欧米で進むバイオジェット燃料の規格化

航空機

 民間航空機用ジェットエンジンに使われているジェット燃料については、米国試験材料協会(ASTM International:American Society for Testing and Materials)によるASTM D-1655などでJet-A/A1燃料として規格が定められている。

 民間航空機用のジェット燃料は主にケロシンから成り、軽油とガソリンの間の留分として精製され、灯油と似た性状を持つ。航空機の排ガスには窒素酸化物(NOx)などの環境に悪影響を及ぼす成分が含まれており、ICAOではNOx などのエンジン排気、エンジンなどに起因する騒音の規制を定めている。    
 最近では、世界的な脱炭素の潮流を受けて、CO2排出量削減に向けた規制が厳しさを増している。 

表1 ジェット燃料のASTM規格とバイオジェット燃料(SPK)と水素燃料の特性比較

 表1で示したように、航空機用ジェット燃料のASTM規格は石油由来であることを前提条件とし、粘度、密度、引火点、氷点、発熱量、硫黄分、芳香族成分などの項目で構成されている。当然のことであるが、代替燃料に対しても同様の基準が適用されている。

 例えば、-50℃でも凍結しない耐低温性高温での熱安定性、単位重量当たりの発熱量が一定範囲内にあることなどである。表1には検証に用いられた各種のバイオジェット燃料の特性値を示すが、いずれもジェット燃料のASTM D-1655規格値を十分に満たしている。
・(公財)航空機国際共同開発促進基金 、http://iadf.or.jp/document/pdf/21-5.pd 
・Bio-Derived Synthetic Paraffinic Kerosene (Bio-SPK) Jet Fuel Flights and Engine Tests Program Results、AIAA 2009-7002、9th AIAA Aviation Technology, Integration and Operations Conference (ATIO) (2009).

 また、従来のジェット燃料は原油を精製して造られるが、それ以外の方法で造られる代替燃料についても、原料と製造方法について規格化が進められている。

 2009 年には、FT法により合成された石炭由来燃料(CTL:Coal to Liquid)、天然ガス由来燃料(GTL:Gas to Liquid)の50%混合燃料がASTM D7566で承認された。
 また、2011 年にはバイオ合成パラフィンケロシン(Bio SPK:Bio Synthetic Paraffin Kerosene)の50%混合燃料がASTM D7566に追加承認された。
 2014年には、糖質由来燃料(DSHC:Direct Sugar to Hydrocarbon) の10%混合燃料が承認された。また、2020年には、(株)IHIが日本法人として初となる微細藻類由来のバイオジェット燃料がASTM D7566で承認された。
 表2には、現在までにASTM D7566に認証されたバイオジェット燃料の規格を示す。
・(公財)航空機国際共同開発促進基金、http://iadf.or.jp/document/pdf/r1-2.pdf

表2 ASTM D7566に承認された各種のバイオジェット燃料

 このASTM D7566規格認証を受けると、現在のジェット燃料の規格であるASTM D1655の要件を満たすものと見なされ、代替燃料として規格面では民間航空機でいつでも使用可能となる。すなわち、エンジンや機体の改変を要しない、Drop-in Fuel として導入することができる。
 ただし、現時点では石油由来のジェット燃料と混合して使用することが義務付けられている。すなわち、ASTM D7566では、種別にブレンド率が 10~50%の範囲で規定されている。

 現時点で、バイオジェット燃料は生産規模の拡大や価格競争力の強化などの課題を有しており、実用化を加速すべく研究開発が進められている段階にある。そのため、バイオジェット燃料は未だ安全実績を積み上げる段階にあり、将来的にはバイオジェット燃料100%による飛行を目指している。
 既に、数社の航空会社による試験飛行で、バイオジェット燃料100%による飛行を成功させている。
・定期航空協会、https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/biojet/pdf/001_02_00.pdf

 航空機メーカーはバイオジェット燃料の普及促進に積極的に関わっている。米国Boeing(ボーイング)はバイオジェット燃料の開発初期からデモフライトに積極的に参画し、2018 年には100%での試験飛行に成功している。また、HEFA-SPKのASTM規格認証を主導するなど燃料開発にも関与している。

 欧州Airbus(エアバス)も積極的にバイオジェット燃料の普及に加わり、SIP の ASTM 規格認証を主導している。同社から航空会社への機体引き渡し時の飛行に際して、航空会社がバイオ燃料の搭載を選択できるサービスを提供しており、ボーイングもこのサービスに追随して実施している。
・(公財)航空機国際共同開発促進基金、http://iadf.or.jp/document/pdf/21-5.pdf

 国内では、2021年には全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)が、国産の持続可能なSAFを従来のジェット燃料に混合し、定期便によるフライトを実施している。
 ANAはIHIから供給された微細藻類を原料とするSAFを使用し、JALはIHIから供給された微細藻類を原料とするSAFと、三菱パワー(株)、(株)JERA、東洋エンジニアリング(株)から供給された木くずを原料とするSAFの2種類を使用している。

 伊藤忠商事は、2020年から全日本空輸(ANA)、フィンランドのNeste OYJ(NESTE)と共同で、SAFの輸入・品質管理から空港搬入までの国内サプライチェーンを構築している。
 2022年2月には、NESTEが生産するSAFの日本市場向け独占販売契約を締結し、2022年5月には成田国際空港で、アラブ首長国連邦(UAE)の国営航空会社Etihad Airways PJSC(エティハド航空)に対して、日本を発着する海外航空会社として初めてSAFを供給すると発表してる。

 NESTEはSAF供給の世界展開を拡大しており、シンガポール工場とオランダ工場の改修により、2023年末までに全世界で年産150万トンが見込まれている。

 

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