電動バイクは普及するのか?(Ⅱ)

自動車

 ガチャコによるバッテリー交換ステーションの開設に前後して、2021年以降には、本田技研工業・ヤマハ発動機・カワサキモータース・スズキの二輪車4メーカーを中心に、EVバイクの新商品投入の発表が相次いでいる。ただし、自宅でも充電できる交換式バッテリーを搭載したものが主流である。

国内メーカーの動向

ヤマハ発動機

 2021年7月、世界で販売する二輪車について、2030年をめどに商品投入を本格化し、2035年までに20%、2050年までに90%を電動化する目標を発表。残りの10%は、ハイブリッド車(HEV)や合成燃料の活用などで対応するとした。また、EVバイクのリース事業を開始する。 

 2022年7月、実証実験用電動スクーター「E01(イーゼロワン)」をリースし、原付第二種クラスのEVバイクの実証実験を国内で開始した。重量:158kg、定格出力:0.98kW、航続距離:104㎞、充電時間:約1時間(急速充電)/約5時間(普通充電)/14時間(ポータブル充電)である。
 これまで125ccクラスのEVバイクは、台湾のベンチャー企業「Gogoro(ゴゴロ)」からのOEMによる「EC-05」を台湾などで販売しているが、ヤマハの自社開発による125ccクラスは初となる。

図2 ヤマハ発動機の実証実験用電動スクーター「E01」 

カワサキモータース

 2021年10月、川崎重工業から分社してカワサキモータースが発足した。事業方針説明会で2025年までにEV/HEVバイク10機種以上を導入し、2035年までに先進国向け主要機種の電動化(BEV/HEV)を完了させ、水素エンジン開発にも取組むことを発表した。
 また、オフロード四輪車は、BEV・HEV四輪車の開発に加え、2025年までに5機種を導入する。

 2022年11月、EVバイク2機種とHEVバイク1機種を発表した。主力モデル「Z」「Ninja」を電動化に対応させた「ネイキッドタイプ(Z)」「フルカウル(Ninja)」である。近距離使用を想定し、交換式バッテリー(最大3.0kWh、約12kg)を2個搭載。2023年の発売を目指している。

図3 カワサキモータースのEVバイク

参考:世界最大規模のモーターサイクル展示会「EICMA:ミラノモーターサイクルショー」(2022年11月)で、カワサキモータースは次世代バイク構想を発表した。
 「フルカウル(Ninja)」「ネイキッドタイプ(Z)」ともに、日本では原付第二種にあたるEUのA1ライセンス(125cc以下かつ最高出力11kW以下)に対応し、取り外して室内で充電可能なリムーバブルバッテリーバック(重量:約12kg)を2個搭載し、蓄電池容量は最大で3.0kWhである。
 同時に、2024年の市販化を目指すHEVバイクのプロトタイプを発表した。ストロングハイブリッド型エンジンを搭載し、モーター走行またはモーター/エンジン併用走行の切り替えができる。
 また、2030年代前半の実用化を目指す水素エンジン搭載バイクを参考展示した。パワーユニットは、『Ninja H2』のスーパーチャージドエンジンをベースに直噴化し、圧縮気体水素を燃料とする研究用エンジンである。今後、液体水素燃料の採用、バイオ燃料対応の内燃機関の開発も進める。

本田技研工業

 2022年9月、本田技研工業は、2030年に世界で販売するバイクの15%を電動車とする目標を発表した。2021年度の電動車比率は0.4%にとどまるが、2025年までに10車種以上のEVバイクを投入し、2026年に5.5%(約100万台)、2030年に15%(約350万台)まで引き上げる。
 バイクは四輪自動車に比べて大型電池を収納できるスペースが限られるため、EV化が難しい。本田技研工業は、充電した電池を交換する方式を採用してきたが、今後は、小型で高出力の全固体電池の導入し、自宅などでも充電できるようにして利便性を高める。

 2023年5月、本田技研工業は、国内で一般向けに量販する電動スクーター「EM1e:(イーエムワン イー)」を8月に発売すると発表。価格は29.92万円(税込)で一般的な原付きバイクの約1.5倍である。自宅でも充電できる交換式バッテリーを搭載し、航続距離:53kmである。

図4 ホンダ技研工業の「EM1 e」とバッテリー

スズキ

 2023年1月、小型・中型バイクでは2024年度にバッテリーEVを初投入する。2030年度までに全世界で8車種を発売し、バッテリーEV比率を25%に高める計画を発表。ただし、大型のファンバイクについては、カーボンニュートラル(CN)燃料での対応を検討する。

 2023年4月、バイク部門では第一弾となるEVスクーター「e-BUREGMAN(イーバーグマン)」を公開し、4月~6月にかけて、東京都城南地区内で走らせ実証実験を進めている。
 実証実験が行われるイーバーグマンは、シート下に交換型バッテリーを装備している。最高出力:4.0kW、最大トルク:18Nm、航続距離:約44km、重量:147kgで「バーグマンストリート125EX」に比べて約20kg重い。

図5 実証実験用のスズキ電動スクーター「e-BUREGMAN」

スタートアップ

 2022年4月に開催された「東京モーターサイクルショー2022」では、デザインはイタリア、生産は神奈川県相模原市の自社工場で行うaidea(アイディア、2019年設立)が、配送用電動三輪スクーター「AAカーゴ」を出展し、ドミノ・ピザやDHLで使われているカラー車体に注目が集まった。
 AAカーゴのラインアップは4タイプあり、バッテリー容量が小さい原付第一種の「AAカーゴ α4」は、容量:3.85kWh、航続距離:89km、プラグイン充電は標準装備の充電ケーブルにより200Vコンセントから約3時間で行う。価格は87.78万円(税込)である。

コメント

タイトルとURLをコピーしました