自動車の未来予測を主題として検討を進めるにあたり、まずは自動車用の①エネルギー・燃料の流れと②自動車用構造材料の変革を明らかにする必要がある。その後、最近の③自動車の開発動向(ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車)に触れて、今後の自動車の技術開発の流れを④燃料電池車と電気自動車に注目して現状の自動車メーカーの開発動向を示す。加えて、⑤自動車の電動化の鍵を握る蓄電池の開発現状をレビューする。
- エネルギー・燃料の流れ
- 自動車用構造材料の変革
- 自動車の開発動向(ハイブリッド車、プラグイン・ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車)
- 燃料電池車と電気自動車に注目して現状の自動車メーカーの開発動向
- 自動車の電動化の鍵を握る蓄電池の開発現状
エネルギー・燃料の流れ
自動車用の燃料には一次エネルギーである石油を原料に精製されたガソリンや軽油が使われている。タクシーやバスには、石油や天然ガスを原料とする圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)や液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)も使われておりCO2排出が問題視されている。
一方、原子力や再生可能エネルギーにより発電された電力を直接使う電気自動車や、原子力や再生可能エネルギーにより発電された電力により電気分解(水電解)を行うことで得られた水素を使う燃料電池自動車は、二次エネルギーを使うことでCO2 排出量の抑制に大きく貢献することができる。
しかし、国内での供給電力の3/4は、石炭・石油・天然ガスを燃料とする火力発電により供給されているのが現状である。このような化石燃料を原料とする火力発電により供給された電力を使う限り、電気自動車や燃料電池自動車を使ってもCO2 排出量の抑制にはならないことを理解する必要がある。
また、クリーン水素と呼ばれる水素であるが、その製造に使用される原料や電力によって、CO2 排出量の視点から色分けして呼ばれている。「グリーン水素」は、水を原料として再生可能エネルギーによる電力で電気分解により得られた水素であり、CO2排出なしに製造された水素である。
「ブルー水素」は化石燃料を原料として水素とCO2に分解し、発生したCO2を回収(50~90%)して製造した水素である。「グレー水素」はブルー水素と同様の製造プロセスで、CO2を回収せずに製造した水素である。2020年時点で世界で生産されている水素の約95%が、このグレー水素である。
「イエロー水素」はグリーン水素と同様の製造プロセスで、原子力発電による電力を利用して製造された水素である。原子力発電ではCO2排出量を抑制できるが、安全性への懸念、使用済み核燃料問題、最終処分地問題などの課題が多く区別されている。
- グリーン水素:水を原料とし、再生可能エネルギーによる電力で電気分解により得られた水素
- ブルー水素 :化石燃料を原料とし、発生したCO2を回収(50~90%)して製造した水素
- グレー水素 :化石燃料を原料とし、発生したCO2を回収せずに製造した水素
- イエロー水素:水を原料とし、原子力発電による電力を利用して製造された水素
以上のように、自動車には各種のエネルギー・燃料が使われるが、地球温暖化問題への対応を考えると、将来的には再生可能エネルギーによる電力で走る電気自動車や、グリーン水素を使う燃料電池自動車など二次エネルギーを使う自動車が主要な位置を占めることは間違いないであろう。
ところで、CO2 排出量の抑制を目的にバイオマスを原料として製造されたバイオエタノールやバイオディーゼルなどの液体バイオ燃料(Biofuel)が、従来燃料に混合されてガソリン車やディーゼル車に使用されている。低価格で供給できるようになれば、従来の内燃機関自動車の復活も夢ではない。
最近では、米国を中心にこれらのカーボンニュートラル(CN:carbon Neutrality)燃料の開発プロジェクトが増加している。米国ではガソリンに10%のバイオエタノールを混合したE10燃料、軽油に5%のバイオディーゼル燃料が混合された燃料が出回っている。
バイオ燃料製造の米国ポエットは、2021年にフリントヒルズ・リソーシズのバイオエタノール関連資産の買収を発表し、米国8州にある33工場の製造能力を合計30億ガロン/年に増強する。2018年の米国全体のバイオエタノール生産量は159億ガロン/年であり、約20%に相当する。
カナダのコブナントエナジーは、2024年稼働のバイオディーゼル工場の生産性向上に、デンマーク触媒メーカーのハルダー・トプソーの技術導入を発表している。ベンチャー企業の参入も多く、米国アメティスはカリフォルニア州の工場でバイオディーゼルや航空機燃料の生産プロジェクトを開始した。
しかしながら、残念なことに日本国内においてはバイオ燃料の研究開発・実証試験は進められているものの、現時点でバイオ燃料の供給可能量は限定的であり、輸入に頼らざるを得ないのが現状である。
コメント