国土交通省は直轄工事の現場で、「CO2排出量を削減できる建設機械」や「脱炭素コンクリート」の使用を原則化する方針を表明した。直轄工事で脱炭素化に向けて先進的に取組むことで、産業界における建設現場の取組みをけん引する狙いである。
脱炭素アクションプラン
2025年4月、国土交通省は、発注する土木工事についてCO2排出の過程に応じたリーディング施策のロードマップを定めたアクションプランを公表した。国が脱炭素化に向けて先進的に取り組むことで、建設現場の取組みをけん引するのが狙いである。強化すべき当面のリーディング施策として次の3方針が示された。
強化すべきリーディング施策
■建設機械の脱炭素化:
「建設機械のエネルギー効率向上」、「次世代燃料の導入促進」、「新技術による施工の効率化」
■コンクリートの脱炭素化:
「コンクリート製造時にCO2排出量の少ない原料利用」、「コンクリートにCO2を固定・吸収する技術」
■その他建設技術の脱炭素化:
「脱炭素技術の排出削減効果の見える化」、「インセンティブによる技術開発促進」
建設機械の脱炭素化
<建設機械のエネルギー効率向上>
「燃費基準達成建設機械」の認定制度を継続的に進め、現行の2020年基準から引き上げた次期2030年基準を2027年4月から発効し、更なる燃費向上をめざす。
特に、認定型式のうち「油圧ショベル」は、2030年度頃を目途に直轄工事における使用の原則化を行う。他機種についても普及状況等をみて、順次に使用原則化を検討する。
「電動建機」の普及促進のため2023年度に「GX建設機械認定制度」を創設し、2024年度から認定型式機種の購入への補助金制度を創設した。また、エネルギー効率向上をめざし、「電力消費量基準値」を2030年度に設定する。一方、2025年度より導入促進のためのモデル直轄工事を実施する。
<次世代燃料の導入促進>
軽油に代わる「バイオ燃料」や「合成燃料」等の軽油代替燃料の活用が期待されている。このような次世代燃料を土木工事において導入促進するため、直轄工事でのモデル工事を実施する。
<新技術による施工の効率化>
2025年度から、直轄工事の土工及び河川浚渫工では「ICT施工」の原則化を行う。その他の工種も順次原則化を拡大し、施工期間の短縮化を進める。また、「ICT施工stageⅡ」で、建設現場のデジタル化・見える化を進め、必要な資機材配置や作業工程などを見直し作業の効率化を図る。
更に、チルトローテータ等の新たな施工技術を活用し、施工の効率化を推進する。

コンクリートの脱炭素化
<コンクリート製造時にCO2排出量の少ない原料利用>
産業副産物の高炉スラグ微粉末やフライアッシュを使用し、セメントの一部/全部を置換した製品を活用する。グリーン購入法に基づく特定調達品目よりも高い置換率(55%以上)の製品は、試行工事の発注で市場性を検証し、用途等を指定して使用を原則化し、段階的に対象を拡大・置換率の引き上げ等も検討する。
<コンクリートにCO2を固定・吸収する技術>
CO2吸収源の増加は、CO2固定した炭酸塩原料を用いた骨材や混和剤の使用、養生中のCO2吸収等によるもので、GI(グリーンイノベーション)基金等による技術開発の状況に応じて試行工事を行い、拡大をめざす。

その他建設技術の脱炭素化
<脱炭素技術の排出削減効果の見える化>
建設分野の各企業においては、脱炭素に関する材料、製品等の技術開発が進められている。CO2削減効果の評価や手法等の制度設計と、各現場での運用の仕組みの構築や、データのオープン化などの必要な環境整備を進める。
<インセンティブによる技術開発促進>
表彰制度・工事成績評定等のインセンティブ付与を行い、受発注者共に理解が浸透された後に、総合評価等でのインセンティブ付与について検討する。
また、CO2排出削減量当たりの費用の妥当性について、材料、製品等(EX.グリーンスチール、低炭素アスファルト)の用途等を指定して使用を原則化し、順次対象を拡大する。

コメント