電動航空機の開発動向(Ⅶ)

航空機

 ジェットエンジンで水素を燃やすための燃焼器の改良、軽量・コンパクトな極低温液体水素貯蔵タンクの開発、大幅な機体の軽量化など開発課題は山積であり、航空機用水素燃焼タービンは実用化されていないのが現状である。
 JAXAは水素燃焼タービンをベースに、液体水素で冷却する超電導モーター・発電機による水素電動ジェットエンジンの設計検討を、2030年を目指して進めている。

水素燃焼タービン航空機(1)

水素燃焼タービンの開発

 1950年代末頃から、水素燃焼タービンの軍用機や民間航空機への基礎研究が始められた。本格的には1970年代に米国航空宇宙局(NASA)とロッキードが実施したもので、亜音速機と超音速機を対象とした水素燃焼タービン、液体水素燃料システム、極低温液体水素貯蔵タンクの研究が実施された。

 しかし、ジェットエンジンで水素を燃やすための燃焼器の改良、軽量・コンパクトな極低温液体水素貯蔵タンクの開発、大幅な機体の軽量化など課題山積のため、現時点で航空機用水素燃焼タービンは実用化されていない

 一方、陸上発電用タービンに関しては、水素貯蔵タンクの軽量・コンパクト化が重要ではなく、ガスタービン燃焼器の開発が行われ、天然ガス(LNG)+水素の混焼発電による実証試験が進められた。

 2014年11月、川崎重工業がドライローエミッション(DLE:Dry Low Emission)燃焼器を開発して、水素ガス混焼ガスタービン(出力:3万kW級)の商品化を発表した。現在、水素ガス100%で発電可能な自家発用水素燃焼ガスタービン(出力:7000kW級)の実用化を進めている。
 2021年12月には、ドイツRWE Generationと水素専焼ガスタービンの発電実証を共同で進めることに合意した。

 三菱重工業は、石炭ガス化複合発電(IGCC)用に開発したマルチクラスタ燃焼器に改良を加え、分散混合方式を採用することで、水素専焼ガスタービンを2030年までに実用化することを公表している。   
 2020年3月、米国ユタ州のインターマウンテン電力が計画するLNG焚ガスタービン(出力:84万kW級)を受注し、2025年の稼働時点では水素ガス30%の混焼発電、2045年までに水素ガス100%の専焼発電を目指している。

 ところで、2020年4月、エアバスはE-Fan Xと呼ばれるハイブリッド航空機の事業化計画を破棄すると発表した。その後、2020年9月には、2035 年までに水素燃焼タービン航空機の事業化を目指すと発表した。
 エアバスはハイブリッド航空機の実現をみることなく、脱炭素社会の実現に向けて水素燃焼航空機の開発に舵を切ったのである。その後、水素燃焼タービン航空機や極低温液体水素貯蔵タンクなどの開発が活発化しているのが現状である。

水素燃焼タービン航空機の開発課題

 現在の大型旅客機が退役し始める2030年代以降を見据えて、米欧を中心に航空機の脱炭素化の研究開発が活発化しており、CO2を排出しない水素燃焼タービン航空機が主流となる可能性がある。

 日本は中核技術を確保して航空産業の国際競争力を高めるため、2020年2月、文部科学省とJAXAが、2022年度から液体水素を燃料に使う次世代航空機エンジンの開発に乗り出すことを公表した。

 JAXAはロケット燃料として液体水素を扱っており、その経験を生かして①低NOx燃焼技術、②極低温燃料貯蔵技術、③極低温燃料供給技術などの研究開発を2030年度まで進め、開発した技術を国内のエンジンメーカーなどに移転する計画を示した。

 具体的には、水素燃焼タービンをベースに、液体水素で冷却する超電導モーター・発電機による「水素電動ジェットエンジン」の設計検討を実施する。また、液体水素電動ポンプを実用化し、液体水素タンクのCFRP化を進めることで、タンク圧力を3気圧程度に高め、大幅な軽量化を目指している。

図24 JAXAの示す水素航空機の技術課題

 以下には、①低NOx燃焼技術、②極低温燃料貯蔵技術、③極低温燃料供給技術に関する具体的な開発課題をまとめる。

①低NOx燃焼技術
 水素燃焼の最大の特徴は、使用時にCO2を排出しないという利点である。しかし、水素は燃焼速度が速いために逆火が生じやすく、この現象を防ぐため燃焼器の燃料ノズルの改良が必須である。
 また、水素の質量エネルギー密度は従来のジェット燃料の約3 倍であるため、空気燃焼させると高温となるため窒素酸化物(NOx)の発生が問題で、燃焼器の温度を抑制管理する必要がある。
②極低温燃料貯蔵技術
 体積エネルギー密度が従来のジェット燃料の約1/4と低い液体水素燃料(-253 ℃)を貯蔵するためには、軽量・コンパクトな極低温タンクの開発は重要である。長距離輸送を目指す旅客機ではタンクが大型化し、機体形状にも大きな影響を与える。
 そのため、従来のアルミニウム合金製タンクから高強度の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製タンクへの変更が有望視されている。
③極低温燃料供給技術
 極低温の液体水素タンクから燃焼器に高圧水素ガス供給する際に、相変化の問題がある。すなわち、気液混合の2相流によるキャビテーション対策などが必要となり、超臨界流として供給する際の制御技術が重要なため長期間の実証試験が重要である。
 燃料供給システムに使われるバルブ類、流量制御装置、配管などの継ぎ目のシール部からの水素ガスの漏れ防止対策が重要となる。金属材料の水素脆化は、過去に重大事故を引き起こしている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました