伸び悩む地熱発電の現状(Ⅵ)

再エネ

 1980 年代には日本企業の世界シェアが90%であったが、2010年には日本企業のシェアが69%(三菱重工業:25%、東芝:24%、富士電機が20%)に減少し、オーマットのシェアは10%であった。

 現在、フラッシュサイクルに強い日本メーカーが世界シェアの6割強を占め、商機が拡大していると報じられた。確かに、東芝(シェア:24%)、三菱重工業(22%)、富士電機(20%)と高いシェアを有しているが、バイナリーサイクル専業のイスラエル系米国企業OEMAT(オーマット)のシェアが14%に上がっている。

国内の地熱発電メーカーの動向

 フラッシュサイクルに強い日本メーカーが世界シェアの6割強を占め、商機が拡大していると報じられた。確かに、東芝(シェア:24%)、三菱重工業(22%)、富士電機(20%)と高いシェアを有しているが、バイナリーサイクル専業のイスラエル系米国企業OEMAT(オーマット)のシェアが14%に上がっている。

 1980 年代には日本企業の世界シェアが90%であったが、2010年には日本企業のシェアが69%(三菱重工業:25%、東芝:24%、富士電機が20%)に減少し、オーマットのシェアは10%であった。明らかに、バイナリーサイクルが伸びており、日本企業のシェアは減少傾向にある。

 バイナリーサイクルのみに注目すると、オーマットの世界シェアは77%と断トツである。米国TAS(6%)は米国中心に電力会社などに納入を進め、イタリアのエクセルギー(4%)はトルコなどへの納入実績があるが、2019年には中国の空調メーカー傘下に入った。 

 現状、フラッシュサイクルの市場規模は、出力ベースでバイナリーサイクルの約4倍である。しかし、バイナリーサイクルは短期間での設置が可能で、発電用に汲み上げた熱水をほぼ全て地下に戻すため環境負荷も低く、時流に沿っている。

図17 2010年における地熱発電タービンの世界シェア  
出典:“Geothermal Power Generation in the World, 2005-2010 Update Report”,
Proceedings of the World Geothermal Congress 2010, Bali, Indonesia.(Bertani, R., 2010.)よりNEDO 作成

フラッシュサイクル発電システム

 新規の地熱発電はバイナリーサイクルに移行する傾向が見られるが、フラッシュサイクルについても様々な技術開発海外プラントの受注が進められている。

■2016年4月、大林組はニュージーランドの地熱調査会社MB Centuryと地熱発電に関する相互協力協定を締結し、傘下のトゥアロパキ・トラスト発電所(出力:11.3万kW)での地熱電力を利用したCO2フリー水素製造・流通事業の可能性検討を進め、2018年2月に共同研究の覚書を締結した。
■2022年8月、東芝は、2014年に運転開始したインドネシアのパトハ地熱発電所(出力:6万kW)の発電設備向けに、人工知能(AI)を適用したトラブル予兆診断技術や性能監視のIoTサービス契約を締結した。
 各種センサーで得られる日々の運転データをAI手法により解析し、トラブル原因となる異常兆候を検出して、発電所の停止回数・期間の短縮を実現する。同発電所でのNEDO実証事業で、トラブル発生率を20%以上に抑制できることを確認している。
■2022年10月、東芝は、フィリピンのタナワン地熱発電所(出力:2万kW)から地熱発電設備「Geoportable(ジオポータブル)」一式を受注した。2023年6月より現地納入、2024年11月に運転開始する。
 ジオポータブルは、小規模地熱発電(出力:1000~2万kW)向けに開発されたコンパクトなフラッシュサイクル地熱発電設備で、短期の据付・早期稼働が可能である。
■2022年12月、三菱重工業は、インドネシア南部スマトラ地方のルムット・バライII地熱発電所(出力:5.5万kW)の受注を発表した。基本設計を担当し、蒸気タービン、発電機、および主要付属設備一式を供給する。2024年の商業運転開始をめざす。
■2023年2月、富士電機は、2022年に運転開始したオルカリアⅠ地熱発電所6号機(出力:7万kW)に次ぐ、ケニア2件目の地熱発電プロジェクトのメネンガイ地熱発電所(出力:3.5万kW)受注を発表した。蒸気タービンや発電機などの主要機器の製造・供給を担い、2025年の運転開始をめざす。
■2024年3月、三菱重工業、丸の内イノベーションパートナーズ、米国デヴォン・エナジーが高温岩体発電を手がける米国ファーボ・エナジーに出資した。
 ファーボ・エナジーは2026年にユタ州で地熱プロジェクトを運転開始する予定で、石油・ガスの水平掘削や水圧破砕などの掘削技術を応用し、地下の高温岩体層に蓄えられたエネルギーを発電や工業熱源として利用できるシステムを開発している。

バイナリーサイクル発電システム

 世界的に見ると発電コストの低コスト化が進められ、フラッシュサイクルの4~10円/kWhに対し、バイナリーサイクルは4~12円/kWhと同等レベルまで下がってきた。

 米国ではバイナリーサイクルが急速に伸びている。地熱発電の設備容量は、2019年には385万kWと10年間で61万kWの増加を達成。内訳はフラッシュサイクル発電が7万kW、バイナリーサイクル発電は54万kWである。累計比率でも、バイナリーサイクル発電は2000年代後半から増加して30%に達した。 

 また、100℃程度でも発電できるバイナリーサイクルの技術開発が進められ、トルコのような地熱温度が高くない国でも導入が進み、世界の地熱発電の総設備容量の20%に近づいている。
 トルコは2023年に再生可能エネルギーを30%以上に引き上げる計画で、民間企業の参入条件を緩和するなど開発を促し、設備容量は2020年に約160万kWと5年間で2.5倍に増加し、世界第4位の地熱国に浮上した。導入量の3/4がバイナリーサイクルである。

国内主要メーカーなどの動向:
富士電機は、2010年5月に富士地熱バイナリー発電設備(出力:2,000kW)を商品化。100~150℃の蒸気・熱水による発電が可能で、作動媒体は地球温暖化係数が低いノルマルペンタンで、冷却水を必要としない空気冷却式熱交換器を採用。その後、6000kW、1万kW級機をラインアップしている。
 2006年6月、霧島国際ホテルでは自家用バイナリー発電(出力:220kW)に切り替え、イソペンタンを媒体にした富士電機製の国産機第1号実証機が設置された。
 2017年3月、出光大分地熱は滝上バイナリー発電所(出力:5050kW)の運転を開始。九州電力の滝上(地熱)発電所(出力:2.75万kW)から付随して噴出する熱水を利用して発電する。
川崎重工業は、2010年6月にグリーンバイナリータービン(出力:250kW)を商品化。排温水(80℃~120℃)や排ガス、熱、温泉熱水などの有効利用を目的に、50~250kW機をラインアップ。作動媒体には低沸点の代替フロンを採用している。
 九電みらいエナジーは、2018年2月に鹿児島県指宿市の山川発電所内(出力:4990kW)で、川崎重工業製のバイナリータービンを稼働させた。
神戸製鋼所は、2011年10月に温水熱源向け(70~95℃)のマイクロバイナリー「MB-70H」(出力:72kW)、2013年7月には低圧蒸気向け(110~130℃)の「MB-125S」(出力:125kW)を商品化している。作動媒体にはフッ素系不活性ガス(HFC245fa)を用い、スクリュータービン、IPM同期発電機を採用している。
 2012年10月に大分県由布市の温泉旅館「ゆふいん庄屋の館」にマイクロバイナリー(95℃の温水で出力:70kW)が設置された。熱交換後の温水はそのまま温泉として利用している。
IHIは2013年8月に、小型バイナリー発電装置のヒートリカバリー「HRシリーズ」(出力:20kW)を商品化。作動媒体にはフッ素系不活性ガス(HFC245fa)を使用し、70~95℃の温排水や温泉などで発電する。
 2014年4月、熊本県小国町わいた温泉の旅館「まつや」で、小型バイナリーの小国まつや地熱発電所(出力:20kW×3)が稼働した。
三井造船は2014年8月に米国エナージェントと技術提携し、ヴァリアブルフェーズサイクル(VPC)バイナリー発電装置を商品化した。中低温排水や排ガス(70~250℃)などから、熱交換器により作動媒体の代替フロン(R245faなど)で熱エネルギーを回収する。
東芝は2015年10月に米国ORMAT(オーマット)と海外の地熱発電事業での提携を発表。製品を相互補完することで幅広い需要を取り込み、注目度が増しているフラッシュサイクルとバイナリーサイクルを組み合わせた高効率のコンバインドサイクルへの対応を進めている。
三菱重工業は、2016年5月にイタリアのバイナリー専業メーカーのTurboden(ターボデン)と代理店契約を締結した後、グループ会社とした。
 2015年6月、九電みらいエナジーは大分県玖珠郡九重町に菅原バイナリー発電所(出力:5000kW)を稼働。また、2021年2月、フィリピンのパラヤン地熱発電所(出力:2.9万kW)のバイナリー発電設備を受注、2022年末の運転開始をめざす。還元井に戻すだけであった排熱水を利用して発電する。
オリックスは、グループが運営する別府杉乃井ホテルの杉乃井地熱発電所(出力:1900kW)での運営経験をベースに、2017年5月には米国オーマットの株式を約2割取得し、地熱発電事業へ進出している。
 2019年8月、北海道函館市南茅部でバイナリーサイクルの南茅部地熱発電所(出力:6500kW)の建設に着手した。施工は日鉄エンジニアリングときんでんで、2023年の運転開始をめざしている。
大林組は、2021年7月に大分県玖珠郡九重町でバイナリー発電機(出力:250kW、実証は125kWで運用)を利用したグリーン水素製造実証プラント(水素製造量:10Nm³/h)の稼働を発表。複数の運転モードを備えたエネルギーマネージメントシステム(EMS)を利用し、水素製造の高効率化をめざしている。
 製造したCO2フリー水素は、水素ステーションや地元工場で燃料電池フォークリフトに利用するなど、地域のエネルギー資源として有効活用する。
ヤンマーエネルギーシステムは、2020年8月に温泉廃熱を利用した小型オーガニックランキンサイクル発電機を開発、長野県諏訪市あやめ源湯に設置して実証試験を開始した。
 定格出力:9.0kW(熱源90℃、冷却源20℃)、奥行807×幅2009×高さ1675mmで、70~95℃程度の排熱で発電するパッケージ型発電機で、配管・配線接続のみで設置できる。

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