伸び悩むバイオマス発電の現状(Ⅱ)

再エネ

バイオマス発電は、バイオマス資源を燃料に変換する技術物理的、熱化学的、生物化学的変換)と、得られた燃料特性に合わせて発電する技術により行われている。発電技術は、FIT対象である「直接燃焼発電」、「バイオディーゼル発電」、「熱分解ガス化発電」、「メタン発酵ガス化発電」の実用化が進められている。

バイオマス発電とは(1)

燃料に変換する技術

 バイオマス資源の燃料への変換は、「物理的変換」、「熱化学的変換」、「生物化学的変換」に分類される。 

図2  バイオマス資源のエネルギー変換技術の分類

 「物理的変換」は、木質チップや建設廃材などの固体燃料、可燃ごみを破砕・成形・乾燥したゴミ固形燃料(RDF)、下水を固体燃料化したバイオソリッドなどである。直接にボイラで燃やして蒸気タービンで発電するため「直接燃焼発電(蒸気タービン)」と呼ばれ、現在の主流である。 

 バイオマス・ボイラの主力は、ストーカ炉、バブリング流動床ボイラ、循環流動層ボイラ:
■初期に導入された「ストーカ炉」は、バイオマス燃料を火格子上で移動させ乾燥して燃やすため、投入する固体燃料(単一燃料)を細かく破砕する必要がないため使用実績は多い。
「バブリング流動床ボイラ(BFP:Bubbling Fluidized Bed)」は、硅砂などの流動媒体とバイオマスを燃焼空気で流動化させながら燃やす。そのため投入する固体燃料を細かく破砕する必要があるが、ストーカ炉に比べて燃料性状や水分の影響を受けにくい。
*「ストーカ炉」と「バブリング流動ボイラ(BFB)」は発熱量の低い燃料(製紙スラッジ、バーク、未利用材、建設廃材)に適し、出力:10万kW以下の小規模プラントに採用されている。
「循環流動層ボイラ(CFB:Circulating Fluidized Bed)」は、硅砂などの流動媒体と固体燃料を燃焼空気で流動化させ、燃焼室とサイクロンを循環させながら燃やす。固体燃料の形状、粒径、異物除去に注意を要するが、製紙スラッジから石炭・石油まで様々な固形燃料の専焼・混焼が可能で、発電効率が高い
 炉内で石灰石による低SOx化、低温燃焼による低NOx化が可能で、出力:1万kW~30万kW程度の大規模プラントに採用されている。

図3 代表的なバイオマス・ボイラの構造比較 出典:JFEエンジニアリング資料

 現在、出力:15万kW以上の火力発電所を建てる際には必ず環境アセスメントが必要で、11.25万kW~15万kWの場合は事業ごとに個別判断される。そのため、出力:11.2万kWは環境アセスメント適用外となり、短期建設が可能である。このような法のすり抜けを意図的に狙ったプラントも多く建設されている。

図4 代表的なバイオマス・ボイラの燃焼範囲 出典:JFEエンジニアリグ資料に追記

 「熱化学的変換」は、バイオマス資源を熱化学的に変換するもので、変換プロセスや反応条件により様々な組成比の固体燃料、液体燃料、気体燃料が製造できる。そのため、液体燃料であるバイオディーゼル燃料は、「バイオディーゼル発電(ディーゼルエンジン)」に使用される。
 熱分解ガス化はバイオマスを還元雰囲気で加熱し、発生する可燃性ガスを燃料とし、「熱分解ガス化発電(ガスタービン、ガスエンジン)」に使用される。ガス化燃焼ボイラは設備単価が高く、直接燃焼ボイラに比べると実績が少なく、現在は出力:5万kW未満の小規模発電実証が進められている。

 最近では、「生物化学的変換」にも注目が集まっており、エタノール発酵による液体燃料と、メタン発酵による気体燃料の開発が行われている。特に、気体燃料を用いた「メタン発酵ガス化発電(ガスタービン、ガスエンジン)」はFITの対象で、現時点で設備単価は高いが、高効率のため将来性が期待されている。

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