無人自動運転車の開発現状(Ⅰ)

自動車

 現在、多くの企業が自動車メーカーを中心に、無人自動運転車の市場拡大に注目している。「自動運転車(AV:Autonomous Vehicle)」「ロボットカー(Robotic Car)」のほか、「無人車(Driverless car)」という表現もあるが、基本的に同じものである。

 一方、国内では大きな変化があった。「2024年問題」を乗り切るための方策として、国土交通省が個人タクシー運転者の年齢を80歳まで引き上げるほか、タクシー運転者としての「外国人労働者」の受け入れ拡大の方針である。本当に、このような対策で日本は大丈夫か?

無人自動運転とは

 無人自動運転タクシーの商用サービスが米国で始まり、最近では中国北京でも商用サービスが始まったとの情報がある。一方、国内では2023年4月に改正道路交通法が施行され、自動運転レベル4(限定領域での自動運転化)が解禁されたが、未だ実証試験の段階にある。

 世界のタクシー業界が大きな変革を進める一方、国内でも大きな変化があった。「2024年問題」を乗り切るための方策として、国土交通省が個人タクシー運転者の年齢を80歳まで引き上げるほか、タクシー運転者としての「外国人労働者」の受け入れ拡大である。このような対策で本当に大丈夫か?

何故、自動運転なのか?

 国土交通省は自動運転の効果として、① 死亡事故の大部分は「運転者の違反」に起因しており、自動運転の実用化により交通事故を削減、②地域公共交通の維持・改善、運転者不足への対応渋滞の緩和・解消などを上げており、自動車メーカーの国際競争力の強化を期待している。

 そのため、2025年度を目途として「自家用車の高速道路でのレベル4の実現」「限定領域での移動サービスを50カ所程度で実現」、2025年度以降には「物流サービスの高速道路でのレベル4の実現」を目標に掲げた。

図1 自動運転の実現に向けた取り組み 出典:国土交通省

 自動運転が実現することで、夜間も含めた24時間ライドシェアサービスが可能になる。特に、多数のセンサーが広範囲の情報を収集し、人工知能(AI)で意思決定を行うため、走行環境に変化が生じない限り悪天候でも安定走行が可能で、運転を重ねるごとに自動運転技術が改善し続けられる。

 現在、移動サービスの一つである自動運転タクシーの実現が、世界的に注目を集めている。運転席に運転者がいなくても自動運転で走行するタクシーは、ロボタクシーとも呼ばれている。運転者不在のため人件費が抑えられ、将来的には運行コストが1/10以下になるという調査結果もある。

 最も興味深いのは、乗客にとって自動運転タクシーのサービスは、現在の配車アプリを利用する時と変わらない点である。すなわち、乗客はスマートフォンに乗降場所を指定してでタクシーを呼び、決済処理の後に降車するシンプルな方法で利用できる。

 今後、自動運転の実用化・普及のためには、車両の技術開発のほかに、走行環境の整備社会受容性向上などの総合的な取組みが必要である。特に、最近では自動運転に関して①安全と安心、②地域の理解、③事業の継続性などの社会受容性の問題が議論され始めている。

自動運転に必要な技術

 自動運転では、自動車を運転するための3要素である「認知」「判断」「操作」をシステムが自動で行う。すなわち、カメラやセンサー、全地球測位システム(GPS)などにより周辺環境を認知し、得られた情報を人工知能(AI)などが判断し、アクセルやブレーキ、ハンドルなどを操作する。
 そのため、自動運転の実現には、多くの先進技術の開発が不可欠とされている。 

認知(認識技術、位置特定技術、通信技術)

 認識技術は、周辺の車両、障害物、歩行者、道路状況を人間の目に代わり認識する。カメラ、レーザー、赤外線、超音波などのセンサーを複数活用し、対象物との距離計測や立体視をリアルタイムで行う。現在、多くのスタートアップが、光リモートセンシング(LiDAR)開発に挑戦している。

 位置特定技術は、GPS(全地球測位システム)やQZSS(準天頂衛星)を用いて位置測定を行うほか、道路に敷設した磁気マーカーを車両底部の磁気センサーで計測する方法がある。
 得られた位置情報を、高精度3次元地図に交通情報などをリアルタイムに付加する「ダイナミックマップ」と合わせることで、より精度の高い自動運転が可能になる。

 通信技術は、自動運転車が収集した情報を自車だけで完結させず、常にサーバーと接続してビッグデータを活用し、情報更新して安全運転につなげる。路車間通信(V2I)、車車間通信(V2V)、遠隔型の自動運転など、第5世代移動通信システム「5G」を使った実証が進められている。

判断(AI技術、予測技術、プランニング技術)

 AI技術は、カメラやLiDARなどで得られた画像や自車の走行状況などを予測・解析し、車両をどのように制御すべきかを人間の頭脳に代わり判断する。人工知能(AI)が予測アルゴリズムや意思決定アルゴリズムなどに基づいて行う

 予測技術はAIにも関わるが、歩行者や自転車の飛び出しなどの事故リスクや、天候や路面状況などに災害情報も加味して発生しうる危険性を予測し、自動運転により減速や一時停止、迂回などの処理につなげることで安全走行に不可欠な技術である。

 プランニング技術はAIにも関わるが、近くを走る走行車両や障害物、歩行者、自転車などの位置を認識することで、どの走行車線やルートを走行したら最も安全であるかをリアルタイムに算出し、実際の走行経路に反映させる。

基盤技術(セキュリティ技術、HMI技術、遠隔監視技術)

 セキュリティ技術は、通信技術により常に外部とつながる自動運転車(コネクテッドカー)では、高度なセキュリティ技術が不可欠である。自動運転車がハッキングされた場合、情報の流出だけでなく大きな危険を伴う物理的な損害も予想される。

 ヒューマン・マシンインターフェース(HMI)技術は、自動運転から手動走行に切り替える場合やトラブルなどで緊急停車する場合など、乗客と自動運転車はコミュニケーションを図る必要がある。また、周囲の歩行者とコミュニケーションを図る技術の開発も進められている。

 遠隔監視技術は、運行状況の管理や緊急事態に備えるために必須である。無人自動タクシーなどの移動サービス車両には緊急停止ボタンなどが取り付けられるが、次世代高速通信「5G」により管制センターで複数車両を常時監視し、必要に応じて制御する仕組みが使われている。

図2 自動走行システムに必要な技術  出典:NEDO

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