世界市場に出遅れた日本の水力発電(Ⅲ)

再エネ

 気候変動への適応をめざす国土交通省と、カーボンニュートラルへの対応をめざす資源エネルギー庁は、協力して治水機能の強化と水力発電の促進を両立させる「ハイブリッドダム」の取組みを推進している。2022年(令和4年)度から国土交通省は水資源機構管理のダムを対象とした試行を進めている。

ハイブリッドダムの取組み推進

ハイブリッドダムには

 昨今の異常気象に対応する治水機能の強化に加え、カーボンニュートラル実現に向けた水力発電所の増強をめざし、人工知能(AI)などを活用した気象予測を活用することで、「ダム容量などの共用化」を推進し、さらなるダムの活用拡大をめざす意味がハイブリッドダムには含まれている。

 すなわち、「ダム容量などの共用化」には、利水容量の治水活用(事前放流等)と治水容量の利水活用(運用高度化)の意味を含む。また、単体のダムにとどまらず、上下流や流域の複数ダムの連携した取組み、ダム施設の活用、ダムの無効放流の発電への活用などの取組みが含まれる。

図1 ハイブリッドダムの取組み内容  出典:国土交通省

ハイブリッドダムへの取組み状況

 2022年(令和4年)度から国土交通省、水資源機構管理のダムを対象として、試行が始まっている。

表1 ハイブリッドダムの具体的な取組み状況  出典:国土交通省

 2024年10月、国土交通省中部地方整備局、木曽川水系ダム統合管理事務所、水資源機構徳山ダム 管理所、中部電力は、2024年の出水期から、水資源機構管理の徳山ダムと下流にある国土交通省中部地方整備局管理の横山ダムは、連携して発電に資する水位運用高度化操作の試行を始めた。
 通常の徳山ダム(出力:16.42万kW)の運用と比較して洪水調節容量に貯留した約 275万㎥の水を水力発電に有効活用することができ、徳山ダムと下流にある横山ダムにおける中部電力の水力発電所では、合計で約158.1万kWhの増電効果が確認された。

 2025年1月、国土交通省は3カ所のダムで水力発電設備の民設民営方式の新設公募を予定し、第1弾の湯西川ダム(栃木県日光市)で現地見学会を開催。その他、直轄で管理する野村ダム(愛媛県西予市野村町)、尾原ダム(島根県雲南市)でハイブリッドダムの事業化をめざしている。
 現在の湯西川ダムは鬼怒川上流で2012年3月に建設された重力式コンクリートダムで、総貯水容量:7500万㎥で、洪水調節や河川流水の機能維持、都市用水への供給が目的である。

 2025年7月、国土交通省中部地方整備局、矢作ダム管理所、中部電力は、国土交通省管理の矢作ダムで、発電に資する水位運用高度化操作の試行を初めて実施した。
 通常の操作と比較し、約179万㎥の水を中部電力矢作第一水力発電所(10.5万kW×3基)で有効活用でき、約32.1万kWhの増電効果があることを確認した。

 2025年10月、国土交通省が公募していた湯西川ダムの新水力発電所設置・運営事業の候補者に東京電力リニューアブルパワー、NTTアノードエナジー、建設技術研究所、鹿島建設、飛鳥建設の5社コンソーシアムが選定。想定発電出力:2300kWで、着工は2028年4月、2030年度中の運転開始をめざす。   

 2025年11月、長大とグリーン電力エンジニアリングは、国土交通省四国地方整備局肱川ダム統合管理事務所から、「野村ダム新水力発電所設置・運営事業」の事業候補者に特定された。
 1982年3月に建設された野村ダムは、洪水調節やかんがい用水、水道用水を目的とした総貯水容量:1600万㎥の重力式コンクリートダム。直轄の管理用発電所が最大で毎秒約1.6㎥の放流水を取水して最大出力:665kWの発電をしている。
 この事業では未利用の放流水が毎秒13㎥ほどあり、その有効活用が目的。新水力発電所の発電規模は最大出力:約997kWで、2028年の着工、2030年の運転開始をめざす。

 「ハイブリッドダム」は発電未利用ダムへの水力発電機の設置を中心に進められており、中小水力発電所が対象となるため、地道な努力が必要となる。
 一方、ダム運用の高度化に関しては、人工知能(AI)を活用した水力発電所の支援システムの採用が有効であることはいうまでもない。
 ところで、ダム改造・多目的ダムの建設により飛躍的な水力発電量の増加が期待されるが、膨大な費用が必要として検討段階に留まっているのが残念である。

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