国際原子力機関(IAEA)の定義による電気出力:30万kWe以下の小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が、世界で注目を集めている。小型高速炉、小型軽水炉、小型高温ガス炉など様々な炉型がSMRと呼ばれているが、モジュール化により工場内で組み立て、ユニットとして輸送・設置する炉の総称である。
米国(2)
ナノ・ニュークリア・エナジーの小型高温ガス炉「KRONOS MMR」
ウルトラセーフニュークリア(USNC)は小型モジュール式高温ガス炉「MMR(Micro Modular Reactor)」(熱出力:1.5万kW、電気出力:0.5万kWe)を開発中であった。用途に応じて電力と高温熱(炉心出口温度:630℃)の供給を可能とし、TRISO燃料に用いて20年間にわたり燃料交換の必要がない。
一次冷却材にヘリウムガス、外部電源や人為的な介入なしに作動する重力駆動冷却システムや、事故時に放射性物質の放出を防ぐ格納システムなどの受動的安全システムが組み込まれている。しかし、2025年1月、ナノ・ニュークリア・エナジーに買収され事業は引き継がれた。
2020年12月、米国原子力規制委員会(NRC)が、USNCの「MMR」の設計認証申請を承認した。2021年6月、開発したイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)が学内で将来的に「MMR」を建設するため、NRCに意向表明書(LOI)を提出している。
一方、2019年3月、カナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)とUSNCの合弁企業であるグローバル・ファースト・パワー(GFP)が、カナダ原子力研究所(CNL)チョークリバー・サイトにおける「MMR」の初号機建設に関して、カナダ原子力安全委員会(CNSC)にサイト準備許可(LTPS)を申請した。
2022年8月、USNCは、「MMR」用の燃料であるTRISO燃料粒子とセラミック・マイクロカプセル(FCM)燃料のパイロット製造施設を、テネシー州オークリッジで開所した。
1960年代に米国と英国で開発されたTRISO燃料粒子は、ウラン酸化物の核に黒鉛やセラミックスを4重に被覆しているが、2000年以降にDOE傘下の国立研究所が改良を重ねた結果、USNCが特許を持つ「FCM燃料」は黒鉛マトリックスの代わりに炭化ケイ素(SiC)マトリックスを使用する。

2025年1月、ナノ・ニュークリア・エナジー(NANO Nuclear Energy)、USNCから買収したモジュール式マイクロ炉を「KRONOS MMR」に名称変更。0.02㎢未満のコンパクトな設置面積で、最大出力:4.5万kW(1.5万kWe)、低濃縮ウラン(LEU)やHALEU燃料を使用する。
「KRONOS MMR」は、NANO社で進めてきた可搬型マイクロ炉「ZEUS(ゼウス)」ならびに「ODIN(オーディン)」(非軽水炉型、熱出力:1000~1500万kW)の開発で確立した技術基盤を強化・補完する。
また、併せて取得した可搬型高温ガス冷却マイクロ炉「Pylon」を「LOKI MMR」に名称変更。出力:100kWe~3000kWeまで出力調整が可能で、長期的な宇宙探査への原子力利用の取組みをめざす。2027年までに米アイダホ国立研究所(INL)内での実証用テストベッドで「LOKI MMR」の試運転をめざす。
2026年1月、ナノ・ニュークリア・エナジーは、韓国のダンソク(DS Dansuk)と、MMRを韓国における開発、現地化、展開協力に関するMOUを締結した。ダンソクは主要な現地産業コーディネーターとして、サイト選定、サプライチェーンの現地化、規制・制度面における関係者との連携を支援する。
運転員の介入や外部電源なしに自動停止し安全状態を維持する「walk-away safe設計」を特徴とし、停電時にも独立して稼働可能な完全自律マイクログリッド機能の確立をめざす。一方、韓国では工場や産業施設にマイクロ炉を併設し、電力網に負担をかけない「ワン・ファクトリー、ワンMMR」構想を進めている。
