世界的にみて、SMRの開発で先行しているのは米国ニュースケール・パワーの「VOYGR」とGEベルノバ日立ニュークリアエナジーの「BWRX-300」である。一応、国内原発メーカーである三菱重工業も「多目的軽水小型炉」の開発を進めている。
ところで、韓国のSMRビジネスの進め方は、日本政府にも大変に参考になる。
韓国水力・原子力の「i-SMR」
小型軽水炉「i-SMR」の開発動向

2023年に国家研究開発プロジェクトに位置付けられ、韓国政府のバックアップで「i-SMR開発機構」が発足し、韓国原子力研究院(KAERI)のほか、韓国電力技術(KEPCO E&C)、韓電原子力燃料(KNF)や斗山エナビリティなど、韓国の主要原子力関連企業がプロジェクトに参加する。
KHNPは、2023年末には概念設計と基本設計を終了し、2025年末までに「標準設計(SD)」を完成させ、2028年に「標準設計承認(SDA)」の取得をめざしている。
「i-SMR」のベースは、韓国原子力研究院(KAERI)が開発したSMART炉(System-integrated Modular Reactor)であり、事故時に運転員の操作や電力供給なしで、原子炉を安全に停止する受動的安全性を備え、モジュール化による工期短縮、運転システムの自動化による省人化などを特徴としている。
2023年7月、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、次世代小型モジュール炉(SMR)の市場を韓国が主導するため、「SMRアライアンス」を発足させる。
MOTIEや韓国水力・原子力会社(KHNP)、エネルギー経済研究院など11の政府・公共機関のほか、サムスンC&T社(サムスン物産)、大宇E&C社(大宇建設)、斗山エナビリティ社、GSエナジー社などの31社が参画する。
2023年12月、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の会期中に、インドネシアの電力会社ヌサンタラ・パワー(PLN NP)と共同基礎研究の実施、ヨルダン原子力委員会(JAEC)と共同でフィージビリティ・スタディ(FS)のMOUを締結する。
2024年4月、KHNPは、「i-SMR」と再エネを組み合わせ、エネルギーの安定供給とCO2排出ネットゼロを実現する都市構想「スマートネットゼロシティ(SSNC)」を発表し、国内の慶山市や大邱広域市と「i-SMR」建設に向けフィージビリティ・スタディを含むMOUを締結している。
2025年1月、KHNPは、ノルウェー新興エネルギー企業のノルスク・シャーナクラフト(Norsk Kjernekraft)と、スェーデンのプロジェクト開発企業のシャーンフル・ネキスト(KNXT)と、業務提携の了解覚書(MOU)を締結し、小型モジュール炉「i-SMR」で欧州市場への参入を公表した。
■2023年11月、スウェーデン政府は脱原子力政策を撤回し、原子力発電の大規模な拡大をめざすロードマップを発表。2035年までに少なくとも大型炉2基、2045年までに大型炉10基の新設などの計画が盛り込まれている。
スウェーデン政府の原子力発電所新設計画に沿って、シャーンフル・ネキストはスウェーデン南東部の予備的なサイト調査を完了し、SMR開発に注力している。
■2024年6月、ノルウェー政府は原子力発電導入を検討する委員会を設立。ノルウェーには発電炉の開発、運転、規制、許認可プロセスの経験はなく、同委員会で原発建設の将来的な可能性についてく検討・評価し、2026年4月までに政府に報告書を提出する。
ノルスク・シャーナクラフトはSMRの建設、所有、運転をめざし、国内の複数のサイト候補地で各自治体や電力集約型産業と連携したSMRの導入検討や建設可能性の調査を実施している。
2025年2月、韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、米国で開催された“New Nuclear for Maritime Houston Summit”で、SMR駆動コンテナ船の設計モデルを初公開。15,000 TEU(20フィートコンテナ15000個積載)級コンテナ船モデルで、米国船級協会(ABS)の基本設計承認(AIP)を取得している。
これまで大型エンジンルーム設備のスペースをSMRで縮小化し、安全性確保のためにステンレス鋼と軽水による二重タンク方式の海上放射線遮蔽システムを採用した。さらに米国ベーカー・ヒューズと協力して、超臨界CO2ベースの推進システムを採用して熱効率を約5%向上させた。
2025年6月、国営タイ電力公社(EGAT)は、韓国水力・原子力(KHNP)と小型モジュール炉(SMR)の分野における協力覚書(MOU)を締結。タイの電力需要の約6割は天然ガス火力で、輸入も25%を占めている(2024年実績)。EGAT発電分は3割であり、残りは中小の独立系電気事業者らが発電している。
2025年12月、サムスン重工業(SHI)は、米国船級協会(ABS)から小型モジュール炉「SMART100」を2基搭載した浮体式原子力発電プラットフォーム(Floating SMR: FSMR)の基本設計承認(AiP)を取得。陸上用から洋上用へ転用し、原子炉と発電設備の配置に区画設計方式を適用した。
「SMART100」は韓国原子力研究院(KAERI)、韓国水力・原子力(KHNP)、サウジアラビアのアブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市公団 (K.A.CARE)が共同開発する一体型PWRである。
2012年に韓国原子力安全委員会(NSSC)から標準設計承認(SDA)を取得したSMART(System-integrated Modular Advanced Reactor)の出力を、熱出力33万kW→36.5万kW、電気出力10万kW→11万kWに増強した改良版で、2024年9月にSDAを取得している。

