風力発電所の相次ぐ中止・撤退!(Ⅱ)

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 世界の風力発電の設備容量は、2010年頃から年平均成長率17%で急増し、2015年から12%に落ちたものの、2021年末時点で8億3745.1万kWに達している。内訳は、陸上風力が7億8027.5万kW洋上風力が5717.6万kWである。
 高いポテンシャルを有するものの、日本の風力発電設備導入量は2021年末時点で452.3万kWと寡少であり、世界の導入量の約0.5%と大きく出遅れているのが現状である。追い打ちをかけるように、2020年から国内では風力発電所の相次ぐ中止・撤退が報告されている。

世界の風力発電の導入状況

 世界の風力発電の設備容量は、世界風力会議(GWEC:Global Wind Energy Council)の「GLOBAL WIND REPORT 2021」(2022年発行)によると、図5で示すように2010年頃から年平均成長率17%で急増し、2015年から12%に落ちたものの、2021年末時点で8億3745.1万kWに達している。
 内訳は、陸上風力が7億8027.5万kW洋上風力が5717.6万kWである。

 図6には国別の風力発電設備導入量を示すが、2021年末時点で首位は中国で3億3830.9万kW(シェア:40.4%)と伸びが著しい。2位は米国で1億3439.6万kW(16.0%)、3位はドイツで6454.2万kW(7.7%)、4位はインドで4008.4万kw(4.8%)である。
 残念ながら、日本の風力発電設備導入量は452.3万kWであり、世界の導入量の約0.5%と、大きく出遅れているのが現状である。

図5 世界の風力発電設備の導入量 
出典:GWEC Global Wind 2021 Report

 GWECによれば、2021年に風力発電機メーカー30社により、世界で29,234基の風力発電機が設置され、そのうち18社はアジア太平洋地域、9社が欧州の企業である。

 図7のように、過去最高業績のデンマークのVestas(ヴェスタス)は、新規設置台数の17.7%を占めて首位、中国のGoldwindも世界シェア11.8%を占めて2位を堅持した。3位はドイツのSiemens Gamesaで9.7%、4位は中国のEnvisionで8.65%、5位は米国GE Renewable Energyで8.5%ある。

 2021年にVestasは37カ国、Siemens Gamesaは32カ国、GE Renewable Energyは22カ国に出荷納入した。赤色で示す中国勢は総発電容量のシェア42.8%を占めて躍進は目覚ましいが、自国内向けが中心でGoldwindは7カ国、Envisionは3か国への出荷にとどまる。

 また、2021年は洋上風力発電の新規設置台数で記録的な年となり、風車(定格容量とローター径)の大型化も進み、2021年に新規設置された風力発電装置の内、平均定格容量は3,500kW、平均ローター径140mを超えるものは新規設置の58%以上を占めた。 

国内の風力発電の導入状況

 図8には国内の風力発電導入量の推移を示す。2021年末での風力発電累積導入量は458.1万kW、単年度導入量は14.3万kWであった。マスコミ報道で大型原子力発電所4基分に相当する表現が見られるが、実際は風力発電の平均設備稼働率である20%を乗じた91.62万kWが実質発電電力量である。

 2011年3月の東日本大震災後、2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まった。2012年10月から総出力:1万kW以上の大型風力発電所が環境影響評価(環境アセスメント)の対象となり、風力発電導入は少し低迷したこともあり、年平均成長率は10%に満たない

図8 日本の風力発電導入量(2021 年 12 月末時点)

 国内では、2021年末時点の風力発電累積導入量の容量ベースでのシェア首位は、米国GE(買収したTACKE分とAlstom分を含む)でシェア21.7%、2位はドイツのEnerconでシェア18.6%、3位はデンマークのヴェスタス(買収したNEG-Micon分を含む)でシェア12.9%である。

 国内メーカーの日立製作所(買収した富士電機分を含む)は4位でシェア12.5%、5位に三菱重工業がシェア8.4%、6位に日本製鋼所がシェア5.8%と並ぶが、国内の風力発電累積導入量の73.3%は海外メーカーが占めている。今後、さらに海外メーカー比率は高まる傾向にある。

図9 風車メーカー別の設備容量(2021年末累計)

相次ぐ中止・撤退とは?

