重機分野の脱炭素化(Ⅱ)

重機

 重機分野を取り巻く状況は、鉄道分野におけるディーゼル・エンジン気動車と類似しており、先行する自動車分野の動向を垣間見ながら開発が進められている。2000~2010年代は、ディーゼル・エレクトリック・エンジン、それに蓄電池を追加したハイブリッド・エンジンの実用化が進められた。

ハイブリッド・エンジン駆動

 2008年6月、小松製作所(コマツ)は市販車として世界初のハイブリッド式油圧ショベル「PC200-8」を、日本・欧州を中心に発売している。ショベルが旋回して小刻みにブレーキをかける際に発生する回生エネルギーを電気に変換してキャパシタに貯め、駆動エネルギーとして再利用する。
 現行のディーゼル・エンジンタイプ「PC200-8」と比較して約25%の燃費低減を実現しており、完全電動化が普及するまでのつなぎとして販売に注力するとしている。

図3 コマツのハイブリッド式油圧ショベル「PC200-8」

 2012年10月、米国キャタピラーは、旋回する油圧ショベルが減速する際に本体に内蔵したアキュムレーター(蓄圧機)に生じるエネルギーを回収し、本体の旋回運動に再利用する30トン級ハイブリッド・油圧ショベル「336E H」を発売している
 現行のディーゼル・エンジンタイプよりも高価格であるが、燃費性能が平均25%向上するため、約1年の稼働で回収できるとし、2013年4月から米国・欧州・日本で販売している。

 2016年4月、日立建機は中型ハイブリッド・ホイールローダ「ZW220HYB-5B」 (標準バケット容量:3.4m3、運転質量:18.18トン)を発売した。減速時に発生する回生エネルギーをキャパシタに蓄電し、加速時に走行モータへ給電することで燃料消費量を削減する。

図4 日立建機のハイブリッドホイールローダ「ZW220HYB-5B」

 2012年にコベルコ建機日本は販売開始した20トン級ハイブリッド油圧ショベル「SK200H-9」をフルモデルチェンジし、2016年11月に「SK200H-10」を販売した。大容量リチウムイオン蓄電池の採用で、従来機搭載のキャパシタに比べて蓄電量が大幅に増加し、効率的なアシストを可能とした。

 2022年1月、クボタは新型ハイブリッド・エンジンを開発した。従来のハイブリッド・エンジンは電動機でエンジン駆動を補助するタイプだが、新型は電動機だけでも駆動できる。建設機械や小型輸送機など産業用機械への搭載を想定している。
 クボタは6トン未満の小型電動ショベルを、2024年にも欧州(ノルウェーやオランダなど)で売り出す計画を発表している。

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