船舶用エンジンと燃料の現状(Ⅲ)

船舶

 バイオ燃料は動植物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とし、燃焼過程で発生するCO2が排出量としてカウントされない「カーボンニュートラル」な燃料である。SOxやNOの排出量が極めて少なく、排出規制に対応することができる。
 また、バイオ燃料供給には既存の給油インフラが使用でき、燃料の種類によっては既存のディーゼルエンジンの仕様を変更せずに、船舶用燃料として使用が可能(ドロップイン燃料)である。 

 ただし、バイオ燃料の導入拡大には低コストと共に供給可能量が課題であり、現時点ではバイオ燃料による試験走行や船舶への供給方式の検討に留まっている。

バイオ燃料による試験航行

 2019年1月、日本郵船のばら積み船「FRONTIER SKY」が、鉱業会社BHP Billiton Limitedとバイオ燃料の製造会社GoodFuelsの協力を得て、オランダのロッテルダム港でバイオ燃料を補油して欧州域内で試験航行を実施した。
 補油では燃料のトレーサビリティーの強化や、燃料供給におけるサプライチェーン全体の品質管理向上を目的にブロックチェーン技術が試験的に用いられている。

 2020年9月、八重山観光フェリーとユーグレナは、八重山観光フェリーの船舶でユーグレナバイオディーゼル燃料を使用した試験航行を実施した。使用燃料は微細藻類ユーグレナと使用済み食用油を原料とし、今回の試験航行では軽油と混合して使用した。

 2021年6月、商船三井の子会社EURO MARINE LOGISTICSは、自動車運搬船「CITY OF OSLO」にオランダ・フラッシング港で約370トンのオランダGoodfuels製バイオ燃料を補油して試験航行を実施した。このバイオ燃料は、既存のディーゼルエンジンの仕様を変えずに使用できる。

 2021年8月、日本海事協会が「船舶におけるバイオ燃料の使用に関する取り扱い」を公表した。
 各種のバイオ燃料(粗バイオ燃料(SVO:Straight Vegetable Oil)、脂肪酸メチルエステル(FAME:Fatty Acid Methyl Ester)、水素化植物油(HVO:Hydrotreated Vegetable Oil)など)を船舶燃料として使用するための手続きや注意事項などをまとめている。

 2022年2月、商船三井テクノトレードが保有・運航する燃料供給船「テクノスター」は、油藤商事より供給されたバイオディーゼル燃料を用いて試験運航した。日本海事協会(Class NK)により燃焼時に排出される窒素酸化物(NOx)が、MARPOL条約等での排出規制を満たすことが認証された。
 回収した廃食油をメタノールによってエステル交換して生成される脂肪酸メチルエステルを燃料とし、A重油との混合比率を3割以上に高めて使用した。

 2022年3月、日本郵船は大型ばら積み船「FRIENDSHIP」で、4回目のバイオ燃料を使用した試験航行を実施した。トタル・エナジーズ マリンフュエルズの協力で、2022年1月にシンガポール港の港湾水域でバイオ燃料を補油し、積地の南アフリカ・サルダナベイからシンガポール港に戻るまで運航した。

図4 大型ばら積み船「FRIENDSHIP」のバンカリングの様子

 2022年9月、東京都、ユーグレナ、屋形船東京都協同組合が、船宿三浦屋の運航する定員50~100人程度の3隻を使い、軽油の代わりにユーグレナの「サステオ」を使う試験航行をおこなった。運航ルートは、浅草橋近くの船着き場から隅田川を通り、お台場周辺までを周遊する2時間半のコースである。

バイオ燃料の供給関連

 2021年3月、日本郵船はシンガポール本拠の子会社NYK Bulkship (Asia) が、フィンランド本拠のNeste Oyjの子会社Neste Shipping Oyとバイオ燃料の数量輸送契約(COA)を締結した。
 シンガポールで製造されたバイオ燃料(NRD:Neste Renewable Diesel)が、NYK Bulkshipの運航するMR型プロダクト/ケミカルタンカーにより北米に輸送される。

 2020年10月、豊田通商グループは日本で初めてShip to Ship方式による船舶向けLNG燃料の供給事業を開始した。また、2021年4月からシンガポールで燃料供給船(バンカーバージ)によりバイオ燃料の試験運行を行ってきた。
 2021年6月、豊田通商ペトロリアムが日本郵船にバイオディーゼル燃料を販売し、シンガポール港で運航するばら積み船「Frontier Jacaranda」にShip to Ship方式での供給トライアルを実施した。燃料はシンガポール産廃食油由来のもので、地産地消に近い形のサプライチェーン構築を目指している。 

 2022年4月、豊通エネルギーは三洋海事が運航するタグボート向けに、名古屋港でShip to Ship方式による舶用バイオディーゼル燃料の供給トライアルを実施した。今回、供給したバイオ燃料は、豊田通商がダイセキ環境ソリューションと連携し、回収した廃食油を原料に製造したものである。

 2022年8~9月、トヨフジ海運は自動車運搬船「とよふじ丸」で、低硫黄C重油とバイオディーゼル燃料を混合して使用し、 28 日間の試験運航を実施した。燃料供給は豊通エネルギーからShip to Ship 方式により受けた。 

 また、同年9月、川崎近海汽船、ユーグレナ、鈴与商事は、静岡県清水港でRORO船「豊王丸」にユーグレナのサステオを使用して実証試験航海を開始した。今回は、「豊王丸」の寄港地である大分港および清水港での岸壁停泊中にサステオのみを代替使用して、通常業務に支障がないことを検証する。
 給油を担当した鈴与商事は、2021年7月から同社の宅配水配送車両でサステオの使用を開始しており、2022年3月には鈴与グループで航空事業を営むフジドリームエアラインズの航空機へサステオの給油を実施している。

図5 静岡県清水港でRORO船「豊王丸」にユーグレナのサステオを給油

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