重機分野の脱炭素化(Ⅳ)

重機

 電動重機の普及の可否は低コスト化に加えて、遠隔操作を可能にする情報通信技術(ICT)や自動運転などの高機能化の実現に依存する。現在、20トン以上の中大型重機は燃料電池駆動が主流になると考えて実用化開発が始められているが、並行して水素燃焼エンジン駆動の開発も進められている。

燃料電池駆動

 2021年7月、NEDOは燃料電池の飛躍的な普及拡大に向け、新たに24件のテーマ(2020~2024年度)を採択した。2030年以降のFCEVへの実装を目指した固体高分子形燃料電池(PEFC)の基礎研究が6件、PEFC・固体酸化物型燃料電池(SOFC)の性能向上の要素開発が11件である。
 加えて、燃料電池の多用途活用実現技術開発に関して、燃料電池駆動の農業用トラクター(クボタ)油圧ショベル(コベルコ建機日本)港湾荷役機器(三井E&Sマシナリー)など7件が採択。

図3 燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けたNEDO事業の展開イメージ図
出典:NEDOニュースリリース(2021年7月15日)

 2022年6月、クボタは2025年にも水素を燃料とする燃料電池トラクターを世界で初めて商用化すると発表している。長時間作業が可能で、蓄電池駆動よりも小型化が可能としている。出力:37.5~75kWの中大型トラクターを開発する計画である。2023年には試験機を開発する。
 ディーゼルエンジン駆動の800万~1100万円/台よりも、4割ほど高コストになるとみられる。欧米の大規模農家への販売を見込む。農業機械は使用されるエリアと個数が限定されるため、容器に詰めた水素燃料を農家に配達する供給網整備も検討している。

 2022年6月、コマツと米国エンジンメーカーのカミンズは、水素燃料電池システムを含め、鉱山向けダンプトラックのゼロエミッション動力源の技術開発で協議すると発表した。カミンズが保有する蓄電池、燃料電池システム、水素生成システムなどの技術と、コマツが保有する鉱山機械の開発技術、鉱山オペレーション最適化ソリューションを融合する。

水素エンジン駆動

 2021年4月、井関農機は2024年度までに水素エンジンを搭載する小型トラクターの試作機を開発し、実証試験などを経て商品化と大型化を検討すると発表した。クボタも水素エンジンを開発中で「法令整備、水素供給インフラ、経済性など課題も多いが、追いかけていきたい」と表明している。

 2022年8月、デンヨーは、クボタが開発を進める産業用水素エンジンを搭載した水素専焼発電機の開発に着手したことを表明した。ボリュームゾーンである出力: 45kVA のディーゼル発電機をベースに開発を進めて可搬形発電機の市場投入を目指しているが、電動重機への適用も可能と考えられる。

 2021年9月、米国キャタピラーは米エネルギー大手のシェブロンと、水素機関車のプロトタイプの実証実験を共同で行うことに合意した。鉱山機械や鉱山トラックは車体が大きく、CO2や排ガスの排出量が多く、水素エンジンの開発は重要と考えられている。

電動重機の開発課題

 電動重機の普及の可否は低コスト化にある。電動重機に搭載するリチウムイオン電池の量は多く、数千万円するディーゼル・エンジン式中型機の価格が2~3倍以上にもなるとされる。環境先進国の欧州では補助金などで費用負担を一定程度軽くできるが、依然として割高感は残る。

 重機メーカーは低コスト化に取り組むが、電動化だけでは他社との差異化が難しいと考えられる。そのため、遠隔操作などを可能にする情報通信技術(ICT)や自動運転など付加価値の高い機能も加えて差異化を図る必要がある。

 一方、20トン以上の中大型重機は燃料電池駆動が主流になると考えられて実用化開発が進められているが、一方で水素燃焼エンジン駆動の開発も進められている。今後、住み分けを含めて両技術の見極めを行う必要がある。

コメント

タイトルとURLをコピーしました