日本は2030年度において温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指し、さらに50%に向けて挑戦することを表明した。2013年度のCO2排出量は12.35億トンであり、46%削減の目標値は6.67億トン、50%削減の目標値は6,18億トンである。
一方、2023年度の「エネルギー起源CO2排出量」は、前年度比4.8%減少し、2013年度比で25.9%減少となる9.2億トンとなり、1990年度以降の最小を更新した。
エネルギー起源のCO2排出状況
国内のCO2排出量
現在、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大以前のCO2排出傾向に戻りつつある。2023年度のCO2排出量は前年度比4.8%減少し、2013年度比で25.9%減少となる9.2億トンとなり、1990年度以降の最小を更新した。2030年の目標である6.67億トンに向け、今後も継続的にCO2排出量を低減する必要がある。
部門別の内訳は、企業・事業所他部門が前年度比5.6%減少して4.99億トン、家庭部門が7.8%減少して1.46億トン、運輸部門が0.8%減少して1.9億トン、エネルギー転換部門が2.8%減少して0.8億トンである。
企業・事業所他部門のCO2排出量の削減は順調に進んでいるが、家庭部門、運輸部門、エネルギー転換部門はより一層の削減努力が必要である。


2024年12月、政府は、2026年度に本格導入する排出量取引制度の参加企業に、CO2排出削減目標の策定と公開を義務づける方針を固めた。目標を策定しない企業には罰則を科す方向で、2025年の通常国会に提出する関連法の改正案に盛り込む。目標は政府が公表し、外部から監視できるようにする。
参加企業は国内のCO2排出量が10万トン/年を超える300~400社で、国内排出量の約6割をカバーする。政府が毎年度、各社にCO2排出上限の枠を割り当て、排出量の実績が枠を超えた企業は取引市場で枠を購入する。排出量が枠より少なければ、余った枠を市場で売却できる。排出実績は第三者機関が認証する。
CO2排出量の低減に向けて
■温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、2021年に第6次エネルギー基本計画で2030年度の電源構成の目標値を閣議決定された。
火力発電を(天然ガス20%、石炭19%、石油2%)を低減し、再生可能エネルギーを36~38%(太陽光14~16%、風力5%、地熱1%、水力11%、バイオマス5%)、原子力を20~22%に増強する。
■2024年12月、2025年3月までの閣議決定をめざし第7次エネルギー基本計画の概要が報道され、2040年の電源構成の目標値が示された。
火力発電を30~40%に低減し、再生可能エネルギーを40~50%(太陽光22~29%、風力4~8%、地熱1~2%、水力8~10%、バイオマス5~6%)、原子力を20%に増強する。
2023年度の火力発電のシェアは68.6%と依然として高止まりしている。火力発電所の休廃止はCO2排出量削減に直接効いてくるため、2030年度の目標シェア41%に向けた具体的な施策が必要である。
また、CO2を排出しない再生可能エネルギーの増強は不可欠である。しかし、2023年度における再生可能エネルギー発電のシェアは22.9%に留まっている。2022年の主要国電源別発電電力量の構成比を見ると、ドイツ、イタリア、英国、中国などと比較して、日本はまだまだ低いのが現状である。

2023年度の太陽光発電のシェアが9.8%で風力発電のシェアが1.1%と目標には程遠いのが現状である。共に出力変動が顕著なため、現状は火力発電による出力平準化を行っているが、本格的な太陽光・風力発電の導入拡大には電力貯蔵システムの設置が不可欠である。
また、出力変動がない地熱発電のシェアが0.35%、バイオマス発電が4.1%と低調であるため、増強の具体的な施策が必要である。
一方、2023年度の原子力発電のシェアは8.5%と増加したが、目標には程遠い。2024年12月、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、「可能な限り原発依存度を低減する」方針から、「最大限活用する」と方針を見直すことが報道された。
今後、閣議決定が行われる第7次エネルギー基本計画に基づいて、原子力発電所の再稼働ならびに稼働率の向上、安全性を高めた次世代新型炉への建て替えも進められる。
2022年までの電力ひっ迫による節電要請は、政府の長期エネルギー政策の見通しの甘さによるものである。ロシアのウクライナ侵攻による燃料高騰や混乱が続く中東情勢から、今後もエネルギー需給動向は厳しさを増す方向にある。目標設定だけの成り行き任せではなく、より緻密で高精度なエネルギー政策が求められる。
コメント