運輸の「2024年問題」について(Ⅱ)

自動車

 2023年10月、遅ればせながら、政府は「2024年問題」の緊急対策として、輸送手段を鉄道やフェリーなどに転換する「モーダルシフト」を進めることが報じられた。トラック輸送の代替手段を充実させて、運転者の負担軽減を図りつつ、2050年カーボンニュートラルを目指す
 政府は「物流革新緊急パッケージ」を取りまとめた。具体策は10月末までに岸田政権がまとめる経済対策にも盛り込まれ、2024年の通常国会での法制化を目指す。

トラック輸送の現状

 2023年2月、野村総合研究所は「トラックドライバー不足時代における輸配送のあり方」について提言を行った。特に、「2024年4月からの労務管理が厳格化されると、ドライバー不足がより進み2030年には日本全国で約35%の荷物が運べない」との推計は脅威である。
 特に、東北や四国などの地方部の供給力不足が大きい。秋田県では約46%高知県では約42%の荷物が運べない懸念があるとしている。

 今後、輸配送の共同化が重要で、共同配送でトラック積載率を現状の約38%から2030年に55%まで向上させると、供給量不足は2030年で約7%に改善できると推計した。共同配送は幹線輸送や地方部宅配で進められているが、BtoB配送(地域内の納品物流)の共同化が課題としている。 

図3 全国のトラックドライバー数の将来推計  出典:野村総合研究所

 2023年8月には、読売新聞が野村総合研究所の推計に基づいて、「2024年問題」で2025年には13%、2030年には27%の荷物が北海道内で運べなくなる可能性があると報じた。
 野村総合研究所は、実績値を基に運転手の将来的な需要と供給を算出しており、全国的に荷物の取扱量が増える一方で、トラック運転者の不足に加え、時間外労働の上限規制が始まるためである。

 北海道では、函館地域(渡島・檜山地方)では、2030年には32%の荷物が運べなくなる。人口密度が高い函館市と七飯町から優先的に配送量が維持された場合、人口密度の低い残り16市町では、配送頻度を2日に1回に減便したり、追加料金が発生する恐れがあるとしている。

 道内の営業用トラックの積載率は35%であるが、これを2030年時点で50%まで引き上げて効率を高めれば、少ない台数でも物流網が維持できるとし、「物流は競争でなく協調する領域、物流企業や荷主らが幅広く協力することが必要」と野村総合研究所は提言している。

 また、野村総合研究所は時間外規制で、全国で必要なトラック運転者は2020年の約60万人から2025年に約70万人に増えると推計している。東海3県では、計約6.3万人から約7.5万人に増やす必要があり、静岡を含む4県では、2025年に29%、2030年に36%の荷物が運べなくなると試算する。
 今後、人口減で荷物は徐々に減るが、それ以上に運転手が激減するためである。

図4 全国的に荷物の取扱量が増えてトラック運転手が不足している
出典:読売新聞

2024年問題への緊急対策

 2023年10月、遅ればせながら、政府は「2024年問題」の緊急対策として、輸送手段を鉄道やフェリーなどに転換する「モーダルシフト」を進めることが報じられた。トラック輸送の代替手段を充実させて、運転者の負担軽減を図りつつ、2050年カーボンニュートラルを目指す
 政府は以下の内容を盛り込んだ「物流革新緊急パッケージ」を取りまとめた。具体策は10月末までに岸田政権がまとめる経済対策にも盛り込まれ、2024年の通常国会での法制化を目指す。

鉄道や船舶の輸送量を今後10年で倍増
 船舶の輸送量を2020年度時点の5000万トンから1億トン鉄道の貨物輸送を1800万トンから3600万トンに増やし、陸上と海上の輸送をつなぐ施設や道路の整備を進める。
 具体的には、トレーラーなどを運べるRORO船やフェリーの活用を掲げる。トラックごと運ぶことで航行中に運転者が休息できる。コンテナだけを船に積み到着地で別のトラックに引き継ぐことも可能であり、船舶を有効に使う企業への支援を検討する。
荷主企業に「物流経営責任者」を置くことを義務化
 一定以上の物流量を扱う荷主企業に対し、トラック運転者の労働時間や負荷軽減に向けた計画を策定し、対策の進捗管理を担う責任者を選任する。
置き配やコンビニ受け取りを選ぶ消費者にポイント付与、再配達率を半減
 通販の配送時に玄関前に荷物を置く「置き配」や、ゆとりを持った配送日時を指定した消費者にポイント付与の取り組みを進め、販業者のシステム改修費への支援を検討する。早急に実証実験を始めて再配達率を現状の12%から2024年度に6%へと半減させる。
「集中監視月間」を創設、トラックGメンによる監視体制強化 
 11~12月を集中監視月間とする。
高速道路での自動運転トラック走行へ環境整備

 2023年2月、「2024年問題」を見据え、東海地方の企業が対応を強化していることが報じられた。長距離輸送を減らし、鉄道や船舶を利用したりする動きである。待機や荷降ろしなど運転以外の負担を軽減する仕組みも模索されている。

自動車部品を輸送する岡崎通運は、2022年10月から、岡崎市ー福岡県まで往復約1600kmの運転を広島県の運送会社と分担。これで運転者は毎日、自宅に帰れる。
西濃運輸は、2021年から、名古屋―福岡間の貨物列車で機械部品や生活用品などをコンテナで運ぶ取り組みを開始。トラックを積んだ船舶での輸送も増やしている。
豊田自動織機は、トラックの荷物を無人で積み降ろす自動運転フォークリフトを開発した。AIが高精度カメラなどで荷物の大きさや形を認識する。市販化する計画。
新興企業オプティマインドは、集配所から家庭など最終地に届ける「ラストワンマイル」対応に、AIで最適ルートを算出し停車位置などを指示するシステムを販売。

 一方、より深刻な路線バスへの対策は遅れている。東急バスなどは2023年来春以降、横浜市で2両連結の「連節バス」を運行し、1人の運転者で多くの乗客を運ぶ態勢を整える。2025年の大阪・関西万博では、シャトルバスの一部区間で自動運転を計画している。
 国土交通省は即戦力を確保するため、バス、タクシー、トラックなどの運転者について、外国人労働者の在留資格「特定技能」に加えることを検討している。 

 遅ればせながら政府から出された「物流革新緊急パッケージ」であるが、ポイント付与などいずれも対処療法本質的な問題解決ではない。特に、鉄道・船舶は過って物流の主力であったが、利便性からトラック輸送に取って代わられたことを忘れてはならない。
 「なぜ運転者不足が生じているのか?」この理由を考え、若手の運転者を育成し、運送効率を上げる工夫を追求することが本質的な問題解決の道であろう。

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