伸び悩むバイオマス発電の現状(Ⅴ)

再エネ

 バイオマス発電では、ごみ焼却発電設備(一般廃棄物発電と産業廃棄物発電)が、設備容量で300万kWに達しており、主に「ストーカ炉」でごみを燃やし、生じた熱を使ってボイラで蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する。
 一方、2010年以降は、FIT/FIPの政府支援を受けて、木質バイオマス発電システムの導入が急増傾向にあり、大企業から中小企業まで、様々なバイオマス発電関連メーカーが参画している。

国内のバイオマス発電メーカー

 大企業から中小企業に至るまで、様々なバイオマス発電関連のメーカーが存在する。

表1 バイオマス発電システムの代表的な供給メーカー

ごみ焼却発電設備

 ごみ収集車でピットに集められたごみは、「ストーカ炉」と呼ばれる燃焼装置の上を移動しながら燃やされて灰となり排出される。ごみ焼却発電設備(一般廃棄物発電と産業廃棄物発電)では、主に「ストーカ炉」でごみを燃やし、生じた熱を使ってボイラで蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させて発電する。

 2017年9月には、東京二十三区清掃一部事務組合(杉並清掃工場)のごみ発電プラント(日立造船製、デ・ロール式全連続燃焼式火格子焼却炉、処理能力:600t/日(300t/日×2炉)、発電出力:2.42万kW)が竣工した。

図14 東京二十三区清掃一部事務組合の杉並清掃工場 出典:日立造船

 2010年以降、国内のごみ焼却発電市場の伸びが鈍化したため、2010年12月、日立造船スイスのごみ発電メーカーAE & E Inovaを子会社化、2014年、日鉄エンジニアリングJFEエンジニアリングは、それぞれドイツのスタンダードケッセル・パワーシステムズとフィジア・バブコック・エンヴァイラメントを子会社化した。
 また、2015年1月、日立造船はドイツのごみ処理施設保守サービスを行うクラフトワークステクニックを買収し、保守サービス事業の強化を打ち出し、海外進出を進めている。

 2020年以降、各社は人工知能(AI)でごみの燃焼を安定させる最新技術を投入し、ごみの埋め立てを規制する欧州や、インフラ需要が拡大する新興国市場を目指している。
 日本勢の海外での累計受注件数は2014年度末の37件から、2019年度末には84件と倍増し、欧州・中東・アフリカの合計市場シェアは、フランスCNIM(43.8%)に次ぎ日立造船(28.6%)、日鉄エンジニアリング(16.6%)、JFEエンジニアリング(5.5%)と日本勢が過半を占めた

 各社はさらに受注を伸ばすため、AI予測に加えて自動運転プログラムを開発するなど、無人化の技術開発に取り組んでいる。今後、中国のごみ激増に加え、マレーシア、インドネシアの海洋プラスチックごみ処理問題などから、東南アジアでの市場拡大が見込まれている。 

 2017年4月、JFEエンジニアリングがミャンマーのヤンゴン市で建設したごみ焼却発電プラント(ストーカ炉:60t/日×1炉、発電出力:700kW)が竣工した。また、2018年4月、日立造船が、中国四川省成都に建設したごみ焼却発電プラント(ストーカ炉:600t/日×4 炉、発電出力:5万kW)が竣工した。
 また、2018年10月、川崎重工業は、中国CONCHグループとの合弁会社の安徽海螺川崎工程有限公司がストーカ式ごみ焼却発電施設を6件連続受注したと公表。江西省上高県、安徽省霍邱県、山東省泗水県、陜西省洋県、安徽省霍山県、重慶市石柱県向けで、2019年10月までに順次納入する。

木質バイオマス発電システム

 住友重機械工業は、2001年に英国エイメックフォスターウィラー(AFW:Amec Foster Wheeler plc)と循環流動層ボイラで技術提携し、国内や東南アジアにバイオマス発電設備(出力:5000kW~20万kW)を供給する。
 2004年11月にサミット明星パワーに納入した国内初の木質バイオマス-石炭混焼CFBボイラ(出力:5万kW)を皮切りに、本格的に木質バイオマス焚きボイラに進出している。
 2017年6月、AFWから循環流動層式(CFB)ボイラ事業を買収し、新興国を中心にバイオマス発電事業を拡大。また、2020年初頭に英国で商業運転を始める大型バイオマス専焼発電所(出力:30万kW級)に、買収した子会社のフィンランドSumitomo SHI FW(SFW)がCFBボイラを供給している。

