CO2回収システム搭載船とは?(Ⅰ)

船舶

 1990年代から、火力発電所からの温室効果ガス削減を目的に、ボイラ排ガスからCO2を分離回収して貯留する技術(CCS: Carbon dioxide capture and storage)の開発が進められてきた。
 CO2回収システム搭載船は、火力発電用に開発されてきたCCSシステムを船舶用にカスタマイズして搭載することで、エンジン排ガスからのCO2を分離回収することを目的としている。

火力発電所からのCO2回収技術

 1990年代から、火力発電所からの温室効果ガス削減を目的に、ボイラ排ガスからCO2を分離回収して貯留する技術(CCS: Carbon dioxide capture and storage)の開発が進められてきた。

 運転条件に応じてCO2を選択的に吸収・放出するアミン系吸収液を用い、排ガスが吸収塔に導引されると排ガス中のCO2が吸収され、吸収液はCO2リッチの状態になる。この吸収液は再生塔に導かれてリボイラで加熱されるとCO2を放出してCO2リーンの状態に戻り、吸収塔で再びCO2を吸収する。
 この操作を繰り返すことで排ガスからCO2を分離回収することが出来る。このようにして回収されたCO2をタンクなどに貯留するのが二酸化炭素分離回収・貯留(CCS)システムである。

図1 化学吸収法による二酸化炭素回収貯留(CCS)プロセス
出典:地球環境産業技術研究機構(RITE)

 先駆的なCCS開発は、1990年より三菱重工業と関西電力により始められ、1999年にはアミン吸収液KS-1を用いた「KM CDR Process」が商業化された。2019年には揮発性が低く耐熱性に優れ、排ガスによる劣化も少ないKS-21吸収液を用いた「Advanced KM CDR Process」が商業化された。

 2021年6月、三菱重工業は英国DRAXと共同でノースヨークシャー州のバイオマス発電所、2021年10月、三菱重工エンジニアリングが、ノルウェーのモングスタッドCO2回収技術センター(TCM)での実証試験で、ガスタービン排ガスからのCO2回収率が最大99.8%に到達したことを発表した。
 TCMは隣接する石油精製工場やガス火力発電所から、約10万トン-CO2/年の回収能力を有する。

 また、2020年9月、関西電力、川崎重工業、地球環境産業技術研究機構(RITE)は共同で、関西電力の舞鶴発電所内に40トン-CO2/日の固体吸収法によるパイロットスケール試験設備を建設しており、発電所の煙道から排出ガスを抜き取り、2022年度からCCS実用化に向けた検証試験を開始した。
 川崎重工業が開発したKCC(Kawasaki CO2 capture)移動層システムでは、CO2分離にRITEが開発した吸収素材表面に約2mmのアミンをコーティングしたものを採用しており、CO2の再生回収が100℃以下の減圧蒸気で可能なため、発電所内の低温余剰排熱を使うことが可能である。

図2 CCSパイロットスケール試験設備を建設した舞鶴発電所(石炭火力)

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