相次ぐバイオマス発電の火災事故

再エネ

近年、複数の発電所において、バイオマス燃料を貯蔵する設備周辺で火災事故が発生している。その原因の多くは輸入木質バイマス燃料の粉塵にあり、電気設備や搬送設備の高温部と接触することによる発火、あるいは自然発酵や可燃ガス発生による発火が起きている。
 単なる木くずのボヤとあなどってはいないだろうか? 住民の反対運動にまで炎が広がらないよう、早急な輸入木質バイマス燃料の品質管理の徹底を進める必要がある。

バイオマス発電所の火災事故問題

火災事故の報告例

 電気事業法(第9条)では、バイオマス発電設備のバイオマス燃料を貯蔵する設備等について、化学的・物理的作用に対する安全性を確保し、爆発又は火災のおそれがないように施設すべき旨が規定されている。
 しかし、、、、

■2020年2月、CEPO半田バイオマス発電所(出力:5万kW、専焼)で、燃料チップ搬送コンベア付近で火災が発生。電気配線接続部に燃料チップ粉塵が付着して短絡したことによる発火、コンベア周りに堆積した燃料チップ粉塵がコンベアローラの保有熱あるいは燃料チップ加工時の金属屑により加熱されて発火などの原因が考えられている。
■2020年9月、常陸那珂火力発電所(出力:200万kW、石炭との混焼)で、バイオマス受入ホッパー建屋で発煙したが、原因は明らかにされていない。
■2020年9月、JERA武豊火力発電所(出力:107万kW、石炭との混焼)で、燃料(石炭・木質バイオマス)を搬送するベルトコンベアの建屋内で発煙したが、原因は明らかにされていない。
■2020年10月、ひびき灘石炭・バイオマス発電所(出力:11.2万kW、石炭との混焼)で、燃料搬送用ベルトコンベアで火災が発生した。燃料(木質ペレット)搬送用ベルトコンベア内のローラ設備の摩擦等により発熱し、燃料に着火してコンベア内に延焼した。
■2023年1月、袖ケ浦バイオマス発電所(出力:7.5万kW、専焼)で、試運転中に燃料貯蔵設備(サイロ)で火災が発生した。サイロ内に貯蔵された木質ペレットが自然発酵した可能性があり調査中。
■2023年1月、下関バイオマス発電所(出力:7.498kW、専焼)で、ペレットバンカー部分から運転停止後に開催が発生。停止操作中にボイラからの逆火によるペレットへの引火が原因である。
■2023年1月、JERA武豊火力発電所(出力:107万kW、石炭との混焼)で、揚炭桟橋上の燃料(石炭・木質バイオマス)を搬送するベルトコンベアからの発煙したが、原因は明らかにされていない。
■2023年5月、関西電力舞鶴発電所1,2号機(合計出力:180万kW、石炭との混焼)、バイオマス燃料供給設備(サイロ、運搬設備)で火災が発生、サイロ内の木質ペレットの一部が発酵・酸化して可燃性ガスが発生し、自然発火した可能性があり、調査中。
■2023年5月、米子バイオマス発電所(出力:5.45万kW、専焼)で、バイオマス燃料貯蔵設備で火災が発生した。燃料タンク内に貯蔵していた木質ペレットが自然発酵して発火した可能性があり、原因を調査中。
■2023年9月、米子バイオマス発電所(出力:5.45万kW、専焼)で、バイオマス燃料(木質ペレット、パーム椰子殻(PKS))受入搬送設備で爆発を伴う火災が発生し、原因を調査中。
■2024年1月、JERA武豊火力発電所5号機(出力:107万kW、混焼)で、バイオマス燃料(木質ペレット)の一時保管場所で出火、燃料を運ぶためのコンベアなどからも出火、建物13階のボイラ施設内で爆発を受けて発電運転を中止した。現在、原因を調査中。

