO2→H2+CO+O2)でCO2と共に水電解を行うため、別に水電解を行って水素調達するよりも効率よく合成ガス(CO、H2)を製造できる可能性がある。高温で長時間安定的にH2、COを生成できる電解装置の開発が重要である。その後、FT合成反応を行う。
  • ④直接合成(Direct-FT)は、逆シフト反応とFT合成反応を同時に実現する反応(nCO2+mH2→CnH2(m-2n)+2nH2O)のため、逆シフト反応+FT合成反応のプロセスに比べて効率よく合成燃料を製造できるが、新たな触媒を開発する必要があり基礎研究段階である。

 合成燃料は、その原料となる水素やCO2の製造・調達をどうするかで、製品コストが大きく変化する。現時点の試算では、約300円~700円/lと化石燃料に比べて高額であること示されている。
 例えば、海外ですべて製造・調達して合成燃料を輸入する場合の製造コストは約300円/L、水素を輸入して国内で合成燃料を製造する場合は約350円/L、水素やCO2の製造。調達をすべてを国内で行う場合は約700円/Lなどの試算が示されている。

 合成燃料の低コスト化は、CO2の分離・回収コストとH2の製造・輸送コストの低減合成効率の向上が必須である。現時点では、グリーン水素の製造・輸送コストの占める割合が高く、海外の安価な再生可能エネルギーで水素製造を行い、日本に水素を輸入するサプライチェーンが現実的である。

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