既設の風力発電所の撤去

 2020年1月、1990年代後半以降に補助金で設置された風力発電所が、約20年の寿命を迎え始め、高額な建て替え費用がネックとなり、風力発電設備の撤去が相次いでいると報じられた。風力発電業界は建て替えを条件にした撤去費用の公的支援を求めているが、政府は否定的である。

 国内では京都議定書が採択された1997年に再生可能エネルギーの普及を図る「新エネルギー法」が施行され、補助金制度が導入されたことで風力発電所が急増し、2021年末時点で累積導入量458.1万kW、2574基に達し、今後、毎年100基程度が耐用年数を迎えるとみられる。

 FIT開始当初の2012~2016年の風力発電の買取価格は、22円/kWh(20年間)と優遇されたが、2022年には新設の入札上限16円/kWh、リプレースは14円/kWh(共に20年間)に減額されており、採算面から建て替えに二の足を踏む事業者が増え、これまでに約150基が撤去されている。

 遅れている風力発電設備の導入状況を見れば、環境アセスメントを経て稼働してきた既設の風力発電設備の建て替えや、出力増強(リパワリング)に手厚い政府支援が必要な時期である。

新設の風力発電所の建設中止・撤退

 一方で、新設の風力発電所の建設計画も、相次いで中止・撤退が発表されている。その理由の多くは地元住民による反対であるが、FIT買取価格の下落による採算の悪化が事業者に開発意欲を失わせていることも事実である。

 2020年9月、山形県鶴岡市と庄内町で計画した「山形県鶴岡市風力発電事業」(風車40基、最大出力:12.8万kW)の中止が発表された。山岳信仰の地である出羽三山神社がある羽黒山の山頂付近に風車を設置する計画であった。

 2020年10月、宮城県は山元町沿岸地域で計画中の洋上風力発電事業(風車12基、総出力:5.16万kW)を中止した。事業者候補の東急不動産が採算の取れないことを理由に撤退したためで、津波対策などの費用がかさむことが原因としている。

 2021年8月、前田建設工業は下関市の安岡(横野)沖洋上風力発電(風車12基、総出力:6万kW)の建設撤退を決めた。2013年4月の住民説明会以来、安岡地区の住民が署名を10万筆以上集めて反対を表明していた。

 2021年9月、自然電力は浜松市天竜区熊と同区佐久間町浦川の山中で計画していた風力発電所(風車15基、総出力:最大3万kW)の建設中止を発表した。計画をめぐり、生活用水である水源への影響を懸念した地元住民が反対していた。

 2022年6月、オリックスは高知県四万十町と四万十市にまたがる山の尾根で風力発電所(最大49基、総出力:14.7万kW)を計画していたが、中止を両市町に伝えた。環境アセスメントを進める中で、発電事業が成立するために必要な風量が得られないと判断した。

 2022年7月、関西電力は宮城県川崎町の「川崎ウィンドファーム事業」(風車23基、最大出力:9.66万kW)を中止した。宮城・山形両県の関係自治体などから、蔵王国定公園の景観を阻害するとした反対が原因である。

 2022年7月、関西電力は北海道伊達市・千歳市(出力規模:7.98万kW)と宮城県川崎町(9.66万kW)の2ヶ所で進めてきた風力発電事業の中止を発表した。地元市民の反対運動が原因である。

 2022年8月、日立造船は福島県昭和村、南会津町、会津美里町、下郷町で計画していた風力発電事業(総出力:18.3万kW)の中止を発表した。貴重な生態系の破壊に関して地元から強い反発があった。

 2022年8月、オリックスが宮城県石巻市沢田近くの京ヶ森から北の雄勝峠までの風力発電計画(風車13基、総出力:5万kW)を中止した。中止の詳細な情報は不明。

 2022年8月、JAG国際エナジーグループの合同会社2社が、徳島県那賀町などで検討してきた2事業(最大風車30基)を中止した。自然環境への影響に加え、土砂災害の危険性を懸念する地元の自治体や住民から強い反発を受けていた。

 2022年9月、大和エネルギーが佐賀県唐津市七山の糸島市との県境地域山中で進めていた風力発電事業(最大13基、総出力:5.4万kW)から撤退した。地元市民による反対運動が強く、佐賀県側から保安林の指定解除の同意も得られなかった。

 2022年11月、JR東日本エネルギー開発は浜松市天竜区の山中約10kmの区画に計画していた風力発電事業(最大12基)の撤退を発表した。風況調査の結果、風が弱く事業化は難しいため中止と発表したが、地元自治会からも反対の声が上がっていた。

 2023年1月、住友林業が三重県津市の青山高原で進めていた風力発電計画(風車4基、総出力:7490kW)を中止した。土地所有者の反対意見をはじめ、騒音に関する自主環境影響評価を行い、事業性を総合的に判断した結果である。既に建設中の風車2基は撤去される見通しである。

 以上のように、2020年から分かっているだけで出力で100万kW程度の新設風力発電所の建設中止・撤退が発表されている。2021年末時点で累積導入量458.1万kWである日本においては、決して無視できる量ではない。

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