日本がリードしてきた太陽光発電(Ⅰ)

再エネ

 太陽電池は、p型半導体とn型半導体との接合面(p-n接合面)に光が吸収されると、電荷分離が生じて電子とホール(電子の抜けた穴)が生成され、それを集電極に導くことで起電力が生じる現象を利用する。

 現在も主流である第一世代のシリコン系太陽電池セルは、その結晶型により単結晶多結晶とに分類される。第二世代の太陽電池はシリコン使用量の少ない薄膜型や、シリコンを全く使用しない金属化合物系太陽電池が実用化されている。最近では、第三世代の太陽電池として量子ドット型も注目されている。

太陽光発電の開発動向

太陽電池セルの開発状況

■シリコン系

 これまで、多くの種類の太陽電池が開発されてきた。現在も主流である第一世代と呼ばれるシリコン系太陽電池セルは、その結晶型により単結晶と多結晶とに分類される。現在、安価な多結晶の変換効率は単結晶に及ばず4〜5%低下するため、変換効率の高い単結晶が主流になっている。
 ただし、単結晶は原料のシリコン溶解に大電力を必要とし、シリコン引き上げの単結晶製造装置にも大きな投資が必要で、高コストとなる。

 一方、第二世代太陽電池と呼ばれるシリコン使用量の少ない薄膜型や、シリコンを全く使用しない金属化合物系太陽電池も実用化されている。しかし、コスト面で単結晶に追い付いていないのが現状である。

 薄膜型アモルファス・シリコンは、低コスト化をめざし化学蒸着プロセス(CVD)で量産化が進められた。しかし、多結晶シリコンよりも変換効率が低いため、アモルファス・シリコンと薄膜多結晶シリコンなど異なる太陽電池を重ね合わせた多接合型が開発され高い変換効率を実現した。

 多接合型は、CVDプロセスにより異なる吸収波長域のシリコン層を複数積層し、広範囲の太陽エネルギーを吸収することで変換効率を向上する。アモルファス・シリコンにアモルファスSiCやアモルファスSiGeを積層したものなども実用化されたが、高コストのため主に集光型太陽光発電システム(CPV)に適用されている。
 また、シャープが開発しパナソニックが引き継いだヘテロ接合太陽電池(HIT)は、結晶シリコン基板の表面にCVDプロセスによりアモルファス・シリコンを形成したもので、高い変換効率を実現した。

■金属化合物系

 金属化合物系太陽電池は基板上にCVDプロセスで成膜する薄膜型で、シリコンに替わり、銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)が原料の安価なCIS、ガリウム(Ga)を追加したCIGS、カドミウム(Cd)とテルル(Te)が原料のCdTe、ガリウムとヒ素(As)が原料のGaAs、インジウム(I)を追加したInGaAsなどが実用化された。

 GaAs、InGaAsなどは宇宙用太陽電池として開発が進められ、高コストではあるがセル変換効率と信頼性が高い特長を有する。最近では、薄膜で多結晶型のCISやCIGSが量産化されている。CdTeは有毒なCdを含むため日本では生産されていないが、高性能で低コストのため欧米で実用化されている。

 国内では、本田技研工業がCIGSでモジュール変換効率15.2%、ソーラーフロンティアがCISでセル変換効率23.35%を達成したが、太陽電池事業の環境悪化により撤退した。
 一方、シャープはInGaAsをボトム層とする3つの光吸収層を積み上げた3接合型でセル変換効率31.17%を達成し、2019年1月に打ち上げられた「革新的衛星技術実証1号機」に搭載された。2022年6月には、フィルム基板で挟み込んだ軽量・フレキシブルな3接合型モジュールで変換効率32.65%を達成した。 

■有機系

 有機系太陽電池は、低コスト化とシリコン低減をめざして有機薄膜型色素増感型ベロブスカイト型の開発が始められたが、軽量・フレキシブル・透光性を生かして高効率化と長寿命化の開発が進められた。最近では、ベロブスカイト型の変換効率がシリコン系太陽電池並みに上昇し、注目度が高まっている

