電動バイクは普及するのか?(Ⅲ)

自動車

 これまでのEVバイクは原付第一種(50cc以下)の代替を狙っていたが、日本市場の要求は原付第二種以上(51cc以上)に変化している。EVバイクの普及には、高性能蓄電池(容量:1.0kW以上)の搭載によるラインアップが必須である。ユーザーが用途に応じて選択できるよう認知度を上げる。

 一方、日本におけるバッテリー交換サービスは、商用車を中心にEVバイクの普及には一定の役割を果たすが、ツーリングなど用途が多様化しているユーザーには高性能蓄電池の搭載が必須となる。

海外のEVバイク動向

EVバイクの輸入

 海外からの輸入EVバイクは、オフロードバイクやスポーツバイクなどが中心である。

 2022年4月に開催された「東京モーターサイクルショー2022」では、海外からの輸入EVバイクの展示が目立っが、オフロードバイクやスポーツバイクなどが中心である。
■中でも注目度の高かったのがBMWモトラッドのEVスクーター「CE04」である。重量:231kg、定格出力:15 kW、航続距離:130km、価格:195万円で、排気量区分は126~250ccである。
イタリアのランブレッタ、台湾のSYMなどを輸入するMOTORRISTS(モータリスト、2020年設立)は、イタリアのファンティックのe-bike、スペインの競技用電動キッズバイクTORROT(トロット)、オリジナルブランドの電動オフロードバイクなどを展示していた。
■福岡市を拠点とするMSソリューションズが立ち上げた電動バイクブランドのXeam(ジーム、2017年設立)は、海外の新興メーカーの電動バイクを輸入販売しており、米国ゼロモーターサイクル、中国のニウ、トロモックス、オーストラリアのスーパーソコなど6ブランドの20車種を一斉展示していた。
■エスターがインポーターとなるEnergica(エネルジカ)はスポーツバイクに特化したブランドで、電動バイクの世界選手権レースでマシンを供給してきたという実績を持つ。安全性を重視した高エネルギーリチウムポリマー(Li-NMC)バッテリーの搭載をPRしている。

図6 東京モーターサイクルショー2022でXeamは6ブランドの20車種を一斉展示

 2023年1月、スポーツアパレルのゴールドウインは、スウェーデンのEVバイクメーカーCAKEと国内独占販売の契約を結んだ。2025年末までに5000台の販売を目指すという。原付第一種免許があれば乗れるモデルなど、10機種を扱う。価格は税込み86.9万円から。

バッテリー交換サービス

 EVバイクメーカーの台湾Gogoro(ゴゴロ)が2015年に始めた電池交換サービスが急速に伸びており、2022年8月に利用者が50万契約に達した。新車販売で2輪車全体に占めるEVバイク比率は2021年で約25%であり、その内の92%超をGogoroのサービス対応車が占める。

 バッテリー交換ステーション「GoStation」は、台湾全体で2423カ所(2022年9月末)あり、電池スロット数は総計約10.5万個に達する。1カ所で120スロット以上の「スーパーGoStation」も増えてきた。2021年6月には台湾・鴻海精密工業と電池パックや電動スクーターの生産で提携している。

図7 2022年9月末時点では、台湾全体で交換ステーション「GoStation」は2423カ所

 2021年10月、ゴゴロは、中国で「換換(Huan Huan)」ブランドでバッテリー交換サービスを始め、EVバイクは2輪車メーカーである中国・大長江集団(DCJ)と電動モビリティーメーカーYadea Technology Group(雅迪)が製造する。
 インド、インドネシア、シンガポール、イスラエルにも電池交換サービスを拡大中としている。 

 一方、本田技研工業は、インドの現地法人が電動三輪タクシー(リキシャ)向けに電池シェアリングサービスを始めており、バッテリー交換ステーションを稼働している。インド向けは、3相4線400V電源に接続し、電池冷却機能は搭載しているが、モニターや通信機能、NFC認証機器は搭載していない。

 また、本田技研工業は、着脱式の蓄電池システム「ホンダ・モバイルパワーパック」を開発しており、インドで実証試験を進めている。繰返し使用で劣化した蓄電池を回収し、リサイクルする仕組みも作る方針としている。

 バッテリー交換サービスは、商用車を中心とし、買い物・通勤などに利用するユーザーに対するEVバイクの普及には一定の役割を果たす。

EVバイク普及の課題

 日本自動車工業会(JAMA)によると、2021年の二輪車販売台数は、前年より13.7%増加して41.6万台である。2015年あたりから販売台数は低迷傾向にあるが、原付第一種(50cc以下)の販売台数が伸びることで40万台をクリアしている。

 排気量別では、原付第一種(50cc以下)が4.3%増の12.8万台、原付第二種(51~125cc)は23.5%増の12.6万台、軽二輪車(126~250cc)は6.1%増の7.9万台、小型二輪車(251cc以上)は24.0%増の8.4万千台で、原付第二種以上(51cc以上)は18.3%増の28.8万台である。 

図8 日本自動車工業会による二輪車販売台数の内訳と推移

 また、JAMAの二輪車市場動向調査報告書(2021年度)では、二輪車の使用実態が調査されている。
 すなわち、スクーターの原付第二種(125cc以下)は「買い物・用足し」「通勤・通学」が多いが、軽二輪(126cc)以上、ビジネス原付第二種(125cc以下)、オンロード(51cc以上)、オフロード(126cc以上)は「ツーリング」が高い。特に、輸入車は「ツーリング」が、95%と特に高い。

 これまでのEVバイクは原付第一種(50cc以下)の代替を狙っていたが、日本市場の要求は原付第二種以上(51cc以上)に移行している。EVバイクの普及に向けては、高性能蓄電池(容量:1.0kW以上)の搭載によるラインアップが必須である。ユーザーが用途に応じて選択できる必要が高まっている。

 国内におけるEVバイク調査では、認知度は高いものの乗車経験はほぼなく、そもそも現車がほとんど存在しない将来の乗り物として捉えられており、実感を持つことができないとの意見がある。環境意識の高まりなどEVバイクの将来性は感じられているので、早急な認知度の向上対策が必要である。

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