脱炭素COP30で分断が鮮明に!(1)

はじめに

 国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)が、2025年11月10日~11月22日(1日延長)、ブラジルの熱帯雨林に隣接したベレンにおいて開催された。2015年にパリで開催されたCOP21で採択された「パリ協定」から、10年目という節目の年である。
 COP30では、気候変動の進行を遅らせるために、「化石燃料からの脱却」に向けた工程表の作成で合意できるか否かが焦点であった。会期を延長して協議が行われたが、石油産油国などが強固に反対の姿勢を示して合意に至らず、閉幕した。

COP30の動き

各国の削減目標

 生成AI(人工知能)の利用拡大により電力需要の増加が見込まれる中で、これまで会議を主導してきたCO2排出量で世界第二位の米国が代表団を派遣しない状況下で、COP30は開催された。
 各国に気候変動対策を義務づけた2015年の画期的な「パリ協定」が発足して10年の節目で、米国トランプ政権は「パリ協定」からの再離脱を表明した。2016年1月には正式に米国は離脱する。

 2025年9月、中国が国際協調の主導的な役割を握る動きを示す。CO2排出量で世界第一位の中国は、2035年までに温暖化ガスの排出量をピーク時から7〜10%削減を表明した。 

 パリ協定加盟国は5年ごとに排出削減目標(NDC)を提出する必要がある。国連は9月24日までに2035年の削減目標を含む計画の提出を呼びかけ、中国を含め約100カ国がNDCを公表した。
CO2排出量1位 中国:2035年までに温暖化ガス排出量をピーク時から7~10%削減
CO2排出量2位 米国:パリ協定からの離脱、気候変動対策は「史上最大の詐欺」と非難
CO2排出量3位 インド:未提出 
CO2排出量4位 ロシア:2035年までに1990年比で65〜67%削減
CO2排出量5位 日本:2035年度に2013年度比60%減、2040年度に73%減
CO2排出量    欧州:2035年までに1990年比で66.25〜72.5%削減の見通し

 ところで、「パリ協定」では、産業革命以前と比較し、世界の平均気温の上昇を2℃より低く保ち、かつ、1.5℃に抑えることを目標としている。
 2025年11月、国連環境計画(UNEP)により、この目標達成は難しいという見解が示された。世界各国の最新の公約が達成されても、世界は2.3~2.5℃の気温上昇に直面するとの予測である。そのためにも、各国のCO2排出量の削減目標は、さらに厳しく設定し直す必要がある。

 しかし、気候変動に備えるための対策資金を提供する先進国と、それを受け取る途上国の対立が続き、議論がまとまらない。国連は各国・地域に2035年時点の新たなCO2排出削減目標を、締約国である198か国と地域に提出を求めたが、閉幕した現在も79か国と地域が提出していない

 COP30では、主に「温室効果ガス排出量の削減」「気候変動による災害に備えるための対策資金」、「森林・植林などによるCO2吸収量の増大」について議論が進められた。  

化石燃料からの脱却に向けた行程表の策定

 温室効果ガス排出量の削減」は脱炭素社会の実現にあたり不可欠である。特に、「森林・植林などによるCO2吸収量の増大」とバランスさせることによる「カーボンニュートラルの達成」が最終目標であり、その目標に向けて削減量を可視化し、正確に計測・確認する必要がある。
 そのために、温室効果ガス排出量の削減に大きな影響を与える「化石燃料からの脱却に向けた行程表」の策定が各国と地域に求められる。

 脱石炭連盟(PPCA)は、フランス・インドネシアを議長国とする専門委員会を設立し、脱石炭に必要となる具体的な政策や資金調達法をまとめて報告書を発表し、これまでの成功例に基づいて行程表作成の筋道をアピールした。石炭火力への依存度が高い韓国が、PPCAへの参加を表明した。

 「化石燃料からの脱却に向けた行程表」の策定に関しては、議長国ブラジルの主導で、欧州各国やコロンビア、パナマ、ウルグアイなど80カ国以上が賛同し、化石燃料からの移行に関する文言を協定に盛り込むよう求めた。
 これに対して、サウジアラビアなどの産油国は、化石燃料へのいかなる言及も見送るべきだと主張した。途上国の一部も化石燃料の削減に必要な資金が確保されていないとし、反対を表明した。

 以上から、「化石燃料からの脱却に向けた行程表」の策定について合意を得ることはできなかった。温暖化ガスの排出量削減の強化に向けては、各国が提出した2035年時点の削減目標を加速するため、2026年までに報告書をつくることが合意文書に盛り込まれた。

 この結果に対し、コロンビアは「化石燃料からの脱却の議論ができなければ、温室効果ガス排出削減はできない。合意文書は間違っている」とし、2026年4月28〜29日に「公正な脱化石燃料への第1回国際会議」をオランダと共催すると発表した。
 また、パナマは「ブラジルの議事進行に、失望した」と発言。欧州連合(EU)は「合意文書の結論そのものに賛同しない」と主張するなど化石燃料からの脱却を協定に盛り込むよう求め、分断が鮮明となった。 

 脱石炭連盟(PPCA)の設立は2017年11月、ドイツのボンで開催されたCOP23において、英国とカナダの提唱によって発足した。2025年11月25日現在、英国やドイツ、フランス、北欧諸国、米国、カナダ、アラブ首長国連邦、モロッコ、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリなど65カ国が加盟し、主要国(G7)でPPCA加盟国は、日本だけである。
 経済協力開発機構(OECD、38カ国)で、PPCA未加盟は日本、豪州、ポーランド、トルコである。 

(つづく)

  
  
 

 

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