2020年代におけるBEVシフト(Ⅸ)

自動車

新規参入と異業種提携

 2020年代に入ると、BEVへの新規参入が本格化してきた。ガソリン車の部品点数は約3万点で、BEVは部品点数が4~5割少ないことが、異業種からの参入障壁を下げている。加えて、モーターや蓄電池、半導体が中核部品となり、BEVはソフトで制御されるようになる。
 また、自動運転による新規市場の拡大がIT関連企業などを引きつけている。これにより、従来の自動車の概念を超えた大きな変革を起こす可能性が出てきた。

台湾の鴻海精密工業

 2020年10月、台湾の鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)がBEV開発用のソフトウエア・ハードウエアプラットフォーム(車台)を発表し、2021年には台湾自動車大手・裕隆グループなどとBEVの試作車を発表した。

 その後、BEV製造の業務提携を進め、2022年3月時点で、日本企業約100社を含む約2200社が参加する。図2のように、参加企業は企業連合を組んでBEVの車体や通信基盤を共同開発し、設計情報を共有し、部品規格などを共通化し、鴻海が受託生産するBEV向けに部品やシステムを販売する。

 日本の部品メーカーは日本電産・日本精工・ブリヂストン・デンソー・ジェイテクト・エフ・シー・シーなど、半導体メーカーは東芝、三菱電機、商社や物流関係では住友商事や日本通運などが参加している。鴻海に委託すれば、自前で工場を持たなくても自社ブランドのBEVが販売できる仕組みである。

図2 鴻海精密工業の電気自動車(BEV)の水平分業モデル

 従来、自動車の大手メーカーは多数の部品会社を束ねて産業ピラミッドを構成してきたが、今後、自社はソフトの開発などに専念し、生産は別の企業に任せるデジタル家電と同様の「水平分業」がBEVに関しても広がるとみられる。

 水平分業は研究開発、原料調達、組み立て工程などを、異なる企業が得意分野を生かして協力するビジネスモデルで、1企業が開発・生産のすべてを受け持つ垂直統合に比べて、設備投資の負担や事業リスクが軽減できるとされている。

米国アップル

 米国アップルは、2014年から計画を進めてきたとされるが、これまでBEVの開発を公式には認めていない。しかし、2021年1月にBEV参入に向け、複数の自動車メーカーとの交渉が明らかになり、完全自動運転に対応できるBEVを早ければ2024年にも発売すると報じられた。

 米国ブルームバーグの報道では、ハンドル操作が不要な完全自動運転で、車内で向かい合うように座って移動することが想定されている。タブレット端末「iPad」のようなタッチスクリーンを車内に設置し、アップルの他のサービスと連携することも検討されている。

ソニーグループ

 2022年1月、ソニーグループはBEVへの本格参入と同時に、SUVタイプの試作車両(VISION-S 02)を発表した。オーストリアの製造業プラットフォーマーであるマグナ・シュタイヤーを通じて駆動部分の技術をアウトソースした試作車両である。
 ソニーは強みであるデザイン・センサー・音響システム・第5世代通信(5G)・エンターテインメントなどの車載システムのほか、次世代型移動サービス「MaaS(マース)」に関するソフト分野に集中するとしている。

図3 SUVタイプの試作車両(VISION-S 02)

 2022年3月、本田技研工業とEV事業での提携を発表し、年内に共同出資会社「ソニー・ホンダモビリティ」を設立し、2025年に開発したBEVを発売する計画である。共同出資会社がBEVの設計や開発、販売を手掛け、生産は本田技研工業の工場に委託する。

 2025年に最初の車種を販売した後、他社にも提携への参加を呼びかけて「水平分業」を目指している。ソニーが開発するBEV向けのソフトウエアは、本田技研工業以外の自動車メーカーにも販売する方針を表明している。

ルネサスエレクトロニクス

 2022年1月、ルネサスエレクトロニクスはインドのタタ・グループでソフトウエアを手掛けるタタ・エレクシーと、BEV技術の共同開発組織「次世代EVイノベーションセンタ」をベンガルールに設置した。新興市場で二輪車や小型車の電動化が進むため、電源やモーター管理、システム開発に取り組む。

中国バイドゥ

 2021年1月、中国では百度(バイドゥ)は吉利汽車(ジーリー)と合弁会社「百度汽車」を設立し、BEVの製造に乗り出すと発表した。百度は2013年に自動運転技術の研究開発をスタートし、2017年に自動運転技術開発のオープン・プラットフォーム「Apollo(アポロ)」をリリースしている。

中国ディディ

 2020年11月、中国配車アプリ最大手の滴滴出行(ディディ)は、世界初となる配車サービス専用のBEVを発表した。比亜迪(BYD)と共同開発し、BYDが製造を請け負う。滴滴のアプリを使って配車事業を手掛ける企業やリース会社に提供するのが狙いで、2025年をメドに100万台規模の利用を目指す。

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