間違った小型モジュール炉への期待(Ⅳ)

原子力

 世界的にみて、SMRの開発で先行しているのは米国ニュースケール・パワーの「VOYGR」GEベルノバ日立ニュークリアエナジーの「BWRX-300」である。一応、国内原発メーカーである三菱重工業も「多目的軽水小型炉」の開発を進めている。  
 ここでは、三菱重工業の進めている「多目的軽水小型炉」の開発状況を観てみる。

三菱重工業の多目的小型軽水炉

多目的小型軽水炉の開発状況

 三菱重工業の小型原子炉の開発は、1969年に進水した原子力船「むつ」の動力炉(出力:3.6万kW)に始まり、2000年代にはポンプを使わない自然冷却型の小型一体型モジュラー炉「IMR(出力:30万kW)の開発に着手している。

 得られた知見をベースに、2020年12月には脱炭素電源として多目的に使える一体型小型原子炉の概念設計の完了を発表した。
 原子炉容器内に主要機器を統合して小型化を実現し、分散電源向けの発電用炉(出力:30万kW級)、離島向けモバイル電源や災害時の非常用電源向けの船舶搭載炉(3万kW級)への展開をめざす。

 現在は、2040 年代の小型軽水炉実用化をめざし、小型原子炉(電気出力:30万kW級)のプラントに求められる開発コンセプトを次のように示している。

■ より高い安全性の確保:出力規模が小さいことによる固有の安全性にプラス
 冷却材喪失等の事故要因を排除する一体型原子炉を採用し、原子炉建屋等の重要設備の地下立地による航空機衝突防護、原子炉建屋の放射性物質閉じ込め機能強化等の対策。
■高い立地自由度の実現:新興国や送電網が整備されていない地域、離島、災害地など
 事故時の重力注水等の自然力を利用した静的安全システムの導入に加え、最終ヒートシンクを空冷とすることで海水系統を不要とし、内陸部も含む立地自由度の高いプラントを実現する。
■高い経済性の実現:モジュール設計の採用による工場製作と現地建設工事の短縮など
 小型原子炉ほどスケールメリットが低下するが、動的機器の削減、環境負荷の低減、先進建設工法の適用、工期短縮のメリットを活かして競争力のある経済性をめざす。

図1 PWRで培った技術をベースにした多目的小型軽水炉  出典:三菱重工業

 2021年6月、国内電力会社大手とPWR型の多目的小型軽水炉(出力:30万kW)の概念設計に入ると報じられた。一次冷却材管や1次系主要機器(蒸気発生器、一次冷却材ポンプ、加圧器など)を原子炉容器内に収めた一体型で、 2040年頃の市場投入を目指し建設費は2000億円/台としている。

 2024年4月、三菱重工技報で、「カーボンニュートラル社会に向けた多様なニーズに応える小型軽水炉開発」を発表し、高い安全性を有する発電用小型軽水炉のコンセプトや技術的特徴、更に関連技術について紹介している。

多目的小型軽水炉の安全対策

 従来のPWR の1次冷却材ループ(大口径配管)及び1次系の主要な機器(蒸気発生器や1次冷却材ポンプ、加圧器など)を原子炉容器内に統合した「一体型原子炉」を採用する。これにより大口径配管が不要となり、1次冷却材配管が破断することによる冷却材喪失の事故発生リスクを排除する。

 原子炉内の冷却材の温度差(水の密度は約4℃で最大となり高温ほど軽くなる)を利用して一次冷却材を自然循環させることでポンプを不要とし、電源喪失による事故発生を原理的に排除する。すなわち、事故時に動的機器を使用しないパッシブ(静的)安全システムの採用で、安全性を向上させる。
 パッシブSG冷却システムは、蒸気発生器(SG)と冷却タンク内に水没させた静的SG冷却器を配管でつなぎ、事故時に温度差による冷却材の自然循環でSGを冷却する。冷却タンク水が空になると空冷用風路が形成され、長期にわたり空気により冷却する。
 パッシブ炉心注水冷却システムは、冷却水を予めプラント内に蓄えておき、原子炉容器や炉心内部を冷却し破損を防止する。

 また、原子炉建屋を密閉した地下立地とし、航空機衝突などの外部ハザードへの耐性強化を図り、高強度鋼板とコンクリートによる二重格納構造により放射性物質の閉じ込め機能を強化する。
 津波対策としてドライサイト化(基準津波高さよりも高い敷地レベルを設定)や外部障壁など、適用する敷地条件に応じて選択可能である。

図2 三菱重工業の多目的小型軽水炉の安全対策  出典:三菱重工業

コメント

タイトルとURLをコピーしました