2026年6月、マイクロ炉「KRONOS MMR」について、米国原子力規制委員会(NRC)が建設許可申請(CPA)を受理した。建設サイトはイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で、「KRONOS MMR」を研究炉として導入する。今後、NRCによる本格的な審査段階へ移行する。
ナノ社は審査が2027年中に完了し、早ければ、2027年後半に建設を開始する見通しを示している。
BWXテクノロジーズの小型高温ガス炉「BANR」
米国防総省(DOD)は「プロジェクトPele」による先進的な可搬式超小型炉(マイクロリアクター)の実証に向け、X-エナジーと共にBWX Technologies(BWXT)を選定した。米国航空宇宙局(NASA)も月面での原子炉設置に向けて設計案を募るなど、マイクロリアクターの活用範囲が広がりつつある。
2022年6月、DODが「プロジェクトPele」で、小型高温ガス炉「BANR」(熱出力:5万kW、電気出力:1000~5000kWe、炉心出口温度:800℃)を選定した。2024年までにアイダホ国立研究所内に設置し、HALEU燃料のTRISO燃料粒子を使用する。燃料の交換間隔は5年を想定する。
2022年12月、BWXTはDODが軍事用に建設計画を進めている米国初の可搬式マイクロ原子炉用の燃料として、TRISOの製造をバージニア州リンチバーグの施設で開始した。HALEU燃料を3重に被覆した粒子燃料であるTRISO燃料を、DOEは高温に耐えて腐食に強い堅牢な核燃料と高く評価している。
原型炉は、市販の輸送用コンテナを使い、鉄道やトラック、船舶、航空機等で安全かつ速やかに運搬するため、長さ約6mの機器を内蔵した複数モジュールでの構成とする。組立開始から72時間以内に稼働でき、撤収では7日以内の停止後に冷却・接続切断・分解・輸送機器への積載を可能にする。
2024年6月、BWXTとワイオミング州は、2023年からマイクロ原子炉「BANR」(HTGR、1000~5000kWe)の建設の実行可能性を検討中で、新たな契約を締結した。7月にはBWXTがBANRの設計、システム開発および周辺機器などで、カンザス州の建設会社バーンズ&マクドネルと協力協定を締結した。
一方、米国最大のウラン埋蔵量を有するワイオミング州エネルギー公社は、TRISO燃料製造施設の立地評価に向けて、子会社BWXTアドバンスド・テクノロジーズと協力協定を締結。今後約1年半で、州内の建設候補地や施設の設計、コスト、人材、サプライチェーン、許認可などの観点から、立地評価を実施する。
2025年7月、BWXTはバージニア州リンチバーグのAdvanced Technologies施設で、TRISO燃料を製造するためのCVD炉を設置・試験したことを発表した。

Valar Atomicsのマイクロ高温ガス炉「Ward 250」
2026年2月、米戦争省(国防総省)とエネルギー省(DOE)は、試験用マイクロ炉「Ward 250(燃料未装荷)」を米空軍のC-17グローブマスターIII機に搭載し、カリフォルニア州のマーチ空軍予備役基地からユタ州のヒル空軍基地に輸送し、サン・ラファエル・エネルギー研究所(USREL)へ運搬した。
「Ward 250」は、ヘリウム冷却、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料の高温ガス炉(出力:0.5万kW)のマイクロ炉で、軍独自のエネルギーインフラを整備するための試験・評価が行われる。
テラパワーとGE日立・ニュクリアエナジーの高速炉「Natrium」
高速炉に関しては、1951年12月に米国で世界初となる高速実験炉EBR-1(出力:100kWe)が稼働した。その後、原型炉「CRBR」の設計・製作が進められたが、建設費高騰で計画が中止された。1978年10月、実証炉の設計研究が開始されたが、その後の進捗はなく米国は高速炉開発から撤退した。
