電気自動車用蓄電池の供給状況(Ⅲ)

自動車

 2009年に三菱自動車は世界初の量産型BEV「アイ・ミーブ」、2010年に日産自動車は小型BEV「リーフ」、2012年にはルノーが小型BEV「ゾエ」を発売。3社連合の2016年世界シェアは18%であったが、2021年には5%に落ち込んだ。世界的なEVシフトへの乗り遅れが垣間見える。

日本メーカーの動向

 日本メーカーは、BEVの基幹部品である蓄電池は海外調達が基本であった。世界的なEVシフトで安価な蓄電池の調達がボトルネックとなり、海外メーカーでは自前生産の取り組みを急速に進めている。国内メーカーも自前生産の方針を探っているが、蓄電池工場の規模や稼働時期に遅れが見られる。

日産自動車・ルノー・三菱自動車

 2022年1月、日産自動車・フランスのルノー・三菱自動車は、2030年までのロードマップ「アライアンス2030」を発表した。世界の主要拠点で電池工場を拡充し、2030年度までに車載用蓄電池の生産能力を現在の20倍である220GWh/年、EV240万台分に引き上げると発表した。

 すなわち、2026年度までにBEVなど電動車の開発に3社合わせて230億ユーロを投じ、2030年度までに35車種のBEVを投入し、9割の車種を共通の5つの車台で生産する。さらに、EV原価の30%を占める蓄電池コストを、2026年に現在比で50%、2028年には65%削減するとした。

 また、航続距離が大幅に伸びる全固体電池を搭載したBEVに関して、日産自動車は2024年から試験生産を開始し、2028年度までに発売する。日産自動車が開発した全固体電池は3社のBEVに搭載し、量産効果でBEV価格をガソリン車並みに引き下げるとしている。

 日産自動車の蓄電池生産能力は7.5GWh/年で、出資する中国系のエンビジョンAESCグループなどと組み、日本・英国・中国で工場を新増設し、2030年に130GWh/年まで増やす計画である。

 2022年2月、日産自動車は日欧中向けガソリンエンジンの新規開発をやめる方針を固めた。2025年にも欧州で新しい排ガス規制が始まることから、欧州向けで新型エンジンの開発を中止し、中国や日本向けも段階的にやめ、BEVやHEV向けの駆動装置の開発にシフトする。

 ただし、ガソリン車自体は当面残るため、日欧中向けは新型ではなく、既存エンジンの改良で対応する。米国向けは、ピックアップトラックを中心としたガソリン車に一定の需要が見込めることから、新規開発を続けるとしている。

 2022年2月、日産自動車は、米国南部ミシシッピ州キャントン工場の一部をBEVとHEV用に改修すると発表した。2025年までに5億ドルを投じて組立ロボットなど最新設備を導入し、高級車「インフィニティ」など、普及車2車種のBEV生産ラインを稼働させる。蓄電池は電池メーカーから調達する。

 2022年9月、日産自動車はBEV蓄電池の安定供給を目指して、車載用蓄電池メーカーのビークルエナジージャパン(株)を官民ファンドの(株)INCJから買収して子会社することを発表した。

 2022年4月、日産自動車も出資するエンビジョンAESCグループは、米国テネシー州に次いで2か所目のケンタッキー州で電池工場の建設を公表した。投資金額は20億ドルで、2025年の量産開始(生産能力:30GWh/年)を目指す。高エネルギー密度の次世代LIBをメルセデス・ベンツなどへ供給する。

 中国系エンビジョンAESCグループは日米英中で車載用蓄電池工場を持ち、フランスや英国などでも新工場を建てる計画である。世界での生産能力を、2026年時点で現状比20倍である300GWh/年を目指すことを表明している。

本田技研工業

 2020年9月に北米では米国GMとBEV事業で包括提携し、他社との連携を軸にBEVシフトを加速している。また、蓄電池の日米中3市場での調達計画を明らかにしており、日本市場はエンビジョンAESC(中国)、北米市場はLG Energy Solution(韓国)、中国市場はCATL(中国)としている。

 2022年8月、韓国LGエネルギーソリューションと合弁で米国に車載電池工場を新設する方針を発表した。投資金額は44億ドルで、本田技研工業として初の電池工場である。2025年の量産開始(生産能力:約40GWh/年)を目指す。全量がEVシフトの急速に進む北米のホンダ車向けである。

 一方、次世代蓄電池の全固体電池は、2020年代後半の実用化を目指して自社開発を進めている。

トヨタ自動車

 2021年12月、2030年のEV世界販売目標を350万台に引き上げる方針を掲げ、2030年までに生産設備のみで2兆円を投資し、蓄電池の生産能力280GWh/年を確保する比亜迪(BYD)や寧徳時代新能源科技(CATL)とも協業するが、蓄電池の生産能力増強は国内外の自社グループを中心に進めている。

 実際に、2020年4月にはパナソニックと合弁会社プライム プラネット エナジー&ソリューションズ(PPES)を設立し、HEV用角形リチウムイオン電池の生産を徳島県で開始した。また、電池調達で中国CATL やBYDと提携するが、自社向け生産ラインの設備投資はトヨタ自動車が行う方針である。

 2021年12月、12億9000万ドルを投資して豊田通商と米国ノースカロライナ州に蓄電池工場を設立すると発表した。豊田通商はアルゼンチンでリチウムの権益を取得しており、プラント増強工事を進めている。生産能力はHEV向け電池で年間80万台分とした。

 2022年8月、米国ノースカロライナ州の蓄電池生産拠点であるToyota Battery Manufacturing North Carolina(TBMNC)に25億ドルを追加投資すると発表した。この投資によりEV用電池の生産能力を追加する。2025年から生産を開始し、HEVおよびEV用の蓄電池を生産する。

 また、国内でも自社工場と合弁会社PPESの姫路工場に4000億円を投資し、リチウムイオン電池生産ラインの2024年の稼働を目指す。トヨタ自動車の蓄電池生産能力は、2021年5月で6GWh/年であったが、一連の日米投資により最大40GWh/年に増強する。

 また、2020年代前半に全固体電池を搭載したHEVを発売し、2022年にも国内で全固体電池を搭載したBEVを発売する計画を示した。自動運転は、ソフトバンクグループと提携している。

スズキ自動車

 2022年3月、インドのグラチャート州にBEV向け蓄電池工場などに総額1500億円を投資すると公表した。BEV生産能力増強はSuzuki Motor Gujarat Private Limited(SMG)に約487億円を投じ、2025年の稼働、SMGに近接して蓄電池工場を建設するのに約114億円を投じ、2026年の稼働を計画する。

 また、Maruti Suzuki Toyotsu India Private Limited(MSTI)が、BEVのリサイクル工場を建設するのに約707億円を投資する。このリサイクル工場の建設は2025年の稼働を計画する。

その他

 BEVを巡っては、蓄電池と並ぶ基幹部品である駆動装置も需給が逼迫する可能性が高い。そのため、モーターやインバーターなどを組み合わせた「イーアクスル」事業に、日本電産やドイツ・ボッシュなどが参入しており、投資競争が進んでいる。

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