 タクマは、1950年代から木質チップやサトウキビ搾汁さくじゅう後の残渣ざんさであるバガス(Bagasse)を燃料としたバイオマス発電設備を、国内外に納入している。実績が多いトラベリングストーカー炉廃棄物の焼却に適した階段式ストーカ炉高カロリー燃料の燃焼に適したバブリング流動層炉などを商品化している。
 製紙工場でのバーク、製材・合板工場での廃材、家屋解体廃材など、含有水分量や形状が異なる木材向けに数種の燃焼機構を開発している。また、もみ殻などの流動層燃焼システムでは、安定した低温燃焼と完全燃焼を行うことで、低NOx化と共に高い燃焼効率を実現している。

 JFEエンジニアリングは、2003年頃から木材や食品残渣ざんさなどを原料とするバイオマス発電設備を納入している。2012年4月にバイオマス事業部を発足させ、独自で木質チップやPKS専焼の循環流動層ボイラを開発し、建設廃材、廃プラスチック、タイヤチップなど多様な燃料を混焼できるボイラの納入実績を有している。
 また、2015年3月、ファインランドのバルメットと業務提携し、木材チップやパーム椰子殻(PKS)と石炭の混焼ではバルメットの循環流動層ボイラを採用している。

バイオガス化発電

 2016年4月、フランスのヴェオリアン・エンバイロメントは子会社西原環境を通じて、沖縄県うるま市具志川浄化センター(ガスエンジン、60kW×6 台)と栃木県佐野市秋山川浄化センター(出力:250kW)の下水処理場で、下水汚泥の処理工程で発生する消化ガス(バイオガス)発電設備を納入した。

 2017年12月、三菱商事、日揮、荏原製作所が出資する水処理国内大手の水ing(スイイング)は、北上浄化センター消化ガス発電事業で「北上バイオガスパワー」(ガスエンジン、25kW×14台)を稼働した。黒部市下水道バイオマス・エネルギー利活用施設、鶴岡浄化センター消化ガス発電事業に次いで3例目である。

 2017年10月、JEFエンジニアリング、鹿島建設、鹿島環境エンジニアリング、オーテックが設立した特別目的会社の豊橋バイオウィルが、「豊橋市バイオマス利活用センター」を開設した。
 下水汚泥濃縮設備、し尿・浄化槽汚泥濃縮設備、生ごみ受入・前処理設備、メタン発酵設備、バイオガス利活用設備(ガス発電設備)、後汚泥利活用化設備(炭化設備)が併設されている。
 これまで別々に処理されていた下水汚泥、し尿・浄化槽汚泥、生ごみを一箇所にまとめてメタン発酵処理し、メタンガスからのシロキサン除去・脱硫後、生成するバイオガスを燃料としてガスエンジン(出力:1000kW)で発電する国内初の複合処理システムである。

図15 豊橋市バイオマス利活用センター 出典:JFEエンジニアリグ

 2018年5月、月島機械と東京センチュリーは、埼玉県下水道局と下水発電事業に関する基本協定を締結した。埼玉県から事業用地の提供を受け、消化ガスを埼玉県から購入し、2021年3月からFITによる20年間の発電事業を行うため「中川水循環センター消化ガス発電所」(ガスエンジン、500kW×4台)を建設する。
 現在までに、月島機械は鹿沼市黒川消化ガス発電所、宮崎消化ガス発電所、大阪市消化ガス発電所など、全国24ヵ所で下水処理場での消化ガス発電事業を展開している。 

 2019年11月、ヤンマーエネルギーシステムは、稲作農業で発生するもみ殻を活用して熱と電気を供給する「もみ殻ガス化発電システム」(出力:15kW、もみ殻処理量:200トン/年)を、滋賀県彦根市のフクハラファームに導入した。もみ殻を燃やしてガス化し、このガスを燃料として発電実証を行う。

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