2019年6月、GE日立・ニュクリアエナジーが、小型モジュール式高速炉「PRISM」をベースに設計したナトリウム冷却高速炉「多目的試験炉(VTR:Versatile Test Reactor)」の建設で、日米政府間で研究協力の覚書を締結し、安全に関する研究開発などの協力が進められた。
TerraPower(テラパワー)とGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)は、小型モジュール式高速炉「PRISM」を基に「Natrium」(出力:34.5万kWe、炉心出口温度:540℃)の共同開発をめざす。テラパワー開発の溶融塩蓄熱システム(容量:100万kWh)と組み合わせ、ピーク時出力:50万kW×5.5時間以上稼働する。
現在、急速に普及している再生可能エネルギーの出力変動を、「Natrium」で調整するのが狙いである。
2020年8月、テラパワーとGEHは、商業用発電・エネルギー貯蔵システムの開発を発表。原子炉を小型化し、非原子力の機械・電気機器を原子炉建屋外に設置、設備の大半を原子力グレード規格から一般的な工業規格に変更するなどの低コスト化を進め、2028年の実用化をめざす。
2021年11月、実証炉「Natrium」(出力:34.5万kWe)をワイオミング州ケンメラーの石炭火力発電所跡地に建設することで、西部6州に電力を供給するパシフィコープと合意し、2024年3月に建設を開始した。また、2023年3月、パシフィコープは2033年までに、さらに2基の「Natrium」をユタ州で建設すると公表した。
一方、2022年1月には、「Natrium」開発を進めているテラパワーと、日本原子力研究開発機構、三菱重工業、三菱 FBR システムズは技術協力で合意した。
2026年1月にはIT大手のMetaと、2035年までに最大8基の導入に向けた開発支援契約を締結。また2026年2月、英国における包括的設計審査(GDA)が開始され海外展開も進みつつある。
2026年3月、米原子力規制委員会(NRC)は、テラパワーが西部ワイオミング州で計画し、日本の企業なども技術協力する次世代高速炉「Natrium」(出力:34.5万kWe)の建設を許可した。傘下のUS SFR Owner(USO)に対する発給で「ケンメラー発電所1号機」を、日米連携で2030年頃の運転開始をめざす。
2024年3月にNRCに建設許可申請を提出し、2025年5月のトランプ大統領令で認可手続きを短縮化し、建設審査は18か月未満で完了。今後、運転認可申請とNRCによる承認が必要である。
「Natrium」は、必要に応じて最大50.0万kWeまで出力を高める熔融塩を用いたエネルギー貯蔵システムを備えている。2025年10月、英国の安全・環境基準への適合性を確認する包括的設計審査(GDA)に申請し、2026年2月に英政府が受理している。
2026年4月、ワイオミング州ケンメラーで先進炉「Natrium」の原子炉部の建設を開始した。米国で実用規模の高速炉が初めて建設段階に入る。再生可能エネルギーの変動を補完する柔軟な電源として位置づけられ、エンジニアリング・調達・建設(EPC)はBechtelが担当する。
原子炉建屋基礎への初コンクリート打設は2027年を予定し、全体の完成は2030年を見込む。同プロジェクトは2024年6月に起工式が行われ、原子炉以外の建設が先行して進められていた。
2026年6月、米テラパワーは開発するNatrium炉および併設するエネルギー貯蔵プラントの迅速な商用化と展開に向けて、韓国のHD現代ならびにHD現代建設(HDEC)と契約を締結。HD現代との供給枠組み契約では、傘下のHD現代重工業(HHI)をNatrium炉の原子炉格納構造物(RES)の優先製造者に指定した。
HD現代に加え国内外で大型炉の豊富な建設実績を有するHDECを含む3者間契約を締結し、Natrium炉の複数炉展開、製造、サプライチェーン、建設、事業スキームの構築を含む包括的な協力を進める。

出典:テラパワー

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