 有機薄膜型(OPV:Organic PhotoVoltaics)は、光電変換層に電子を与える導電性プラスチック(ポリチオフェン誘導体)と電子を受け取るフラーレン誘導体のヘテロ接合が使われている。
 ホール輸送層(ポリスチレンスルホン酸(PSS)でドープした導電性プラスチックのポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT-PSS)を介して、正極に透明電極(酸化インジウム‐ 酸化スズ付ガラス(ITOガラス)やフッ素ドープ酸化スズ付ガラス(FTOガラス))、負極にはアルミニウムなどの金属が使用されている。

 色素増感型太陽電池(DSC:Dye ensitized Solar Cell)は、光電変換層に色素と光触媒の酸化チタン(TiO2)が組み合わされている。色素が光エネルギーを吸収して電荷分離を起こし、電子がTiO2を通じて負極へ伝わる。電子は正極に移動して電解液中のヨウ素(I2)をヨウ化物イオン(I)に還元し、色素により還元される。
 紫外線しか吸収しない酸化チタンに可視光を吸収する色素を吸着させて、広範囲の太陽エネルギーを吸収して変換効率を向上させる。真空プロセスを使わないが、電解液を使用する問題もある。

 ペロブスカイト型太陽電池(PSC:Perovskite Solar Cell)は、色素増感型太陽電池の光増感剤の替わりにに、ペロブスカイト型結晶構造の有機無機混合材料(ヨウ化鉛メチルアンモニウム: (CH3NH3)PbI3)用いた全固体の太陽電池である。
 最近では、トップセルにPSC、ボトムセルにシリコン系太陽電池を用いたペロブスカイト/シリコン系の多接合型の開発も進められている。理論的には2接合型(タンデム)なら37~38%、3以上の多接合型で50%前後の変換効率を実現できるとみられている。

■量子ドット型

 第三世代太陽電池として量子ドット型も注目されている。量子ドットは、超高真空下で基板上に原子1層ずつの単結晶膜を成長させるエピタキシー法などの気相法で成膜され、ドットの大きさを変えて光吸収波長範囲を紫外光~近赤外光まで拡大、高密度の量子ドットを配列させた超格子構造では赤外光も吸収できる。
 シリコン系太陽電池の理論変換効率は約29%であるが、量子ドット型は63%の変換効率を実現できる可能性を秘めている。

 2019年1月、花王、東京大学、九州工業大学は、中間バンド型量子ドット太陽電池を液相法で作製する低コスト化技術を開発した。また、2022年10月、電気通信大学は、硫化鉛を用いた量子ドット太陽電池を開発して界面を制御することで変換効率15.45%を達成した。

図1 主な太陽電池の材料による分類

セルの光電変換効率の向上

 2000年までシリコン系の単結晶、多結晶が変換効率でリードし、シリコン系太陽電池の理論変換効率である29%に迫る勢いであった。しかし、2000年以降は変換効率面では、HIT(ヘテロ接合型)や多接合(タンデム)型がリードし、超高効率太陽電池と呼ばれている。
 太陽光エネルギーの幅広い波長を吸収して変換効率を上げるために複数の金属化合物系の層を組み合わせ、そこに鏡やレンズなどで太陽光を集中させ、40%を超える高い変換効率を達成している。

 宇宙での活用などを目的に、米国の国立再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)が2接合集光型で変換効率34.1%、ドイツのフラウンホーファーが4接合集光型で46%、日本では2013年にシャープが3接合集光型で44.4%を達成している。

 2010年代には、金属化合物系のCISおよびCdTeが、多結晶シリコンの変換効率を追い抜き、新しくフィルム基板に形成した有機系太陽電池(フレキシブル太陽電池)と、量子ドット型太陽電池の開発が加速された。

 2020年代には、色素増感型でペロブスカイト化合物を増感剤として用いることで、多結晶シリコンの変換効率に迫る22%を印刷法で実現し、実用化に向けた大面積フィルム化と耐久性向上が進められている。

図2 世界記録として公式に認められた太陽電池セルの変換効率の推移 
出典:NREL, Best Research-Cell Efficiencies

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