国内原子炉メーカーである日立GEニュークリア・エナジーは「BWRX-300」、三菱重工業は多目的軽水小型炉(PWR)と、いずれも早期に市場投入が可能な軽水炉タイプの小型モジュール炉(SMR)の概念設計を進め、海外市場をめざしているのが現状である。
近い将来に標準化されたSMRが大量生産され、国内に広がる可能性は極めて低いと考えられる。
小型軽水炉「SMR」のまとめ
国内では、福島第一原発事故を教訓に、安全性を高めた大型商用炉である「革新軽水炉」の開発をめざした。しかし、海外では安全性と経済性を両立させた「小型モジュール炉」に注目が集まっており、スタートアップを含む多くの原子炉メーカーが小型軽水炉「SMR」の開発を進めている。
「ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機」が叫ばれる一方で、「世界的なインフレによる物価高」が進む現状では、稼働までに長期間を要する大規模原子力発電所の建設は発電事業者・供給メーカーともにリスクが高い。海外で低コスト・短納期のSMRに注目が集まるのは当然である。
一方、国内原子炉メーカーである日立GEベルノバニュークリアエナジーは「BWRX-300」、三菱重工業は多目的軽水小型炉(PWR)と、いずれも早期に市場投入が可能な軽水炉タイプの小型モジュール炉(SMR)の開発を進めているが、いずれも海外市場をめざしている。
近い将来に標準化されたSMRが大量生産され、国内に広がる可能性は極めて低いと考えている。
実際、日本原子力研究開発機構(JAEA)は期待が先行するSMRの課題として、経済性、安全基準、サプライチェーンの構築を示している。このSMRには小型軽水炉と新型炉の両方が含まれている。
①経済性:
従来のスケールメリット(大型化)によるコスト削減の方向に反している。将来的に各メーカーが炉型を集約して標準化・量産化を進め、大量生産しなければコストダウンが難しい。
②安全基準:
軽水炉タイプのSMRには従来の安全基準の適用が基本的に可能と考えられるが、高温ガス炉や高速炉タイプのSMRは安全基準が確立されるまで許認可に時間を要し、開発期間が長引く。
③サプライチェーンの構築:
軽水炉タイプのSMR以外は、既存の軽水炉と異なる新たなサプライチェーンの構築が必要となる。
小型化することで基本的に安全性が担保されると考えると、大量生産によるSMRの低コスト化が必須課題である。今後、経済性の評価が小型軽水炉実現の可能性を決める。一方で、実績のない新型炉SMRでは、実証炉による製造・建設・運転・管理の確認が不可欠となる。
既に、2023年11月、小型軽水炉で先行する米国ニュースケール・パワーは、西部アイダホ州で2029年稼働を計画していた6基のSMR建設中止を発表した。原因は、経済性が見込めないためとしている。
政府は2030年の電源構成に占める原子力の割合について、20~22%を目指すとしている。これは大型軽水炉(出力:120万kW)の27基分に相当する。
国内電力会社は既存原発の再稼働・運転延長を指向しており、安全性を強化した「革新軽水炉」への建て替え時期すら見通せないのが現状である。従来、発電単価を抑えるために大型化を進めてきた軽水炉開発の経緯を考えると、国内ではあえて「小型軽水炉(SMR)」を多数新設することのメリットは考えられない。

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