広義の電気推進船(ES)は、ディーゼルエンジンと電動モーターを使うハイブリッド推進船(HEA:Hybrid Electric Ship)、蓄電池の電気のみで航行する完全電気推進船(PES:Pure Electric Ship)、燃料電池を使った燃料電池推進船(FCES:Fuel Cell Electric Ship)に分類できる。
電気推進船の分類
従来船舶の代表的な推進技術は、直接機械駆動推進(Direct mechanical)システムとディーゼル電気推進(Diesel electric)システムの2方式である。
大型タンカーなどで採用されている直接機械駆動推進システムは、ディーゼルエンジンで直接にプロペラを回転して推進する方式で、居住区と補助システム用電力は補機である別のディーゼルエンジンが駆動する発電機が供給する。
一方、出力変動が頻繁な船舶では制御性に優れた電動化が進行し、ディーゼル電気推進システムは、ディーゼルエンジンが駆動する発電機により得られた電力で電動モーター(電動機)を動かしプロペラを回転して推進する方式で、居住区などへの電力供給も同一の電源から配電盤を介して行う。
この電気推進システムはオフショア支援船 (OSV:Offshore Supply Vessel )や、スペースの柔軟性が必要とされるクルーズ船などに広く採用されている。
次世代のゼロエミッション船の開発には、バイオ燃料(合成メタンを含む)、水素、アンモニアなど、重油に代る船舶用燃料の使用が検討されている。これと並行して、ディーゼル電気推進システムに蓄電池を搭載することで、エネルギー効率を向上させた船舶の開発が進められている。
電気を推進機構に使う船舶の総称として使われる広義の電気推進船(ES:Electric Ship)の分類を、図2に示す。
広義の電気推進船(ES)は、ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッド推進船(HEA:Hybrid Electric Ship)、蓄電池の電気のみで航行する完全電気推進船(PEA:Pure Electric Ship)、燃料電池の電気で航行する燃料電池推進船(FCES:Fuel Cell Electric Ship)に分類される。
港湾での給電インフラが整備されればプラグイン・ハイブリッド船(PHES)も出現するであろう。また、次世代船舶には燃料電池推進船(FCES)に加えて、水素燃料を使って航行する水素燃焼タービン船(HTA:Hydrogen Turbine Ship)の開発も進められている。
ところで、自動車の電動化とよく似た様相を示す船舶の電動化であるが、燃費改善の仕組みには大きな違いがある。
広義の電気自動車(EV)に共通するのは回生ブレーキであり、減速時に生じるエネルギーを利用して電動機が発電し、充電池に充電できるために燃費が大幅に向上する。しかし、航空機の場合と同様に船舶の電動化には回生ブレーキの仕組みがないため、燃費改善の仕組みが全く異なる。
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