 2023年9月9日、中部電力、三菱HCキャピタル、東急不動産、シンエネルギー開発、三光が出資する米子バイオマス発電所で、爆発を伴う火災事故が発生した。木質ペレット受入建屋の鉄骨の壁が吹き飛び、貯留タンク(サイロ)に木質ペレットを運ぶための昇降式搬送装置(バケットエレベーター)が損傷した。
 爆発原因は、木質ペレットの自然発火または粉塵爆発ふんじんばくはつと見られている。同発電所では、同年5月と7月にも別の場所で火災が発生しており、米子市は、発電所を運営する米子バイオマス発電合同会社に対し、周辺住民の安全確保対策の徹底を申し入れ、必要な場合を除く運転停止を要請した。

図1 2023年9月9日、米子バイオマス発電所で爆発火災事故が発生
出典:米子バイオマス発電合同会社

輸入燃料の抱える課題と対策

 再生可能エネルギーの中で、最も安定した電力を供給できるのがバイオマス発電である。しかし、当初からバイオマス燃料を長期間にわたり安定的に確保することが大きな課題となってきた。そのため、2017年度に改正されたFITでは、バイオマス発電について燃料の調達先や調達量の申告が必要とされている。

【木質バイオマスを大量に海外から輸入】

 現在、バイオマス発電の燃料は生活系や食品系もあるが、その約8割は木質系と農業系である。火災事故を起こした米子バイオマス発電所は、ベトナムなどから木質ペレットを輸入し約16万トン/年を消費する。そのために、数万トンに及ぶ大量の木質ペレットを備蓄する必要がある。

 過去に、ベトナム産の木質ペレットで品質偽装品が輸入されたことがあった。自然生態系に配慮し、適切に管理されている森林から生産された木材であることを示す国際認証の偽装で、今回の火災事故とは直接関係しないが、海外産の木質ペレットの品質管理が重要であることに間違いはない。

 木質ペレットは木くずを圧縮して円筒状に固めたもので、長さ:4~5cm、直径:6mm程度である。その大きさ、含有水分量、粉塵量などに関して、輸入前後における運搬保管方法を含めた品質管理を徹底する必要がある。木質ペレットが自然発酵するのであれば、産地特有の発酵菌を調査して対策を施す必要がある。

 現在、木質ペレットはベトナム、カナダ、米国など、また、パーム椰子殻(PKS)はマレーシア、インドネシアなどからの輸入に大きく依存し、急拡大している。2000年代までに、木質バイオマス原料を国内調達でまかなっていた状況とは明らかに異なっている

【早急な品質管理のルール作りが必要】

 木質ペレットは「再生資源燃料」に該当する。1000kg以上扱う際には消防法上の「指定可燃物」として取り扱われる。この指定可燃物とは、火災が発生した場合に拡大しやすく、消火活動が困難となるもので、消防法第9条の4で定められている。
 指定可燃物の品目や数量は「危険物の規制に関する政令」で定められており、その貯蔵や取扱基準については、市町村条例で定められている。

 しかし、「指定可燃物」は、引火すると火災が拡大しやすいため、貯蔵・取り扱いにおいて火気から離し、万が一火災などの災害が発生しても被害が拡大しないよう対策を講じるのが基本である。一定数量以上の取り扱いは、消防署への届出が必要であるが、ガソリンのような「危険物」とは管理体制が大きく異なる

 木質バイオマス燃料の調達・運搬・保管に関しては、発電事業者の自主管理に任されているのが現状である。今回、バイオマス発電所で火災事故が急増しているのは、使用する木質バイオマス燃料の品質について十分な把握が行われていないのが原因である。早急な品質管理のルール作りが必要である。

 問題は、火災事故が2020年から急増し、既に4年を経過している点にある。早急な原因究明とバイオマス燃料の品質管理対策を施すことにより、最近では爆発を伴う火災事故が発生している。周辺住民の安心・安全を確保しなければならない。
 単なる木くずのボヤとあなどってはいないだろうか? 住民のバイオマス発電の反対運動にまで炎が広がらないよう、ボヤでおさめておく必要がある。

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