2026年3月、傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)とHD現代三湖(HSHI)は、次世代のカーボンフリー船舶の開発に向け、米国船級協会(ABS)と原子力電気推進システムの概念設計の共同開発契約(JDA)を締結した。本契約は、16,000 TEU(20フィートコンテナ換算)級のコンテナ船に特化する。
小型モジュール炉(SMR、出力:最大10万kWe)を船舶動力源とすることで、2025年9月にはABSから基本設計承認(AiP)を取得している。HD現代は、ツインスクリュー・プロペラ推進システムと、エンジンモーターをプロペラに直接連結する直結推進方式を採用する。
韓国での非軽水炉型SMRの開発動向
韓国のSMR関連アクティビティ:
■2012年半ばに、韓国原子力研究院(KAERI)は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュール式PWRタイプのSMR「SMART」炉(熱出力:33万kW、電気出力:10万kW)を開発し、韓国規制当局から標準設計認証を取得する。
■斗山エナビリティは米国ニュースケール・パワーのSMR「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の開発に出資し、主要機器の製造契約を獲得する。
■SKグループのSKイノベーションと韓国水力・原子力会社(KHNP)は、米国でナトリウム冷却式の小型高速炉「Natrium」を開発中のテラパワーに事業協力する。
■現代グループの韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、米国テラパワーと次世代SMRの共同研究を行い、同年12月には、米国ワイオミング州に建設中のテラパワーの先進炉「Natrium」の主要機器の製造を受注する。
■現代E&C(現代建設)は、米国ホルテック・インターナショナルのPWR型SMR「SMR-160」の商業化と建設プロジェクトに協力している。
■サムスン重工業は、デンマークのシーボーグ製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計に協力。CMSRパワー・バージは、電気出力:10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能で、2028年までの商業化をめざしている。
2024年2月、HD現代グループ傘下の韓国造船海洋エンジニアリング(KSOE)は、英国コア・パワーと米国サザン・カンパニー、テラパワーと協力して、船舶用SMR開発への参画を公表。2022年11月、KSOEはテラパワーに3,000万ドル(約45億円)を出資している。
冷却材と燃料の両方に塩化物溶融塩を使う塩化物溶融塩高速炉(MCFR)がベースで、テラパワーはMCFRの船舶用溶融塩炉である「m-MSR」を開発中。2023年10月、サザン・カンパニーとテラパワーは溶融塩を用いるポンプ駆動運転等の統合効果試験(IET)に成功している。
2025年9月、サムスン重工業(SHI)は、イタリアのミラノ開催のガス・エネルギー展示会「Gastech 2025」で、小型モジュール炉の熔融塩炉「MSR」(熱出力:10万kW)を搭載した積載容量174,000㎥級LNG運搬船の基本設計承認(AiP)の取得を公表。船舶の寿命期間中に燃料交換を不要としている。
世界初となるMSR搭載LNG運搬船は、米国船級協会(ABS)ならびにリベリア海事当局から技術認証を受けた。同技術はSHIと韓国原子力研究院(KAERI)が共同開発した概念設計中の「MSR」を動力源とする。液体燃料と冷却剤を混合した熔融塩を使用するため、船舶用エンジンとして注目されている。
2026年2月、韓国で、「小型モジュール炉(SMR)の開発促進および支援に関する特別法」が国会本会議で可決された。SMRを集中的に支援する法的基盤で、政府が5年ごとにSMR研究開発の基本計画を策定し、施行計画は1年ごとに策定して財源調達やサプライチェーンの構築などを後押しする。
原子力安全委員会(NSSC)は、2030年までにSMR規制体系を整備する「SMR規制体系構築ロードマップ」を発表した。既存の大型軽水炉中心の現行規制を見直し、船舶搭載や熱供給、水素生産など多様な用途に対応する設計特性をふまえた安全審査制度を構築する。
またNSSCは、2026年に予定されている韓国製PWR型SMR「i-SMR」(電気出力:17万kW)の標準設計承認(SDA)申請に向けて、審査指針を年内に作成する。2030年頃に見込まれる「i-SMR」の国内建設と非水冷却型SMRの認可に備え、規制システムの合理化を図るとしている。
2023年7月、韓国はSMR市場を韓国が主導するとして、政府主導により「SMRアライアンス」を立ち上げた。狙いは、国内でのSMR導入ではなく、多様な国内産業の発展をめざすものである。SMRスタートアップへの積極的な投資と協業により、”ものづくり”事業を拡大している。
1990年代に入り、シリコンバレーを中心に設計特化型のファブレス企業が急増したことで、現在、世界最大の半導体ファウンドリ「TSMC」が隆盛を極めている。同じ構図が見えてくる。

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