バイオジェット燃料(SAF)の課題

航空機

 現在、市販されているバイオジェット燃料の価格は、従来の石油由来燃料の約2倍といわれている。航空機事業において燃料費の占める割合は20%以上であり、バイオジェト燃料の導入は運航費の上昇に大きな影響を与える。
 そのため各航空会社は積極的にバイオジェット燃料を導入するためのインフラ投資を進める一方で、低コスト化に向けて燃料メーカーへの投資を進めている。これは多くの燃料メーカーがスタートアップ企業であるため、経済的支援を必要としていることが主な原因である。
 燃料メーカーは製造規模のスケールアップによる需要に応じた供給能力の増強と、プロセスの合理化による低コスト化とが必須課題であり、法整備や補助金など政府からの様々な支援が必要である。
・航空機国際共同開発促進基金 、http://iadf.or.jp/document/pdf/r1-2.pdf

 一方で、国際民間航空機関(ICAO)では、バイオジェット燃料の各種原料や製造法に関して基準を設定し、エネルギー収支や 温室効果ガス排出量、環境影響評価などのスコア化を進めている。
・航空機国際共同開発促進基金 、http://iadf.or.jp/document/pdf/21-5.pdf

 本来、化石燃料を原料としないカーボンニュートラル(Carbon Neutral)の考えに沿った代替燃料として、動植物由来のバイオジェット燃料に期待が集まっているのである。現在のバイオジェット燃料の製造工程では、多くの電力と水素化処理用の水素を必要とする。
 化石燃料を用いた火力発電による電力や、化石燃料を改質して得られた水素を利用する場合には、カーボンニュートラルは成立しない。すなわち、バイオジェット燃料の原料だけではなく、製造・使用プロセスも考慮したライフサイクル評価(LCA:Life Cycle Assessment)が重要と考えられている。
・ICAO、CORSIA SUPPORTING DOCUMENT : CORSIA Eligible Fuels – Life Cycle Assessment Methodology、2019

 LCA評価の結果、バイオジェット燃料は化石燃料由来のジェット燃料よりも、CO2排出量抑制の観点から優位でなければならない。そのためには、バイオジェット燃料の製造工程において、再生可能エネルギーで得られた電力やグリーン水素の供給が重要であることはいうまでもない。

 ところで、廃食用油の世界需要は、ジェット燃料の代替となるSAF向けが牽引すると考えられている。航空輸送アクショングループ(ATAG)によれば、2030年のSAF流通量は世界のジェット燃料の2.5~6.5%と2020年の0.03%に比べ拡大すると予想されている。
 国土交通省は2030年にジェット燃料の10%をSAFにする方針を示している。定期便を運航している航空会社の2019年の燃料消費量は約1000万kLであり、少なくとも約100万kLのSAFが必要になる。そのため家畜のエサや使用済み揚げ油など廃食用油の需要が高まり、価格上昇が顕著となっている。

 貿易統計によると日本の廃食用油(食用に適しない調製品など含む)の輸出量は6年連続で前年を上回り、2021年の輸出量は10万トンを超えている。全国油脂事業協同組合連合会によると、国内生産量は年間50万トン程度であり、約20%が輸出されていることになる。
 輸出価格は2022年1~4月累計で144円/kgと前年同期に比べ70%上昇した。今後、廃食用油の奪い合いに発展する可能性もあり、畜産業にも影響を与え食料の価格上昇にを招き始めており、政府による規制が必要になる。

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