複合サイクル発電による高効率化(Ⅵ)

火力発電

 2024年3月、三菱重工業は2023年のガスタービン受注実績(出力ベース)で世界シェア36%で1位と公表した。GEベルノバが27%、シーメンスが25%であった。得意とする大型機に限定したシェアは三菱重工業は56%、GEベルノバが23%、シーメンスが19%である。

ガスタービンメーカーの動向

ドイツ・シーメンス・エナジー

 1990年、米国プラットアンドホイットニーの航空機エンジン技術を導入する。
 1998年、米国ウェスチングハウスの火力部門を買収し、大型ガスタービンのラインアップを充実する。 
 2003年、フランス・アルストムの小型ガスタービン部門を買収し、ラインアップを充実する。
 2005年、ガスタービンのモデル名をSGTx(Siemens Gas Turbine)に統一してリネームする。

 2019年5月、シーメンス本社が火力発電向けタービンなどを手がけるガス・電力カンパニーを2020年9月に分離・上場させ、これに風力発電機事業を移し、発電機関連事業から事実上の撤退を発表した。火力発電から再生可能エネルギーへの世界的な移行で、大型タービン市場が急激に縮小したことが原因である。

 2022年10月、シーメンス子会社のシーメンス・エナジー(Siemens Energy)は、ロシアでのガスタービン事業のジョイント・ベンチャー(Siemens Gas Turbine Technologies) を、地方政府所有のInterRAOへの売却を発表し、事業の脱ロシア化に舵を切った

■電力事業向けの大型ガスタービンはSGT5型が50Hz向け、SGT6型が60Hz向けであり、SGT型は産業用小型ガスタービンである。
■1100℃級ガスタービンのSGT5/6-2000Eはシーメンス設計、1300℃級ガスタービンのSGT5-4000Eはシーメンス設計SGT6-4000Eはウェスティングハウスの設計である。
SGT5/6-8000Hはシーメンスとウェスティングハウスの技術融合により開発された機種であり、2011年にGTCC発電システムで発電端効率(LHV基準):60.75%を達成した。

図10 ドイツのシーメンス・エナジーのガスタービンラインアップ

 2014年9月、富士電機が神戸製鋼所から栃木県真岡市に建設する1軸式GTCCを受注。総出力:120万kW(60万kW×2基)で発電端効率(LHV基準):61%以上、1号機は2019年10月、2号機は2020年3月に稼働。
 シーメンスがSGT5-8000H型ガスタービン、富士電機が蒸気タービンと発電機を供給した。国内初となる内陸地(太平洋沿岸から西へ50km)での設置のため空冷式復水器(Air-cooled Condenser)が設置された。

 2017年9月、HL型ガスタービンを発表。空冷式「SGT5/6-9000HL」ガスタービンは、50Hzは出力:54.5万kW、60Hzは出力:37.4万kWである。また、SGT5-8000HL」は出力:45.3万kWである。いずれもシンプルサイクル運転で発電端効率(LHV基準):42%、GTCC発電で発電端効率(LHV基準):63%以上を達成した。

 2020年5月、英国発電会社スコティッシュサウスエナジー(SSE Thermal)のキードビー2発電所で試運転を行うため、ドイツ・ベルリン工場で製造した50Hz向け「SGT5-9000HLが搬出された。試運転後にGTCCに組み込まれ、2022年に最大出力:840MW、送電端効率(LHV基準):63%超の商用運転をめざす。
 シーメンス・エナジーは、欧州で初のHL型ガスタービン長期プログラム(LTP)のサービスを提供する。

 2024年12月、シーメンス・エナジーとSSEは、2030年までに100%水素専焼ガスタービン(出力:600MW)の共同開発計画を発表。英国キードビー2発電所の「SGT5-9000HL」型ガスタービンの水素対応バージョンの開発である。ただし、水素インフラの遅延が発生した場合には柔軟に対応することを表明している。
 シーメンス・エナジーは、2023年10月に「SGT-400」型ガスタービン(出力:15MW)で水素専焼試験に成功し、2024年12月には英国政府が水素発電に初めて補助金を出すと発表。SSEはノルウェーのエクイノールと提携し、最終的にはキードビー発電所の1.8GWすべてを

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