再生可能エネルギーの未来予測(Ⅲ)

再エネ

風力発電

環境アセスメントの期間短縮

 海外では風力発電は太陽光発電よりも導入が進められている。しかし、日本では太陽光発電が国内の年間発電電力量の9.5%に達しているのに対し、風力発電は2011年度と比べると約2倍に増加したが年間発電電力量の0.9%で太陽光発電の1/10以下に留まっている。

 一方、日本の陸上風力ポテンシャルは143.76GW(1.4376億kW)と、国内の全発電設備容量の70%にも達する。また、洋上風力ポテンシャルは607.84GW(6.0784億kW)で、国内全発電設備容量を超えて294%にも達する。ポテンシャルは高いのに、風力発電の導入が進まない理由は?

 国内の風力発電開発を妨げる要因として、運転開始までに長期間を要する点があげられる。大規模メガソーラーでも2年程度で運転開始できるが、風力発電は5~8年を要する。出力:1万kW以上の場合には環境アセスメントが必要で、建設に着手できるのは手続き開始から3~4年後になる。

 導入が進む米国・スペイン・英国などでは、環境アセスメント期間は1~2年と短い。経済産業省は2015~2018年度に必要な調査を前倒しで実施する実証事業を進め、「発電所に係る環境影響評価の手引き」に反映させて期間を1.5~2年とし、事業者のコスト負担を軽減する方針を表明した。

国内風力発電機メーカーの撤退

 国内で高い風力ポテンシャルを有するが、有力な風力発電機メーカー(三菱重工業、日立製作所など)が撤退した結果、現在は欧米メーカー製の風力発電機の導入が主体となっている。
 政府は2030年までに総出力:2360万kWの目標を掲げるが、海外メーカーが占める割合は高いレベルで推移することは間違いない。エネルギーセキュリティーの上で問題である。

 政府は風力発電の普及に向けて多額の投資(補助金など)を行ったにも関わらず、事業化の段階では企業の自由競争に任せるスタンスを取った。その結果、先行する欧米に技術力で負けた国内の風力発電機メーカーが事業から撤退し、気が付けば安価な中国製風力発電機の導入が始まっている。

 今後も、風力発電の導入は拡大する必要があるが、国内産業の育成・発展への寄与は残念ながら大きいとは言い難い。明らかに日本の技術力が落ちている。どこで、戦略を間違えたのであろうか?太陽光パネルと同じ轍を踏んでしまったことへの反省が必要がある。 

今後の導入拡大の課題 

 2020年1月、1990年代後半以降に補助金で設置された陸上風力発電所が約20年の寿命を迎え始め、高額な建て替え費用がネックとなり、風力発電設備の撤去が相次いでいると報じられた。
 遅れている風力発電設備の導入状況を見れば、環境アセスメントを経て稼働してきた既設の風力発電設備の建て替えや、出力増強(リパワリング)に手厚い政府支援が必要な時期にきている。

 一方、政府は洋上風力発電所の導入拡大に向け2022年末から公募を開始し、日本版セントラル方式により加速している。特に、浮体式洋上風力の導入目標を掲げ、技術開発・大規模実証を実施し、風車や関連部品、浮体基礎など洋上風力関連産業の大規模サプライチェーン形成を進めている。

 しかし、2023年9月に露見した洋上風力発電を巡る国会議員の汚職事件は、贈賄の疑いがある日本風力開発だけでなく、業界団体の日本風力発電協会(JWPA)も関与が疑われ、洋上風力代表企業の三菱商事が同協会を退会するなど、混乱は拡大を見せている。
 本件に関しては事実の解明を早急に進め、洋上風力発電所の導入拡大に影響を与えてはならない。

 ところで、大規模風力発電(ウィンドファーム)の系統連系には、その出力変動を平準化するためにLNG火力発電や揚水発電などのバックアップ電源、高価な蓄電池に頼らない大規模電力貯蔵システム北海道・東北地方から電力需要都市部への送電容量の増強は必須であり、忘れてはならない。

図5 長崎県五島市沖に建設される浮体式洋上風力発電(0.21万kW×8基) 
出典:五島市

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