運輸部門と合成燃料「e-fuel」(Ⅰ)

自動車

 運輸部門におけるCO2排出量の削減には輸送効率の改善が重要で、航空機自家用乗用車バス自家用貨物車が対象として有効である。
 現在、自家用乗用車、短距離用のバスや自家用貨物車は、EV化が急速に進められている。また、長距離用のバスや自家用貨物車のFCEV化が検討されている。一方、長距離用のバスや自家用貨物車、EV化やFCEV化が困難な航空機については、液体燃料の脱炭素化が選択肢の一つと考えられる。

運輸部門におけるCO2排出量

 図1のように、2020年度における日本のCO2排出量(10.44億トン)のうち、運輸部門からの排出量(1.85億トン)は17.7%を占める。特出している自動車は全体で運輸部門の87.6%を占め、うち、旅客自動車が運輸部門の48.4%、貨物自動車が運輸部門の39.2%を排出している。

図1 日本の運輸部門におけるCO2排出量 出典:国土交通省

 当然のことながら、輸送量が増加すればCO2排出量も増加する。輸送量は景気の動向等に左右されるため、運輸部門におけるCO2排出量の削減は、輸送効率を改善することが重要となる。

 図2には、国内の旅客輸送と貨物輸送について、輸送効率の目安となる単位輸送量当たりのCO2排出量を比較する。旅客輸送では各輸送機関から排出されるCO2排出量を輸送量(人数×距離km)、貨物輸送では輸送量(重量トン×距離km)で割ることで、単位輸送量当たりのCO2の排出量を示す。

 旅客輸送では、航空輸送の単位輸送量当たりのCO2排出量が最も多く、自家用乗用車バスが続いている。貨物輸送では、自家用貨物車の単位輸送量当たりのCO2排出量が特出して多いことが分かる。すなわち、航空輸送自家用乗用車バス自家用貨物車がCO2排出量の削減対象として有効である。 

図2 単位旅客輸送量当たりのCO2排出量の比較 出典:国土交通省

 現在、自家用乗用車、短距離用のバスや自家用貨物車については、EV化が急速に進められている。一方、長距離用のバスや自家用貨物車についてはFCEV化が検討されている。しかし、EV化やFCEV化が困難な航空機に関しては、液体燃料の脱炭素化が一つの選択肢として検討されている。

 液体燃料の脱炭素化としてバイオ燃料が推進されているが、バイオマス原料不足が懸念されている。そこで有望視されているのが、「合成燃料(e-fuel)」の活用である。合成燃料とはCO2とH2を合成して製造される液体燃料であり、複数の炭化水素化合物の集合体である。

 資源エネルギー庁は2021年4月の「合成燃料研究会 中間取りまとめ」を基軸として、2022年9月に「合成燃料(e-fuel)の導入促進に向けた官民協議会」を設置し、経済産業省や国土交通省と、石油連盟、日本自動車工業会などの業界団体が参加して初会合が開かれた。

 この官民協議会では、合成燃料の商用化に向けて技術面・価格面の課題に加え、認知度向上のための国内外への発信、サプライチェーンの構築、CO2削減効果を評価する仕組みなどの整備を進めている。

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