再生可能エネルギーの未来予測(Ⅵ)

再エネ

中小水力発電

伸びない中小水力発電

 2022年度末時点で、中小水力発電の導入量は990万kWと無視できる発電量ではない。FIT/FIP認定済であるが未稼働分は37万kWある。しかし、2019年度末から2022年度末までの間に、追加稼働した中小水力発電は15万kW(5万kW/年)と伸び率が極めて少ない

 政府は2030年までに総出力:1040万kWの目標を掲げるが、中小水力発電の開発余地が奥地化すると共に大規模な開発余地が減少したため、開発期間が長期化開発リスクが増大している。加えて、既存設備の老朽化も問題となっている。

今後の導入拡大に向けて

  老朽化した中小水力発電設備の補修やリプレースは、発電事業者には大きな費用負担であり、事業からの撤退の原因ともなっている。政府は既存設備のリパワーリングリプレースによる高効率化を積極的に推進し、発電電力量の増大を図るための仕組み作りを行う必要がある。

 また、中小水力発電の導入拡大に関しては、地方自治体任せになっていないだろうか? 開発初期での流量調査や測量に関するコストが増大しており、今後、気候変動による流水量変化を含め、政府として積極的な支援により調査を進め、新規地点の開発を促進する必要がある。

図7 山梨県都留市の開放型上掛け水車「元気くん2号」(最大出力:19kW)

電力貯蔵と送電網の整備

 電力は需要と供給のバランスがとれないと周波数が乱れ、大規模停電につながる恐れがある。現在、変動性再生可能エネルギーの供給量が増えると、電力会社は火力発電の出力抑制などで対応をするが、それでも十分に対応できない場合は、太陽光発電や風力発電による電力を一時停止する。

 この再エネ出力制御は、2018年に九州電力管内で離島以外では初めて行われた。その後、北海道、東北、中国、四国、沖縄電力管内でも実施された。抜本的な対策を施さなければ、再エネ出力制御の常態化を招き、再生可能エネルギーの導入意欲が削がれる

 政府が再エネ大量導入に向けて重い腰を上げたのが、「2022年1月の電気事業法改正で大規模系統用蓄電池の普及支援」と、「2023年2月の揚水発電所の維持・更新の支援」である。しかし、あまりに遅すぎた支援のために再エネ出力制御の常態化が始まっている。

 一方、送電網の整備により再エネ出力制御は回避することができるが、長期間・膨大な費用を必要とするため、明確な長期展望が不可欠である。政府は2050年までの送配電網の整備計画をまとめ約6〜7兆円の投資を決定しているが、加速が必要である。 

 2018年4月、政府は老朽化した送配電網の維持・更新・拡充を進めるため、大手電力会社が送配電網の利用料として徴収する託送料金を、電力小売り業者に加えて再エネ発電事業者にも求める制度改革を進めている。負担増は、再エネ推進の妨げとなるため再考する必要がある。 

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